不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

文字の大きさ
69 / 96
八章

気弱な龍王、強気のレディオーク

しおりを挟む
「一日千秋の思いで待ったわよ」

龍王は、少し震えながら言った。そりゃ怖いよな。異世界から魔物が狙ってくるんだから。

「んで? アーチロビンと、その肩にいるのがフェイルノ。そして、白狐のフィオちゃん、でいいのかしら?」

龍王は確認するように、俺たちを見回す。

「そうだ。いざという時は、フィオにしっかり回復魔法をかけてもらう。それに、彼女のシールドは強固だ。そばにいた方が安全だ」

「ありがたいわぁ。───でもさ」

「ん?」

「長期戦になりそうじゃない? 相手は、瀕死になるたびに体力入れ替えをするんでしょ?」

「だからこそ、神龍酒の力が必要なんだ。レディオークの判断力を奪って、戦いを有利に進める」

「なるほどね」

「それと、俺の力は敵意が俺に向かうことが条件だ。手は出さないでくれ」

「ふむふむ……て、アンタ一人が戦うの?」

「そうなる」

「ええー、なんか申し訳ないわよぉ」

「龍王がやられれば、それこそ俺が危なくなるんだ」

「あ、言ってたわね。大帝神龍王の力が、五分まで削がれる、て」

「そうだ」

「確かに、アンタの力はすごいよね」

「わかるのか?」

「わかんない」

「?」

「わからないから、わかるのよ」

「どういう……」

「龍同士は戦って強さを決めるけど、向き合った時点で相手との力量差というのは、ある程度わかるもんなのよ」

「へぇ」

「アンタの力は、測ることができない。だから、それだけすごいってことなの」

「そういうものか」

「アタシが、先代の龍王と戦った時はさ、もうダメと思った。勝てないと、すぐにわかったの」

「それでよく勝てたな」

「まあ……運がよかったというか、知恵を絞ったというか。でもね、最後にトドメを刺したのはこのカジカよ」

「ええ!?」

俺は思わずカジカを見た。
カジカは、得意そうにブン! とハタキを振り下ろす。

「私が、龍ちゃんをいじめる前の龍王を、これで殴ったの」

「それ、武器なの? 掃除道具なの?」

「両方」

「ええ!? すごい」

「安心して。人間を殴ったことはないから」

「そ、そう」

「旦那も私がこれを持つと、距離をとって謝ってくるわ」

「こわ……」

恐妻家なのかな。
それにしても、強そうな女性だ。

「カジカ、あなたは戦士なのか? つまり、武士?」

「いいえ、百姓の娘」

「……?」

「ああ、ダメよ、アーチロビン。カジカの力をそんなふうに考えちゃ」

「よくわからない」

「いいの、いいの。理屈で考えると、頭痛くなるから」

「女戦士なんだろ?」

「まぁ、アンタの世界のジョブで言えばそうかな。でも、カテゴリーは、村娘よ」

「村娘!?」

「理屈じゃないのよ」

「ふーん」

それから、俺たちは作戦を練った。あとは、うまくいくことを願うばかりだ。

夜が来て、空に満月が浮かんだ。
向こうでは、月食が来ている頃か……。

ズシン。

異様な足音が響いてくる。

月明かりで、その姿はよく見えた。

俺は弓を構えて、容姿を確認する。身長は三メートルほど。

分厚い唇は真っ赤に塗られ、発達した胸筋は女性の胸のように、見えなくもない。

だから、レディオークと呼ばれるのか。

鋭い牙が口の端から見えて、ガタイのいいその腕には、大きな斧が握られている。

ドラゴンアックスか。
龍の首を、一太刀で断てそうな斧だな。

俺は、素早く地面に向かって矢を射た。地面がカッと光って、準備が整う。

敵の力の流れに干渉する力場は、しっかりとレディオークを捉えた。
さぁ、来い。

「ファーッファッファッ! キサまが、アーチロビンか!! 今更、ワるあがキか!?」

レディオークが、大声でそう吠えた。

こいつも人語を喋るのか。

「龍王に手出しはさせない」

「フン! おれサまを、これまデの連中と同じだと、思うナよ! おれサまは、六体の龍王たチも、倒したゾ!!」

「固有スキルを駆使したんだろ?」

「ファッファッ、無敵のすきルだ!!」

「そうか」

「なヌ?」

「それがどうした。俺には勝てない」

