不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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八章

鍛冶屋のニャルパン

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「誰ですか? あなた」

俺は、声をかけてきた男に尋ねた。思わず、周りの人間まで避けて通るほど臭う。

フィオも、必死に我慢しているけど、鼻をつまみたくてたまらないようだ。

男は、有無を言わさず近づいてきて、俺の腕を掴んでくる。

うう! く、臭い……!

何日風呂に入ってないのか、こっちが失神しそうだ。

猫は綺麗好きのはずだ。
猫族は違うのか!?

フィオは、たまらず俺の背中に顔を埋めてしまっている。

「キョウレツー!」

オウムのフェイルノも、俺の懐に潜り込んできた。

お、おいおいみんな、俺は?

俺はなるべく、浅く呼吸しながら相手を見た。

「へへっ、臭うか。悪りぃニャ、兄さんたち。この半年、風呂に入ってニャいのよ」

「!!」

「いいから、俺っちの店にくるニャ! ほら、そこの鍛冶屋ニャ!」

俺たちは有無を言わさず、彼の言う店に押し込まれた。

鍛冶屋……。
中は埃っぽくて、あまり稼働してるように見えない。

こいつ、本当に商売してるのか?

「ニャあ、兄さん」

俺は、ポンと背中を叩かれる。

「ん?」

「その手に持ってるのは神剣ニャろ?」

「え!?」

「さっきも言ったけど、そいつは穢れを纏いすぎて、もう限界にきてる。本来なら持ち主が浄化できるはずなんだニャ……」

「あ……あぁ」

「持ち主が、勝手に手放したみたいだニャ」

「そう……だ」

「やたらと剣が哭くのが、おかしいんニャが」

「キィィィーンて、音のことか?」

「ニャ? あんた、聞こえるのニャ? 持ち主か、神器専用の鍛冶屋にしか、聞こえないはずニャのに」

「そうなのか? これはネプォンが……持ち主が持っていた時に錆びたらしくて、それで……」

「ニャにい!?」

男は俺にさらに近寄ると、襟を持ってガクガク振ってきた。

「持ち主の手にある間に、神器が錆びるニャんて、そんなおかしなことがあるかニャ!」

「そ、そんなこと言ったって、本当だよ!」

「あぁ、なんてことニャ」

鍛冶屋の男はブツブツ言うと、神剣を俺の手からもぎ取って、鞘から剣を抜いた。

「ギニャー!! こ、こ、これは、瘴気を吸いすぎて、錆びているのニャ!! 兄さん! 風呂を沸かすニャ!」

「え?」

「仕事の前に、身を清めるニャ! ついでに、ここを掃除するニャ!!」

「ええ!?」

「人手があるんだから、できるニャ!! ほれ! 急ぐニャ!!」

ちょっと待て。わけのわからない状態で、客のはずの俺たちが、こいつのために風呂を沸かして掃除を?

