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九章
奥の手
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どう攻撃しようと、体力も魔力も回復できて、防御力と攻撃力も高い相手にどうすればいいのか。
ましてや、英雄と同等の実力を身につけた魔王に。
けれど……完璧に思えても弱点はある。
先代の魔王が転生した場合は、大魔導士がその魔力供給機関として、体に取り込まれるとか。
今、大魔導士イルハートのコピーが、彼女の代役として取り込まれている。
つまりそこは、元々魔王のものではなかったもの。
体力ではなく、魔力を削り続ければ、いずれ限界がくるんじゃないか!?
酷使された機関は、すり減るものだから。
コピーが寸分変わらぬ存在だとしても、オリジナルほどもたないだろう。
俺は弓を逆に持ち替えた。
弦で狙いをつけ、弓本体のハンドルを引いて矢を放つ。
他の弓ならこううまくはいかないけれど、そこは神弓。
連射して力場を発動した。
矢は絶対武器防御のスキルによって、魔王から逸れていくけど問題ない。
大気が振動して、力場によって削られるものが、体力から魔力へと切り替わる。
「……!?」
魔王も何が起きたのか、わかっていない。
防御のスキルは『体』を守るもの。『魔力』を守るスキルはこの世界にはない。
あとは魔王の攻撃を誘うだけ。
一つだけある。プライドの高い奴の攻撃を、効果的に誘うもの。
「フィオ」
俺は彼女に話しかけた。
「どうしたの?」
「今から、魔王ダーデュラを直接攻撃する」
「え!? 『絶対武器防御』のスキルを発動したままの相手に?」
「考えがある。フィオは、シールドを張り続けていてくれ。何があっても」
「……わかった。あなたを信じる」
俺は、浮遊状態をうまく操って、魔王ダーデュラに接近した。
「!?」
咄嗟の動きに、魔王は戸惑いを見せる。
弓使いは、遠距離攻撃が主体と思われがちなもの。
まさか。そればっかりなわけない。
俺は神弓を背中に装備しなおすと、拳でダーデュラがつけている仮面を殴った。
バキ!
……やった!
素手の一撃が、はいった!!
人間の素手の一撃なんて、大したダメージにはならないが、素手は『絶対武器防御』の対象外だと思ったんだ。
ガ……ガガ!?
魔王ダーデュラの体が、小刻みに震え始める。
何が起きているのか、魔王ダーデュラは認めたくないだろう。
素手だと?
人間ごときが!?
そう言いたげな、空気感が感じられる。
見下している相手に、顔面パンチを喰らうなんて、相当な屈辱のはずだ。
パキパキ!
魔王ダーデュラのつけていた仮面に、ヒビが入っていく。
俺はすぐさま離れて、距離を取った。
パキン!!
魔王の仮面が半分に割れて、中から黒い闇が溢れてくると、巨大な渦に変化する。
相当お怒りだな。
そのまま、俺たちを粉々にする気だったのだろう。
ビュオン!! ガガガガ!!
大きな音はするのに、その勢いはその場で止まったまま。
一回目!
ならばと、魔王はまた巨大な魔法を放とうとして、不発になる。
二回目。
次に魔王は、俺を引き裂こうと、鋭い刃を放とうとした。
三回目!
ズバ!
魔王本人に衝撃が跳ね返り、魔王は思わず自分の体を見回す。
……どこも切れてない。
だが……、魔力が大きく削られているはずだ。
プシュー!!
大きな音がして、魔力が回復していく。
これを繰り返せば!!
俺は再び、素手による攻撃を浴びせ、魔王の攻撃を誘っては跳ね返した。
何度も、何度も繰り返す。
魔王も、俺の意図を察して冷静になろうとしていたみたいだが、屈辱の感情がそれを上回っていた。
元々見下していた種族に、ここまでやられちゃな。
攻撃抑止で、殴りかかってくる俺を防げないばかりか、倒そうと繰り出す技は全て自分の魔力を削ってくる。
この現状に、奴自身の無意識の焦りが余計な魔力の浪費を招いていた。
いつだって窮状を打破するのは、予想の斜め上の行動だからな、ざまあみろだ。
それでも、魔王の膨大な魔力はいつ尽きるのかわからない。
あらゆる体術を駆使して、その時を待つ。
必ず───必ず倒すんだ!!
グニャリ。
何度目かの攻撃の後、魔王の姿が歪む。
……きた!
限界がきたんだ!
