心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

ときめく心

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レドリシアは、肩から落ちてくる髪を頭を振って後ろに流し、腰に手をあてた。

「大体アイスリー様の、どこがそんなにお気に召したのですか?
出会って日も浅いし、お互い大して知らないのに。」

グサッとくるお言葉。
そんなのピンポイントで答えられるわけな・・・。

「全部。」

「え?」

「全部気に入ってる。
アイスリーの全てが、愛おしい。
他の女なんて、比較にもならない。」

「はあ!?」

ファイ様の断言に、レドリシアは開いた口が塞がらないようにポカンとしている。

私も全身が一気に真っ赤になるのが、わかった。
ぜ、全部?こんな素敵な人が、迷いもなくはっきりと言い切るなんて。

どうしたらいいの?
この人が私の伴侶なんて、嬉し過ぎて倒れそう。

レドリシアは、さらに何か言いかけて肩を落とすと、ファイ様と反対の方向に歩いていく。

あ、まずいわ。
このまま隠れていても、ここでは彼女に見えてしまう。

だからって元の廊下に戻ると、今度は私が彼女と鉢合わせる。

んー!
仕方ない戻ろう!

私は急いで中庭に降りる階段を駆け上がると、元の廊下に戻って澄まして通り過ぎ去ろうとした。

レドリシアが見えてきたので、廊下の端によると、彼女が通り過ぎるまで頭を下げる。

そうそう、そのまま行って・・・。
なのになぜか、私の前でピタッと足を止める。

「ねぇ、あなた。
何をニヤニヤしてるの?」

ひぃっ。ファイ様の言葉の余韻よいんが残っていて、顔に出てるんだ!
お、落ち着いて、私は今、侍女よ!
変装がバレないようにしなきゃ!!

「は、はいっ、すみません!」

「・・・ま、下々しもじものことはどうでもいいわ。
それより、アイスリー様と私は、どちらが美しいと思う?」

・・・嫌な質問。
こういう時は、彼女の方をめるべきなんでしょうけど、負けたくないな。

よし、い、言っちゃえ!

「それは、ア、アイスローズさ・・・。」

「そうよね?
私の方が美しいわよね?
私はこの国一番の美女なの。」

ええ!?
そんなこと言ってない!

「おかしいわよね、ファイ様。
頭も胸も顔も私の方がいいのに、わざわざアイスリー様がいいなんて言うの。」

腕を組んで、グチグチと言い出した。
わざわざ・・・て、いいって言うんだからいいじゃない!?
・・・とは、今本人に言えない。

この人、あれだけファイ様にはっきり言われてるのに、何故落ち込まないの?
メンタルの強さが、恐ろしいわ。

「まぁ、どのみち彼女は、火の試練を受けることになるのよ。
その時は・・・、ふふふ、彼女はそこから出られない。今度こそ、殿下は私のものになる。」

「!!」

レドリシアは、あやしく笑う。

どういうこと?
試練を受けることになる?
出られない?

「あ、今の話は内緒よ?
もっとも、報告したところで何も変わらない。
うふ、誰がこの国一番の美女か、もう一度みんなに思い出させてやるわ。」

レドリシアは、満足したように宮の外へと歩いて行った。

厚かましいけど、どこから湧いてくる自信なんだろ。
こういう人は未だに少し、気後れしてしまう。

それにしても、ファイ様も何故こんな人と付き合ったの?
似てる、てだけでそんな!!

・・・似てるだけでいいなら、私でなくてもいいんじゃない・・・?

あぁ、またそんなこと考えて!!
何故疑うのよ。

そ、それより私の試練のことファイ様にも伝えないと!

私が足早に廊下を進むと、向こうから小型犬の姿のファイアボールが、尻尾を振りながら走ってきた。

ふふ!可愛いモコモコちゃん!
私はしゃがんで、そのモフモフのファイアボールを撫でる。

ひとしきり撫でた後、ファイアボールと一緒に廊下を進んでいくと、柱にもたれかかって中庭を見つめるファイ様がいた。

それはまるで絵画を見ているような光景で、改めて素敵な人だと思ってしまう。
でも、その瞳はうれいを感じられて、声がかけにくい。

レドリシアとのこと・・・考えてるのかしら。

私が戸惑っていると、ファイアボールがファイ様の足元に走り寄ってキューンと鳴く。

彼はその声で夢からめたように、私の方を見た。

その瞬間、さっきファイ様が私の全部を気に入ってると言った言葉を思い出した。
呼吸することも忘れてしまうほど、彼を見つめてしまう。

ファイ様は寄りかかっていた柱から体を起こすと、

「素敵だよ、とても似合ってる。
赤毛もいけるな。」

と、笑顔でめてくれた。
胸の中で愛おしさが膨らんで、思わず駆け寄って抱きつきたくなる衝動を必死で抑える。

今は侍女だから!