「どう考えても、おかし……!」

「いい仕事をするためには、綺麗な方がいいニャろ!?」

「まさか、面倒くさいから、こうやって客が来るまで基本放置してるんじゃ……」

「はいはーい、これも世のため、人のため、俺っちのた……いやいや! 神剣の浄化のためニャ!」

俺たちは、とにかく鍛冶屋を風呂に入れて、掃除をする。

「ホコリ、ダラケ、ムシモ、イッパイ!!」

フェイルノも、食べられそうな虫が出てきたら、食べている。

お腹壊すなよ……。

「何をしとるんじゃい? お前達」

そこへ、魔導士ティトや聖騎士ギルバート、ケルヴィン殿下もやってきた。

「みんな、よくここだとわかったな」

「なにやら、半年ぶりに鍛冶屋が仕事していると、あちこちで噂されていてな。覗きに来てみたんじゃよ」

「それで、なんで掃除なんてしてるの? アーチロビン」

「ギルバート、実はかくかくしかじか……」

「ふんふん、て、ええ!? なに、そのカオスな状況」

「とりあえず、フィオを手伝って掃除をしてくれないか。俺は、鍛冶屋の背中を流すように言われてる」

「えぇ~……」

「仕方ない、やろう、ギルバート」

「ケルヴィン殿下、汚れちゃいますよ」

「つべこべ言うな。テレクサンドラにバラすぞ?」

「はい、すぐにやります、殿下」

みんなに掃除を任せて、俺は鍛冶屋の背中を流しに行く。

とにかく綺麗にして、終わった頃には俺は汗だくになっていた。

「ニャニャ。さっぱりしたニャ」

鍛冶屋は、満足そうに仕事場に戻ると、みんなに挨拶する。

「当代きっての鍛冶屋、ニャルパン。参上」

「掃除、終わりましたよ、ニャルパンさん」

「おおー! ありがとうニャ。可愛い孤族の女の子だニャ。俺っちの彼女になる気はないかニャ?」

「なりません! 恋人がいますから」

フィオが、俺のそばにやってきて、甲斐甲斐しく汗を拭いてくれる。

「チッ。まぁ、いいニャ。今はこっちが大事ニャ」

ニャルパンは、神剣を改めて眺めた。

「酷い状態ニャ、兄さん」

「確かに」

「神器の神力は、持ち主の魂と循環している間は、枯渇することはないニャ。これは異常事態ニャ」

「異常事態」

「そうだニャ。ネプォン王は、賢王とは言えなかったみたいニャけど、だからといって瘴気で錆びたりしないニャ。ニャにをしたのか……」

ニャルパンは、そう言って炉に火を灯す。
炉の熱が鉄を打てるほど高音になるには、相当時間が要るだろう……と、思っていたら、ニャルパンは不思議な舞を踊り出した。

「ニャンニャらー、ニャンニャらー」

滑稽に思える動きでも、炉はみるみる熱されて火を噴き出し始めた。

こんな短時間で!?
嘘だろ……フイゴの力も借りずに。

「すご……!」

「腕前は確かなようじゃなぁ。製鉄の神に愛された鍛冶屋じゃ」

ケルヴィン殿下と、魔導士ティトが感心している。
そこまで愛された鍛冶屋が、仕事場を埃だらけにするなんて、バチが当たらなきゃいいけどなぁ。

「世界広しといえど、神器を扱えるのはこのニャルパン様だけニャ。この炉は、浄化の炎を起こせるニャ」

「浄化の炎……」

「とりあえず穢れを落とすニャ。真っさらにして、天に返すニャよ。さぁ」

ニャルパンが、神剣を火箸で挟んで、燃え盛る炉の炎に翳したその時だ。

ブワ!!

神剣から、ものすごい瘴気が噴き出した。

炉から立ち昇る炎が、その瘴気を舐めるように絡め取っていく。

「すごい量ニャ!! 予想より沢山出るニャ!」

「ニャルパン! 大丈夫か!?」

「ぐぬぬ……!」

炉の炎が取りこぼした瘴気が、ニャルパンを覆っていく。

「ニャルパンもうよせ! 神剣を手放せ!!」

俺が叫んでも、ニャルパンは首を横に振った。

「だめニャ! もう少しで穢れが落ちるニャ!」

「お前が瘴気に取り憑かれるぞ!?」

「神器を穢したまま、にする……わけに……は……」

ニャルパンの体の中に、瘴気が入り込んでいく。

「アーチロビン!!」

フィオが俺の名前を呼んだ。

「彼の体から瘴気を抜く!」

「頼む! フィオ!」

「慈悲深き、癒しの神よ。禍つ気を取り去り命を救いたまえ、クリナピュアフル!!」

フィオの力で、ニャルパンから瘴気が出てきた。

それは一箇所に集まって、巨大な蜘蛛のような生き物になる。

「外に出すわけには行かない! 倒すぞ!!」

俺たちは武器を構えて、巨大な蜘蛛に立ち向かった。




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