不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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八章

異世界へ出発

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夕方になり、俺たちはテレクサンドラの周りに集まった。

「気をつけてな」

魔導士ティトが、俺と狐の獣形に変身したフィオを見て、声をかける。

「イッテキマス」

フェイルノが、俺たちの代わりに応えたので、みんながどっと笑う。

「クスクス、待ってるよ、アーチロビン、フィオ。それにフェイルノ」

ケルヴィン殿下が、笑顔で手を振ってくれる。

「夜明けまでに必ず帰れるように、みんなとお祈りしてるからさ」

聖騎士ギルバートが、生真面目な顔で言った。
そうだよな。帰還を願う者の強い思いも、俺たちがここに戻る時に必要だ。

「ありがとう」

「ありがとう、ギルバート」

「アリガトウ、ダイスキ、ギルバート」

俺たちが、各々挨拶を交わす中、1人だけ気だるそうな声を出す奴がいる。

「さっさと行けばぁ?」

結界の鏡の中から喋る、大魔導士イルハートだ。

結界の鏡は、手鏡くらいの大きさで、魔導士ティトが責任を持って預かると言ってくれた。

それなのに……。

こいつ、種と鏡が送られてきて、安全だと分かった途端に、更に高慢になりやがって。

魔導士ティトが、大魔導士イルハートを睨みつけた。

「喧しい! 世話になっとる分際で!!」

「きゃ! もう、あんたの手に握られていたら、落ち着かないわよ、ティトぉ!」

「変異が収まった途端に、かしましくなりよって! コピーの方が静かで、ちょうどいいわい」

「惚れ惚れする美女よねぇ。あちこち変異しかけてるけどぉ」

「この……! アーサーさえ人質でなかったら、捻り潰してやるものを!!」

「やだ、こわーい。優しくして、おばあちゃん?」

「赤の他人じゃ、クソガキめ」

二人が言い争う隣で、大魔導士イルハートのコピーは、無言で鎮座している。

体は、既にあちこち変異しかけていた。

ちょっと可哀想かもな。イルハートの身代わりだから。

タインシュタ・フランによると、送られてきた種は、擬態機能だけを残して、生命体としては機能してないらしい。

種の殻を使うようなものだと、あとから彼に言われたのだけど。

「時間です。アーチロビン、フィオ、フェイルノ」

テレクサンドラが、声をかけてきた。
いよいよだ。

彼女が祭壇に向かって祈り始めると、空間が歪み始めて、水面のように波打ち始める。

「さぁ、行くのです」

「はい、テレクサンドラ」
「はい」
「ハーイ、イッテキマス」

いよいよだ。
なんとしても、レディオークを止めるぞ!

俺たちは、空間の歪みに飛び込んだ。

キーン……!

激しい耳鳴りと、まばゆい光の中で、思わず目を閉じる。

自分の体がどうなっているのかも、方向もわからない。

ドサ!
足を取られて倒れ込む。

……地面の感触?
ついた……のか?

戸惑う俺に、フィオが声をかけてきた。

「アーチロビン、アーチロビン」

「フィオ?」

「大丈夫? 目を開けて」

フッサリとした毛皮の感触と、肩に感じる肉球の感触が伝わり、ヒゲがモジョジョと俺の顔をくすぐる。

ペロッと顔を舐められて、目を開けると、俺の顔を覗き込むフィオの姿があった。

混じり気のない純白の白狐。大きな目は元のまま。
耳は心配そうに後ろに垂れている。

可愛い狐だよな。
俺の……大事な恋人。

「狐のフィオも、可愛い」

「……!」

フィオは、顔を赤く染めて俺の肩に置いていた前足をおろす。

恥ずかしそうに向こうを向くフィオを見ながら、俺は起き上がった。

「ツイタ? ツイタノ? ココ、ドコ?」

フェイルノが、不安そうに俺の顔のそばに寄ってくる。

「よしよし、日の本だと思う。どの辺りだろうな。龍王は海にいると言っていたけど」

周りを見回すけど、見覚えのない場所。
でも、遠くで海の音が聞こえてくる。

「波の音がする方へ行こう」

俺はそう言って、みんなを連れて行く。

今は、ちょうど日が傾きかけた夕方頃のようだ。

御伽の世界だと思っていたけど、こうして来てみると、俺たちの世界と変わらないな。

赤い夕日がとても眩しい。

海が見えてきて、俺たちは浜辺に向かって歩いて行く。途中、子供を連れた漁師らしき親子と出会った。

やっぱり異世界だな。

服装が俺たちと全然違う。
布を前で交差させて、ベルトのような長い布を腰で巻いている。

夢で見た人々と、同じ格好だ。
ここは、間違いなく日の本なんだ。

「狐しゃん!」

幼い子供が、フィオを見て近寄って来る。
二歳? いや、三歳くらいか。

「おぉ、白狐」

目を丸くして、大人の男性が見つめていた。この子の父親だろうか。

言葉がわかるのは、ありがたい。

「あんた、異人さんかい?」

父親の方に話しかけられて、俺は一瞬戸惑った。異人さん?