「フ、ファイ・・・様、あの・・・。」

「ん?」

変に緊張して、言葉が出てこない。
それでも私は、顔を赤くしながら、なんとかレドリシアに聞いたことを話した。
ファイ様は、あごに片手を当ててしばらく考え込む。

「気になるな。
何をする気かわからないけど、いざという時はアイスリーを連れて隠れるのもありだな。
とにかく、今は王太后おうたいごう様のところへ行こう。」

そ、そうね、まずはそこから。
全てが王太后様の意向なら、本人に聞くのが早い。

私たちは、王太后様のお部屋に向かって歩き出した。
その間目線がどうしても、彼の背中を追いかけてしまう。
胸がドキドキして、止まらない。

昨夜といい、今日といい、ときめきっぱなし。

結婚した今になって、こんなにこの人に恋するなんて!
普通は、付き合ってる時に恋ははぐくむものなのに。

それでも、今は抑えなくちゃ。
私は彼の足元を歩く、ファイアボールのモコモコとした姿に集中することにした。

しばらく歩いていると、ファイ様がいきなり止まって、彼の背中にコツンとぶつかる。

「おっと、大丈夫?」

「ご、ごめんなさい。
ファイアボールを見てたから。」

「・・・し!
出てくるぞ。」

ちょうどヴィノガン様が、目の前の大きくて豪華な扉から出てきた。
ファイ様がお辞儀をして、私も侍女としてひざまずいてお辞儀をした。
ヴィノガン様も軽く頭を下げて、ため息をつく。

「ファイバーンよ、先王の遺言に律儀に従っているだけかと思ったら、アイスローズにすっかりおぼれきってるようだな。
ブリザードゥ国とは共に歩めぬのに。」

「何故です?」

彼奴等きゃつらは心まで氷でできた、冷酷な生き物だ。アイスローズ所詮しょせんそんな女子おなごぞ。」

「彼女はそんな女性ではありません。
今は国民も互いの国を行き来しており、婚姻もさかんです。」

「ふん、今だけじゃ。
昨今はどの国も、他の属性を持つ民との婚姻を進めているが、結果多属性の混血児が魔法の詠唱なくば魔法を使うことすら出来なくなっているではないか。」

「確かに、私たちは詠唱なしで、強力な魔法を使いこなせます。
ですが、それは所属する属性の魔法に特化しているだけですから。
これも、時代の流れだと申せましょう。」

ファイ様の言うことは正しい。
いずれは全ての人が、一人で複数の属性を当然のように使いこなし、体に反動も起きない時代がくるわ。

でも、ヴィノガン様は嫌悪感をあらわにする。

おろかなことをいうでない。
忘れるな、我らは高潔な火の民。
その神獣と同じ瞳を持つお前は、尚更なおさらのこと。」

「だからなんです?」

「誇りはどうした!?
誇りがあれば、氷の民の女に心奪われることなど、あるわけがない!!」

「もちろん、ありますよ。
誇りはあるし、私の心はもう奪われてます。」

「たわけが!
私は認めぬぞ!」

「そうですか。
いざと言う時は、彼女を連れて王家を出てもかまいません。
そうしましょうか?」

「!
き、気分が悪い!通訳はせぬぞ!!」

「それより、レドリシア嬢と何を打ち合わせされたのです?」

「ちっ、お前は知らんでもいい!!」

ヴィノガン様は、舌打ちをしてそのまま去っていった。
気づかれなくてよかった。

でも、ファイ様本気なの?
私を連れて王家を出るなんて。
・・・どうして、そこまで愛してくれるんだろう。

こんなに大事にする理由。
迎賓館げいひんかんで助けてくれた時から、ずっと彼は優しい。まさかベロジュ達に、いじめられていた私に同情しただけなのでは・・・?

ない、ない!そんなこと!!

これは今考えることじゃない。

扉の前にいた侍女に案内されて、私たちは寝台に横になっている王太后様のそばへと歩いて行く。

ファイ様が人払いをして、ファイアーボールに扉を見張らせると、私を連れて王太后様のお顔を覗き込んだ。

眠ってる?
私は赤毛のカツラを外して、お声をかけようと手を伸ばす。
その時、かごの中のダイヤモンドダストが飛び出してきて、王太后様の胸の上に飛び乗った。

「こ、こら!だめよ!」

慌てて抱き上げようとすると、王太后様が目を覚まして、ダイヤモンドダストを見つめた。

「申し訳ありません!
すぐに・・・!!」

「ダイヤモンドダスト・・・。」

ダイヤモンドダストを抱き上げようとした瞬間、はっきりした王太后様の声を聞いた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。

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