不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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八章

ネプォンの神剣

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俺は咄嗟にフィオを抱き寄せて、道の脇に避ける。

「うわ! とわ! わわわ!!」

フィオに抱きつこうとした男は、勢い余っていかつい男に抱きついてしまっていた。

「おおっと。なんだよ、てめぇ」

「す、す、すみませんー!!」

「待て、こらぁ!!」

人でごったがえす通りを、二人は走り去っていく。

やれやれ……。

ガチャン!

背中に何か当たった。
固いものだ。なんだ?

振り向くと、年季の入った盾が見えた。
露店で武器と防具を取り扱う店に、来てしまったんだな。

「お客様、商品が壊れたら買い取りしていただきますよ?」

顔を顰めた店主に言われ、俺はすまないと頭を下げる。腕の中のフィオは、顔を赤くしながら大人しく収まっていた。

その可愛らしさに、俺も赤くなる。

「あ、ありがとう、アーチロビン」

「い、いいんだ、フィオ。俺のせいだし」

俺は彼女を離すと、露店の商品を見回した。
すごいな。見たところ、新品はあまりない。

キーン……キィィィーン。
また、あの音だ。
はっきり聞こえる。
すぐ近くにあるみたいだ。

「あれ? これ……」

音にひかれて、ある剣が目に留まった。
目の前で、先にその剣を抜いた人が、不満そうに鞘に戻している。

「おい、店主! こんな錆びた剣を売るんじゃねぇよ!!」

「お客様、よく見ておくんなさい。外側の装飾は見事なもんでしょ?」

「け! おい、この剣の刃をとりかえてくれよ! そしたら、買ってやるぜ」

「それがねぇ、職人にもこの剣の刃が外せなくてね」

「じゃ、いらねぇよ」

「あー……ああ、ちくしょう、また客に逃げられたか」

店主が、頭を抱えて俯いている。俺は思わず、その剣を手に取った。

「ネプォンの神剣だ……」

呟く俺の隣から、フィオが覗き込む。
興味津々な目だ。

「これが、ネプォン王の剣なの? ……て、ええ!? あの人、神器を売ったの!?」

「そうみたいだな」

その声を聞いて、店主が俺たちを見た。
騒がしかったかな。

「おや、お客様。この剣をご存知で?」

「ええ」

「本当に神剣なんですかねぇ? いや、確かに売りつけにきた本人も、そんなこと言ってたんですよ」

「本人が売りにきたんですか」

「いやー、カタリですよ、絶対。装飾は見事なんですが、この錆のせいで売れないんですよ」

ネプォンの奴……天から与えられた、無二の神剣を売るなんて。

まあ、俺と旅していた時も、そんなに大事に扱ってなかったしな。

錆びたから、いらなくなったんだろうか。

「場所ばかり取るので、お客さん、よかったら安値で買いませんか?」

店主にそう言われて、俺は少し迷った後購入することにした。

価格はなんと、俺が前に持っていた木の弓より安い。

いいのかな……こんな扱い。

仮にも神剣なのに。フィオは、俺の隣を歩きながら、首を傾げている。

「よく、気づいたね」

「音が聞こえたんだ」

「音?」

「フィオは、やっぱり聞こえないか?」

「ええ」

「そっか。気のせいかな」

確かに聞こえたはずなのに、今は何も聞こえない。

「ね、アーチロビン。神剣は、本来の持ち主以外には、抜けない剣なのよね?」

「そのはずだよ」

「でも前に、ゾンビダラボッチの結界の前で、シャーリー様にも抜けていたよね」

「そうだったな。あの時も驚いたけど、さっきの客にも抜けてたものな。おそらくあの店主にも」

「どういうことなのかな。それに、神器が錆びるなんて、あり得ないでしょ?」

「俺も聞いた事ない」

なぜ、錆びたんだろうな。ネプォンが、英雄としての資格を終えてしまったとか?

それとも、奴があまりにも怠惰な王にしかならなかったからか?

俺が知る英雄譚の裏話にも、天から授かった武具が錆びた話は聞かない。

「まるで、穢れを吸い込んだみたいだね」

不意に、フィオがそう言った。

「え……」

「そのせいで、錆びたみたいじゃない」

「そ、そりゃそうだけど」

「本来の持ち主が、アーチロビンだったら、よかったのに」

「買いかぶりすぎだよ、フィオ。今の俺があるのは、大帝神龍王の力があるからだ」

「はぁ、あなたは偉いな。決して驕らないんだもの」

「いや、そうしてないと、『兵器』になってしまいそうで」

「え?」

「俺の力を目にした他の冒険者に、『まさに兵器だな』と、言われたことがある。それが、忘れられなくて」

「アーチロビン……」

「俺の力は、それほど恐ろしいものなんだ。だから、この言葉をいつも思い出して、驕らないようにしてる」

「……ごめんね」

「あ、いや、違うよ。フィオを責めてないから。言い方がまずかったな」

「ううん、大きな力には責任も伴うもの。やっぱりあなたは、すごいと思う」

「フィオ、ありがとう」

「この神剣……やっぱりあなたの方が相応しいと思うけどな」

「はは。俺は剣を使わないからなあ。弓ならよかったのにな」

キーン……キィィィーン。

あ。また、聞こえる。でも、隣のフィオには聞こえてないようだ。

空耳……?

「そこの兄ちゃんたち、止まりニャ」

ふと、誰かに声をかけられる。振り返ると、ボサボサの頭に、汚れて破れた服を纏った背の低い猫族の男が立っていた。

「剣が哭いてる。あんた、それ早く浄化しないと、魔剣になるニャ」
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