不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

文字の大きさ
85 / 96
九章

魔王ダーデュラ

しおりを挟む
魔王ダーデュラは、俺たちに向かって指を一本たてた。

俺は、その意味が直感的にわかる。

時間停止!!

「フィオ! 獣形になれ!! タインシュタ・フラン! 対策を!」

フィオは、慌てて白狐の姿に変わる。

白狐は、魂が精霊に近い存在だと、テレクサンドラは言っていた。
真の姿である獣形の方が、影響を受けにくい。

ピン!!

弦を弾いたような音がして、時間が止まった。
俺の懐に逃げ込んでいた、オウムのフェイルノが、ピクリとも動かない。

タインシュタ・フランも動きを止めて、下に沈みかけたけれど、胸元がサッと光って再び動き始める。

「ふぅ、前もって、身代わりの術をしておいてよかった」

彼は安堵のため息をついたあと、ノートに書き込んでいた。どこまでも呑気だよな。

さらに魔王は俺たちに、体力減少や、状態異常誘発、死の呪いまでかけてくる。

行動が早い。
スピードアップのスキルが、既に発動しているな。

それから、魔王自身には、『絶対魔法防御』、『絶対武器防御』など、これでもかと言いたくなるほど、恩恵の多いスキルを発動しまくっていた。

蓄えたスキルを、見せつける気だ。
だけど、俺たちも負けていられない。

フィオは、必死で回復の呪文を詠唱している。

「フィオ、時の停止の影響を受けなくて良かった」

「あなたのおかげ。この姿は時の影響を受けないから」

「フィオ、今は体力回復に集中だ。死の呪いも、浄化を頼む。俺たちを助けてくれ」

「任せて。大丈夫よ」

俺たちは、小声で会話を交わすと、魔王ダーデュラに向かい合った。

魔王の行動スピードが速い以上、フィオは回復と防御に集中してもらわないと。

回復役にフィオがいる限り、俺は戦える。

さあ、こっちの番だ。

俺が構えた神弓は、光をまとって輝き始めた。

魔王ダーデュラは、嘲笑するように体を震わせる。

“やれるものなら、やってみろ”、て、感じだな。

俺は、引いた弓の弦を離す。

ヒュン!

俺が放った矢は、魔王ダーデュラの横を通って亜空間の中に消えていく。

『絶対武器防御』の効果か。
矢の攻撃も避ける仕組みだな。

ヒュン! ヒュン! ヒュン!

続けて放つ。全て亜空間の中に吸い込まれ、どこにも見えなくなった。

ふと、タインシュタ・フランが横から話しかけてくる。

「アーチロビン、力場を作れない場所では、お前の力は不発だ。他の力で戦うのか?」

「他の力はおそらく、全て無効にされる。蒼炎すら、気休め程度にしか効かないだろう」

「なら、どうする気だ。負け戦なんて、記録したくないぞ」

その時だ。

ガ……ガ……ガ。

魔王ダーデュラの首が、横に倒れる。まるで首を傾げているように。

ゆっくりとその顔が俺を見て、タインシュタ・フランの方を見る。

この雰囲気、彼を狙ってる!?

「タインシュタ・フラン!! シールドを張れ!」

俺が叫ぶのと同時に、彼の足元から火が噴き出した。

「むう!?」

タインシュタ・フランは、魔法でシールドを張って耐える。

パキッ、ピシッ!

シールドに、ヒビが入った。
それだけ、大きな火の魔法。

タインシュタ・フランは、焦ったように魔王を見る。

「何をする!! 英雄はあっちだ! 私を巻き込むな!!」

……やれやれ。
この場に来て、傍観者になんてなれるはずがないのに。

魔王ダーデュラは、俺の方に視線を向けると、指先を向けてくる。

シュー……。奴の指先からは、煙があがるばかり。

一回目。
無意識にカウントする。

魔王ダーデュラは、空中から剣を取り出し、振りかぶってきた。

その腕が途中で止まる。

二回目。
効いてる……効いてる!