魔王ダーデュラは、魔力を回復させようとして、身の内に呼びかけているようだけど、何も起きない。
魔王の胸から、黒い砂のようなものが溢れてきて、異空間の底にハラハラと落ちていく。
大魔道士イルハートのコピーが、限界を迎えて消滅したんだ。
キュオオオオオー!!!
切り裂くような悲鳴が響いて、魔王ダーデュラの周りから光が溢れて、次々と離れていく。
同時に、異空間だった空間が元の魔王の城に戻った。
魔力が、完全に尽きたな!!
俺は神弓を元通りに構えると、魔王に向かって射る。
ドス!!
初めて魔王の体に、矢が刺さった。
身を守るスキルまで、解除されたようだ。
魔王は刺さった矢を掴んで、へし折ろうとする。
「させるか!!」
俺は続けて、矢を魔王の体に射た。
矢は急所に次々と刺さり、魔王の体力を奪っていく。
バン!
「アーチロビン!!」
「無事か!?」
そこへ、聖騎士ギルバートと、魔導士ティトが扉を開けて現れた。生きていた……帰ってきてくれた!
満身創痍みたいだけど、二人とも元気だ。
フィオがすぐに、二人に回復魔法をかける。
「二人とも、無事だったんだな!」
と、俺は嬉しくて、二人に声をかけた。
「おう!」
「ボクたちも手伝うよ……と言っても、出番ないみたいだね」
魔導士ティトと、聖騎士ギルバートは、俺の隣に来て話しかけてきた。
「ああ。でも、おかしいんだ。急所を射抜いたはずなのに、まだ息がある。体力も、回復させる魔力も、尽きているはずなのに」
と、俺は言って、弓を構えながらゆっくり近づくと、魔王はぐったりと床に伸びた。
死んだ……のか?
でも、肉体が消滅しない。
何か、おかしい。
フィオも、恐々と顔をあげて魔王ダーデュラを見つめる。
「魔王は、ほとんど瀕死。でも、ほら見て、アーチロビン」
「ん? どうした? フィオ」
「心臓のところ、矢の刺さり方が浅い」
「……確かに」
近づいて、ねじ込むか。
いや、待て。何かある。
俺はもう一度、弓の弦を引いた。
「近づくとまずいなら、ワシが魔法を撃ち込んでやろうか?」
後ろから魔導士ティトが、話しかけてくる。
それもいいけど、何か気になる。
「いや、神弓の方がいいと思う。もう一本重ねることで、深く押し込むから」
「『継ぎ矢』か? 先に放った矢に、次の矢を刺すあれか? 狙ってできるのか? アーチロビン」
「そうだよ、ティト」
この技は、幼い頃じっちゃんに習った技。
こんなところで、役に立つなんてな。
話を聞いていたタインシュタ・フランが口を挟んでくる。
「さっきの戦いで、連射を多用していたのは、継ぎ矢をするためだったのではないか? アーチロビン」
「ああ。敵の力の流れに干渉する力場の発動条件は、世界中に流れる力の流れ『龍脈』が鍵だから」
そう……龍脈が走る場所に、俺の気を込めた矢を刺すことで力場が発動していたのだ。
俺の目は、龍脈を見ることができるから。
だが、魔王は龍脈を射抜かせないよう、異空間に俺たちを閉じ込めた。
そのため、奥の手を使うことにしたんだ。
「俺の矢は、放つと軌道上に龍脈が生じる。すぐに消えるけど。そこをうまく利用したまでさ」
隣にいたフィオが俺を見上げて、目を輝かせる。
「確か、必ず三本ずつ連射してたよね? アーチロビン」
「そうだよ、フィオ」
「も、もしかして、最初に射た矢で龍脈を作り、同じ軌道に放った二本目の矢に、三本目の矢を刺すことで力場を得ていたの?」
「あたり」
「速すぎて見えなかったから、わからなかった。すごいね!」
「ありがとう、フィオ」
さあ、今度は魔王の心臓に、深く矢を刺しこむぞ。
そう思いながら、引いた弓の弦を放そうとした時だ。
「手柄はもらったぁ!!」
いきなりネプォンの声が聞こえて、思わず声がした方を振り向く。
どこに!? ───あ!!
タインシュタ・フランの背嚢の中から、イルハートを封じたものと同じ、結界の鏡が転がり出てきた。
鏡は床に落ちて割れると、中からネプォンが出て来る。
「へっへっへ。お前に勝利はやらねーよ、馬鹿弓使い!」
「ネプォン!」
こいつ……今の今まで隠れてやがったのか!