「え、と。あの……」

「清の国の人でもねぇし、たまに浜に流れ着いてくる、金色の髪で目の青い異人さんたちでもなさそうだな」

「えぇ、その……」

「それに、兄ちゃん、なかなかいい男じゃないかい。うちの母ちゃんが見たら、惚れそうだ」

「ど、どうも……」

「美男子……白狐……まさか、お前さんは稲荷明神の化身かえ!?」

「稲荷?」

「おぉ、狐の神様のことでさぁ。この国には、龍の守り神がいるでよ。神様同士、喧嘩しねぇでおくんなさい」

「龍の守り神!」

「へぇ。山を一つ二つ越えた向こうに、祠がありやして、そこにそれは気の優しい龍神様がいるんでさ」

「龍神? 龍王ではなく?」

「あっしらは、そう呼んでるんでさ。本人は龍王と呼ばれたいと言ってるけど、徳の高い行いをするから、自然と龍神とみんな呼ぶんです」

「そうなのですか」

「へぇ、祠に住むなり、干上がった田畑に雨を降らせてくれたり、疫病を治してくれたり、悪い龍に攫われた娘を助けてくれたりしただ」

「それは、すごい」

「へぇ。その評判はこの辺りでは有名で。しかも子守までしてくれる、ありがたい龍神様で、子供達も懐いておりやす」

あの龍王が、そんなことをしたのか。
だから、慕われてるんだな。

ということは、場所は間違ってないんだ。
龍王のそばへと来れたんだな。

「狐しゃん、好き好きー」

フィオは、寄ってきた子供に頭を撫でられて、首にギュッと抱きつかれていた。

子供から見ても、可愛いんだろうな。

「こらこら、お稲荷様のお使いに、おいたをしちゃなんねぇ」

父親が、子供を抱いて引き離す。

「狐しゃん! あーん!!」

子供はとうとう泣き出した。
ごめんな。俺たち急いでるんだ。

「じゃ、失礼致します。その───龍神様にご挨拶をしないといけないので」

「おうおう、どうぞ、行っておくんなまし」

親子はそのまま、帰って行った。子供はわあわあ泣きながら、フィオを呼んでいる。

「……可哀想なこと、しちゃった」

フィオが、申し訳なさそうに俺を見上げる。
まあ、でも、遊びに来たんじゃないからな。

「仕方ないよ、龍王のところへ行こう」

俺はフィオの頭を撫でて、海辺を目指した。

ザザーン、ザザーン。

波の音が、静かに響いている。
波打ち際には、夢で見たあの強そうな女性が立っていた。

手には、ハタキとかいう掃除道具を持っている。

確か、『カジカ』と呼ばれていた。

「お前たち、龍ちゃんを襲いに来た魔物!?」

彼女は、ハタキを構えてすごい迫力で睨みつけてくる。

た、確かに怖そうだ。

「ち、違う。俺たちは龍王を守りにきた」

俺は持って来たお酒を取り出して、彼女に見せる。

これで、怒りを鎮めてくれるといいんだが。

「何、それ」

「お酒だ。神龍酒を譲ってもらう代わりに、俺たちの世界から持って来た高価なお酒だよ」

「……見せて」

彼女は近づいて来たので、栓をあけてあげた。器に注いで、少しだけ飲ませてみる。

「!!」

「どう?」

「美味しい。飲んだことのない味」

「どうぞ」

俺は栓を締め直して、彼女に渡した。彼女は嬉しそうに受け取る。

よかった。受け入れてくれて。
それに笑うとこの人も美人だよな。

「ありがとう、龍ちゃんを呼んであげる」

龍ちゃん……ね。
いよいよ、龍王とご対面だ。

彼女は海にハタキの先をつけると、大声で龍王を呼んだ。

「龍ちゃーん!!」

ゴゴゴゴ!

大きな音を立てて、夢の中で見た龍王が海の中から現れた。

「やっと会えたわね、アーチロビン」

龍王は、俺を見て嬉しそうに顔をほころばせる。

「ああ、よろしくな、龍王」

俺たちは見つめ合い、これから協力していくことを誓った。
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