不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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八章

神剣ではない剣

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「ギュイィィ!!」

巨大蜘蛛が、ズシン! と前足を振り下ろす。

ガキン!!

聖騎士ギルバートが、素早く聖騎士の盾で、強烈な一撃を防いだ。

俺は、いつものように床に矢を打ち込み、力場が発動して蜘蛛の動きが止まる。

一回……二回……そして三回目!!

蜘蛛は俺たちに、糸を吹きかけようとしたようだった。

自分の体に攻撃が跳ね返り、みるみるうちに糸の塊になっていく。

やがて、自分の糸で動けなくなった蜘蛛は、その場で沈黙してしまった。

俺は蒼炎を解放して、跡形なく焼き払う。

「やれやれ。怖かったニャ」

ニャルパンが、汗を拭いながら戻ってきた。
その手には、火箸で挟まれた神剣が握られている。

「浄化されたのか?」

俺が聞くと、ニャルパンは熱くなった神剣を水槽に浸して、冷やした。

ジュウゥゥ。
白い煙が上がる。

「穢れは落ちたニャ。でも、おかしいんだニャ。よく見たら、これは神剣じゃないニャ」

「!?」

ニャルパンは、冷えた剣を俺たちの前に置く。
形は確かに剣だ。

でも、よく見たら……。

「ん? なんだ? 剣の刃に、うっすらと亀裂がある。それに、この持ち手の柄の部分の装飾……微妙に歪んでないか?」

柄には、見事な宝石がいくつか埋め込んであるけど、真っ直ぐに揃っていないのだ。
俺が言うと、フィオも覗き込む。

「本当だ。アシンメトリー?」

「……いや。多分違う。これ、もしかして何か仕掛けのある剣なんじゃないか?」

「仕掛け……て、まさか……これは本当の神器へと導く道具なんじゃ?」

「!!」

「!?」

「!!!」

その場にいる、みんなが固まる。

沈黙の中、ニャルパンが手を上げて、俺たちに質問してきた。

「みんなー、俺っちにも知ってること、教えてほしいニャ。状況がわからないから、知恵を貸せないニャよ?」

俺は魔王の転生のこと、ネプォンのことを彼に説明する。

一通り聞いたニャルパンは、ふんふんと頷いた。

「これで納得したニャ。やっぱりこれは神器へと導く道具ニャね」

「道具」

「ニャ。大体、本物の神器でトドメを刺されたはずの魔王が、転生の秘術なんて放てるわけないニャよ」

「そういうものか?」

「事前に秘術を実行していたにせよ、神器は魔王の魂を消滅させる力があるニャ。魂を分けて転生させるなんて、実行不可ニャ」

「元になる魂が消滅するから、ってことか……」

「そうニャ。でも、使われた武器が、剣の形をした、ただの道具なら?」

「魂までは砕けずに、魔王の瘴気を吸い込んで錆びついてしまった……?」

「かもニャ」

「どういうことなんだ……ネプォンは、神器へと導く道具を持ちながら、それを使わなかったということか……?」

天に選ばれた英雄なんだろ? あいつ。

「今さらだが、アーチロビン」

ケルヴィン殿下が、俺を見る。

「はい?」

「お前も、神器に選ばれたんじゃないか?」

「へ!?」

「最初は、ネプォン義兄上が確かに天の選定を受けたんだろう。だが、彼は道具を受け取っただけで、神器を手にしなかった」

「そ、それは、道具だとわからなかっただけじゃ……」

「あり得るが……ネプォン義兄上の性格をよく知るのは……イルハート、お前は何が知ってるか?」

ケルヴィン殿下が、魔導士ティトが持つ、結界の鏡に向かって声をかけた。

「ふん、本当にわからなかっただけなんじゃなーい?」

大魔導士イルハートは、魔法で爪を塗りながら俺たちを流し目で見る。

「剣の哭き声が持ち主にしか聞こえないなら、あいつは意味がわからず、それを誰かに確認もせず、仕掛けも解けなかっただけかもよぉ?」

「解決のための、行動を起こさなかった?」

「私と出会う前から持ってたから、そうなんでしょうねぇ。それなりの切れ味だったし、私も特に疑問に思わなかったわぁ」

俺は、大魔導士イルハートの入った結界の鏡を魔導士ティトの手首ごと掴んで引き寄せた。

「どういうことだよ! ただの道具なら、本人にしか抜けない神剣にはならないだろ!?」

「本人にしか抜けない、て。ぼうやは確認したことあったぁ?」

「!!」

「伝説では、そう言われてる。でも、あいつは他人に神剣を触らせたことないのよ? みんな風聞で抜けないものだと、錯覚しただけよねぇ」

「じゃ、錆びたから抜けたわけじゃない、最初から誰にでも抜ける剣の形をした道具……」

「かもねぇ? あいつに、その剣の亀裂の意味を聞いたことがあったけど、神剣ならではの模様だと、言ってたわぁ」

「な……!」

「それなりに殺傷力があるから、わからなかったのねぇ」

「そんな……あいつ、わからないなら、なぜ聞かなかった?」

「ぼうや、あいつの性格知ってるでしょ? プライドが高くて、面倒くさがり、丸投げ気質。見栄だけはある。質問なんてできるタイプ?」

「あ……」

「実際、面倒くさがって、龍王を全て倒すことなく大帝神龍王に挑み、ぼうやは犠牲になったじゃなぁい?」

「!!」

「そう……なんとかなってきたのよ、あいつは今まで。ラック値が高いから、どんな状況も周りが犠牲になることで、『なんとか』なってきたのぉ」

「魔王には通用しなかった……」

「そうねぇ。魔王はそれがわかっていたから、“ネプォンに倒されて”やったのかもねぇ」

「転生の秘術を使うために……か」

「ズボラな勇者を利用した、てこと。あーあ、勝ち馬についたと、私も思い込んでたから、甘かったわぁ」

大魔導士イルハートは、塗った爪にふぅ、と色っぽく息を吹きかける。

「でも、私はぼうやという、新しい勝ち馬を……」

そう言って、ウィンクしてくる彼女が封じられた鏡を、フィオがひょいと裏返した。

「何、すんのよぉ!?」

「アーチロビン、仕掛けを解きましょう」

「お嬢ちゃん、失礼よぉ!?」

「あなたに、言われたくありません」

「んま!! ポーン風情が、生意気な!」

「くくく。いいぞ、フィオ。イルハートも肩なしじゃな」

「ティト、あんたまで……!!」

「お前なんぞ、勝ち馬に蹴られて、フラれるのがオチぞ、イルハート。他所をあたるんじゃな」

「く……!!」

女同士の舌戦に、聖騎士ギルバートが、困った顔をして俺を見た。

「アーチロビン、話を変えよう。仕掛けの謎はわかる?」
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