ましてや、英雄と同等の実力を身につけた魔王に。
けれど……完璧に思えても弱点はある。
先代の魔王が転生した場合は、大魔導士がその魔力供給機関として、体に取り込まれるとか。
今、大魔導士イルハートのコピーが、彼女の代役として取り込まれている。
つまりそこは、元々魔王のものではなかったもの。
体力ではなく、魔力を削り続ければ、いずれ限界がくるんじゃないか!?
酷使された機関は、すり減るものだから。
コピーが寸分変わらぬ存在だとしても、オリジナルほどもたないだろう。
俺は弓を逆に持ち替えた。
弦で狙いをつけ、弓本体のハンドルを引いて矢を放つ。
他の弓ならこううまくはいかないけれど、そこは神弓。
連射して力場を発動した。
矢は絶対武器防御のスキルによって、魔王から逸れていくけど問題ない。
大気が振動して、力場によって削られるものが、体力から魔力へと切り替わる。
「……!?」
魔王も何が起きたのか、わかっていない。
防御のスキルは『体』を守るもの。『魔力』を守るスキルはこの世界にはない。
あとは魔王の攻撃を誘うだけ。
一つだけある。プライドの高い奴の攻撃を、効果的に誘うもの。
「フィオ」
俺は彼女に話しかけた。
「どうしたの?」
「今から、魔王ダーデュラを直接攻撃する」
「え!? 『絶対武器防御』のスキルを発動したままの相手に?」
「考えがある。フィオは、シールドを張り続けていてくれ。何があっても」
「……わかった。あなたを信じる」
俺は、浮遊状態をうまく操って、魔王ダーデュラに接近した。
「!?」
咄嗟の動きに、魔王は戸惑いを見せる。
弓使いは、遠距離攻撃が主体と思われがちなもの。
まさか。そればっかりなわけない。
俺は神弓を背中に装備しなおすと、拳でダーデュラがつけている仮面を殴った。
バキ!
……やった!
素手の一撃が、はいった!!
人間の素手の一撃なんて、大したダメージにはならないが、素手は『絶対武器防御』の対象外だと思ったんだ。
ガ……ガガ!?
魔王ダーデュラの体が、小刻みに震え始める。
何が起きているのか、魔王ダーデュラは認めたくないだろう。
素手だと?
人間ごときが!?
そう言いたげな、空気感が感じられる。
見下している相手に、顔面パンチを喰らうなんて、相当な屈辱のはずだ。
パキパキ!
魔王ダーデュラのつけていた仮面に、ヒビが入っていく。
俺はすぐさま離れて、距離を取った。
パキン!!
魔王の仮面が半分に割れて、中から黒い闇が溢れてくると、巨大な渦に変化する。
相当お怒りだな。
そのまま、俺たちを粉々にする気だったのだろう。
ビュオン!! ガガガガ!!
大きな音はするのに、その勢いはその場で止まったまま。
一回目!
ならばと、魔王はまた巨大な魔法を放とうとして、不発になる。
二回目。
次に魔王は、俺を引き裂こうと、鋭い刃を放とうとした。
三回目!
ズバ!
魔王本人に衝撃が跳ね返り、魔王は思わず自分の体を見回す。
……どこも切れてない。
だが……、魔力が大きく削られているはずだ。
プシュー!!
大きな音がして、魔力が回復していく。
これを繰り返せば!!
俺は再び、素手による攻撃を浴びせ、魔王の攻撃を誘っては跳ね返した。
何度も、何度も繰り返す。
魔王も、俺の意図を察して冷静になろうとしていたみたいだが、屈辱の感情がそれを上回っていた。
元々見下していた種族に、ここまでやられちゃな。
攻撃抑止で、殴りかかってくる俺を防げないばかりか、倒そうと繰り出す技は全て自分の魔力を削ってくる。
この現状に、奴自身の無意識の焦りが余計な魔力の浪費を招いていた。
いつだって窮状を打破するのは、予想の斜め上の行動だからな、ざまあみろだ。
それでも、魔王の膨大な魔力はいつ尽きるのかわからない。
あらゆる体術を駆使して、その時を待つ。
必ず───必ず倒すんだ!!
グニャリ。
何度目かの攻撃の後、魔王の姿が歪む。
……きた!
限界がきたんだ!