「雑魚のくセに、言いヨるわ!!」

「かかってこいよ」

「ファッファッ、その手ニのるか。貴様の術中にかかルなと、マ王が教えてくれる」

……もうすでにかかっているけどな。
間抜けなやつ。

「ふーん?」

「なンだ」

「いや、今日は満月だ。月見酒を飲むには、いい夜だろう」

俺は、神龍酒の入ったトックリをゆすってみせた。

チャポン、ポチャン。

「ゴクリ!」

レディオークが喉を鳴らす。

「欲しいのか?」

「やかマしい!!」

「そうか、いらないのか」

俺は、トックリを傾けて飲もうとした。
のってこい、レディオーク。

「サ、酒……極上のサけの匂い……」

レディオークの口から、ヨダレがポタポタと落ちていく。

「欲しければ、俺を倒すんだな、レディオーク」

「グブォオォォオ!!」

レディオークが、突進しようとしてピタッと動けなくなる。

一回目……。

「グブ!!」

今度はドラゴンアックスを投げようとして、また止まる。

二回目……。

「グググ……きサまぁ!! 大地ヨ、わガ怒りに応え、敵を撃テ!! サドン・トスラブ!」

三回目!!

大量に巻き上げられた砂が、レディオークに襲い掛かった。

「オワァァァォァ!!!」

砂つぶといっても、大量にぶちあたるとかなり痛い。奴は自身の攻撃魔法に苦しめられて、傷だらけになる。

瀕死にまではなっていないようだけれど、半分くらいの体力を無くしたはずだ。

「やったぁ!!」

後ろから、龍王の声がする。
馬鹿! 声なんてたてたら……!!

レディオークは頭を起こして、ニヤリと笑った。
ふらつきながらも起き上がり、声がした方を睨む。

「龍王ゥゥゥゥ!!」

奴はそう叫ぶと、大きくその場で跳躍して、俺の真後ろに降り立った。

ズシン!!

オーク特有の跳躍力だ! これで、龍王たちの首を、落としてきたな!

海の中から頭を出していた龍王は、レディオークと目が合ってガタガタ震えだした。

「あ、あ、アワワ……。」

「ググォフフフ……ファッファッファー」

勝利を確信しているのか、レディオークが不気味に笑った。

よし、今だ!!

「レディオーク!!」

「ファッ、ファッ、ンが?」

「俺の奢りだ! 一杯やるか!?」

俺はトックリを矢に括ると、奴の前に回り込んで笑い続けるレディオークの口の中へと向けて放つ。

ガポン。

大きな口の中に、神龍酒の入ったトックリが飲み込まれていった。

「クブォ!? オー、オー……オオオオ!!」

飲み込んだものが、何かわかったのだろう。奴の足元が、目に見えてふらつきだした。

レディオークは酩酊しながら、俺に向かって斧を振りかぶってくる。

「バォ!?」

攻撃抑止が働いて、奴の体がピタリ止まった。

「グググ!?」

奴はそのまま、攻撃を続けようとして、三の倍数回ごとに体を傷つけていく、そして、ついに片足を折って跪いた。

瀕死までのダメージの蓄積は、全てこいつの攻撃力に加算されるという。

おそらく、今は最大値まで高まったはずだ。

このまま起死回生の、体力変換を使うか?

龍王の頭に乗った、フィオが緊張している。いつでも、リザレクションをかけられるよう、構えているのだ。

「フ、フグ、グォエー!! ゲボ!」

その時、急にレディオークが、腹部を押さえて何かを吐き出すような動作をしだした。

まさか……飲んだ神龍酒を吐き出すつもりか!?

判断を鈍らせる酒を吐いて、龍王を狙う気だ。

今のうちに、蒼炎で……!

ダダダタダ!!

え?

その時カジカが凄い勢いで走ってくると、レディオークをハタキの柄で殴りつけた。

ボコ!!

「グファ!!」

「私がせっかく譲ったお酒を、吐くんじゃないわよ!! 勿体無い!!」

……い、痛そう。けれど。

「カジカ! 下がれ!!」

俺は彼女の腕を掴んで、後ろに引きずり戻した。

「離してよ! やっつけないと!!」

「お前が倒されれば、龍王が怒りから接近してしまう。みすみす、ピンチを招くな」

「龍ちゃんが危なくなる?」

「あぁ、こいつは俺が叩きのめす。手を出さないでくれ」

俺はカジカを背に庇うと、レディオークを睨みつけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...