三回目の攻撃は、召喚魔法だった。
地獄より召喚された怪物が現れたけれど、そいつの攻撃のダメージは、魔王に跳ね返る。

魔王は、自分の召喚魔法のダメージを受けて、驚いていたようだった。

すぐに回復魔法で、体力を全回復している。
回復魔法は『絶対魔法防御』の影響を受けないのだな。

「攻撃抑止と絶対反転が機能しているだと? 床もなく、天井もない。力場を発生させる場所がないのに、どうして……神弓だからか? いや、違うな」

タインシュタ・フランも、驚愕の表情で俺を見る。

「多分、誤解してるんだ、タインシュタ・フラン。そして、魔王も」

俺も横目で彼を見て、静かに言った。

「わからん! アーチロビン、教えろ! なせだ?なぜだ、なぜ? こんな場所でなぜ!? いつもどこかに矢を刺すことで、発動してたろ!?」

「タインシュタ・フラン。別にいいじゃないか。目的は魔王ダーデュラを倒すこと。仕組みの解明なんて、後でいい」

「教えろ! 今度こそ!!」

「今度こそ?」

「い、いや、なんでもない。解明されないと、イライラするからな」

「こっちは、それどころじゃない」

俺は魔王ダーデュラを睨んだ。
もっと体力を削るかと思ったのに、耐え切ったところは流石だな。

ゴォォォ!!

魔王の後ろから強い風が吹いてきて、闇の中のような亜空間から、雲の上の世界に出たような光景に切り替わる。

空間を変えやがったか。

俺は再び矢を連射した。

矢は一発も魔王ダーデュラに当たらず、横をすり抜けて見えなくなる。

それでも。

俺に攻撃を当てようとする魔王ダーデュラは、再び力場に捕まり、何もできずにいた。

魔王ダーデュラの、怒気のような感情が空間内に溢れる。

“何をした……!?”
そう言われてるようだ。
すぐに倒せると、踏んでいたんだろう。

力場の発動を抑えれば、瞬殺して終わりだと。

だが……。

「ダーデュラ。お前の攻撃力の高さこそ、お前の素早さこそ、お前のスキル全てこそ仇になる。お前の力が、己を滅ぼす最大の敵なのだから!」

俺が言うと、魔王ダーデュラは、空気を振動させて叫ぶ。

「ガァァァァァァァ!!」

せつな、魔王の後ろから、使い魔のような二体の魔物が飛び出して来た。

素早く動いて、俺のそばにいるフィオを狙っている。

「フィオ、シールドを!!」

俺が言うと、フィオはすぐに詠唱した。

「慈悲深き我らが神よ、聖霊を遣わし、我らの盾となる力を貸し給え、セイントシールド!!」

俺たちを、鉄壁のシールドが包む。使い魔たちは弾き返されて、フィオを捕えることができない。

俺は素早く矢を連射して、二体の使い魔を俺の力場に捉える。

あとはコカトリスを倒した時の技、『光弾』を放って俺に敵意を向けさせた。

あとはいつも通り、自滅していく様を見送る。

「む!?」

流石に、タインシュタ・フランが気づいたようだ。

顎を撫でて、満足そうに頷く。

「そういうことか……! やっとわかったぞ。早速記録せねば!」

「後にしろ!」

直後、魔王ダーデュラが即死級の大魔法を放った。

来たな!
全体技だ!!

攻撃対象に俺が含まれれば、他者を巻き込む攻撃でも、俺の力は有効だ。

再び三回目の攻撃が跳ね返った魔王は、苦悶の声をあげている。自分の攻撃を、自分が味わうのだからな。

瀕死になるほどの体力を、自分で削ったわけだ。

あと一撃入れれば、倒せる。

けれど、ここで直接手を出せば危ない。
俺の直感はそう告げている。

なぜなら、奴は魔王だから。
勝利は確実だと思った時に、隙ができる。
そこを狙われる気がしてならない。

「チャンスだ……!」

!?
誰の声だ?

ここにいはいないはずの、あいつの声。

「ネプォン?」

思わず俺が言うと、タインシュタ・フランは慌てたように俺を見た。

「違う、違う。今のは私だ。魔王は瀕死だから、チャンスじゃないかと思ったのだ」

「今の声は、確かに……」

「アーチロビン、今は考えるな! モタモタしてたら、魔王が回復してしまうぞ!」

そう話す俺たちの前で、魔王ダーデュラは、体力回復の魔法を発動する。

これでは、事態は膠着したままだ。

「アーチロビン! ほら、みろ!! せっかくのチャンスを逃して、奴はまた回復したじゃないか」

「落ち着いてくれ、タインシュタ・フラン。俺に考えがある」

俺はタインシュタ・フランにそう言うと、弓を構えて、魔王ダーデュラを狙った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...