魔王ダーデュラは、魔力を回復させようとして、身の内に呼びかけているようだけど、何も起きない。
魔王の胸から、黒い砂のようなものが溢れてきて、異空間の底にハラハラと落ちていく。
大魔道士イルハートのコピーが、限界を迎えて消滅したんだ。
キュオオオオオー!!!
切り裂くような悲鳴が響いて、魔王ダーデュラの周りから光が溢れて、次々と離れていく。
同時に、異空間だった空間が元の魔王の城に戻った。
魔力が、完全に尽きたな!!
俺は神弓を元通りに構えると、魔王に向かって射る。
ドス!!
初めて魔王の体に、矢が刺さった。
身を守るスキルまで、解除されたようだ。
魔王は刺さった矢を掴んで、へし折ろうとする。
「させるか!!」
俺は続けて、矢を魔王の体に射た。
矢は急所に次々と刺さり、魔王の体力を奪っていく。
バン!
「アーチロビン!!」
「無事か!?」
そこへ、聖騎士ギルバートと、魔導士ティトが扉を開けて現れた。生きていた……帰ってきてくれた!
満身創痍みたいだけど、二人とも元気だ。
フィオがすぐに、二人に回復魔法をかける。
「二人とも、無事だったんだな!」
と、俺は嬉しくて、二人に声をかけた。
「おう!」
「ボクたちも手伝うよ……と言っても、出番ないみたいだね」
魔導士ティトと、聖騎士ギルバートは、俺の隣に来て話しかけてきた。
「ああ。でも、おかしいんだ。急所を射抜いたはずなのに、まだ息がある。体力も、回復させる魔力も、尽きているはずなのに」
と、俺は言って、弓を構えながらゆっくり近づくと、魔王はぐったりと床に伸びた。
死んだ……のか?
でも、肉体が消滅しない。
何か、おかしい。
フィオも、恐々と顔をあげて魔王ダーデュラを見つめる。
「魔王は、ほとんど瀕死。でも、ほら見て、アーチロビン」
「ん? どうした? フィオ」
「心臓のところ、矢の刺さり方が浅い」
「……確かに」
近づいて、ねじ込むか。
いや、待て。何かある。
俺はもう一度、弓の弦を引いた。
「近づくとまずいなら、ワシが魔法を撃ち込んでやろうか?」
後ろから魔導士ティトが、話しかけてくる。
それもいいけど、何か気になる。
「いや、神弓の方がいいと思う。もう一本重ねることで、深く押し込むから」
「『継ぎ矢』か? 先に放った矢に、次の矢を刺すあれか? 狙ってできるのか? アーチロビン」
「そうだよ、ティト」
この技は、幼い頃じっちゃんに習った技。
こんなところで、役に立つなんてな。
話を聞いていたタインシュタ・フランが口を挟んでくる。
「さっきの戦いで、連射を多用していたのは、継ぎ矢をするためだったのではないか? アーチロビン」
「ああ。敵の力の流れに干渉する力場の発動条件は、世界中に流れる力の流れ『龍脈』が鍵だから」
そう……龍脈が走る場所に、俺の気を込めた矢を刺すことで力場が発動していたのだ。
俺の目は、龍脈を見ることができるから。
だが、魔王は龍脈を射抜かせないよう、異空間に俺たちを閉じ込めた。
そのため、奥の手を使うことにしたんだ。
「俺の矢は、放つと軌道上に龍脈が生じる。すぐに消えるけど。そこをうまく利用したまでさ」
隣にいたフィオが俺を見上げて、目を輝かせる。
「確か、必ず三本ずつ連射してたよね? アーチロビン」
「そうだよ、フィオ」
「も、もしかして、最初に射た矢で龍脈を作り、同じ軌道に放った二本目の矢に、三本目の矢を刺すことで力場を得ていたの?」
「あたり」
「速すぎて見えなかったから、わからなかった。すごいね!」
「ありがとう、フィオ」
さあ、今度は魔王の心臓に、深く矢を刺しこむぞ。
そう思いながら、引いた弓の弦を放そうとした時だ。
「手柄はもらったぁ!!」
いきなりネプォンの声が聞こえて、思わず声がした方を振り向く。
どこに!? ───あ!!
タインシュタ・フランの背嚢の中から、イルハートを封じたものと同じ、結界の鏡が転がり出てきた。
鏡は床に落ちて割れると、中からネプォンが出て来る。
「へっへっへ。お前に勝利はやらねーよ、馬鹿弓使い!」
「ネプォン!」
こいつ……今の今まで隠れてやがったのか!
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