心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

ちゃんと知りたいから

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目の前にファイ様の背中がある。

「そうだ。やはり彼は試練に挑んだんだ。
私たちも行こう。私が先導する。」

彼がダンジョンの奥に向かって、頭にかぶとかぶりながら、歩き出そうとしていた。
これは・・・!アイシュペレサのメッセージを見た直後!?時が戻ったの?

「フ・・・フ・・・ファイ?」

震えながら、彼を見る。
私を冷たい目で見ていた、さっきのファイ様を思い出して少し怖い。

「え?アイスリー、どうした?」

彼は驚いたように振り向いた。
かぶりかけたかぶとを脱いで、私の顔を覗き込む。
その顔はいつもの顔。
レドリシアと抱き合っていた、あの彼とは違う。

私は無我夢中で、彼に抱きついた。
勢いがありすきて、ファイ様も思わずダンジョンの壁に背をあてて尻餅しりもちをつく。

「いっ・・・!
ア、アイスリー、本当にどうしたんだよ。
大丈夫、私が最後までついてるから。」

優しい声、優しい温もり、こんなにも安心する。

ふとレドリシアと彼がキスを交わしていた光景が浮かんで、その記憶を振り払うように自分から彼と唇を重ねた。

もう手も痛くない。最初は驚いていたファイ様も、どんどん力が抜けてされるがままになる。

こんなに深くて長いキスはしたことがないけれど、レドリシアとの余韻よいんが消えればいいと願って、角度を変えながら触れて絡めていく。

私から、離れていかないで・・・嫌いにならないで。

彼の手から離れた甲冑のかぶとが、カラカラと音を立てながら床の上を転がる音がしていた。

結婚式以来のちゃんとしたキス。
こんなに時間がかかったなんて。

余韻よいんしみながらゆっくり離れると、彼は魂が抜けたようにボーっとなっていて、動かなくなってしまった。

やり過ぎた・・・?

でも、いつも素敵にキメてる人が、こんなにほうけた顔を見せるなんて、キュンとする。

彼を失いたくない・・・だからこそ。

「ファイ、あのね。」

「はい・・・。」

折目正しい返事が、なんだか可笑おかしい。
今ならなんでも、言うことを聞いてくれそう。

私は、ファイ様から離れて、火の試練のことを話した。
すでに魔神に会ったことに、彼は驚いていた。

そして、試練の中身の話も全部伝えた。
・・・嫌われるかしら、ファイ様に。

「私がアイスリーを傷つけたのか?試練の中で?」

私から聞いた話に、ファイ様の顔色が変わっていく。
お、怒ってる。すごく怒ってる。

「試練の流れはわかったけど・・・頭にくるな!!
私がレドリシアと抱き合ってキスしたげ句に、アイスリーを突き飛ばして、火炎をぶつけただと!?」

ファイ様のこめかみに、青筋が立っている。
あぁ、そこがメインではないのだけど。

「試練だから、もちろん攻撃もあるわ。でも、私はこの防具のおかげで怪我はしてな・・・。」

「アイスリー!!」

そう言い終わるやいなや、彼はガバ!と、痛いくらいに抱き締めてきた。

「すまない!!本当にすまない・・・。試練の中の私を、切りきざんでやりたいくらいだ。火傷してないか?どこを打った?背中だけか?頭は?血は出てないみたいだが、手当てしないと!!」

「ファイ、ファイ、待って!くるし・・・。わ!手当はいらないってば!!」

「魔神の奴も、よりによって俺の幻を使うなんて、ふざけた真似まねをしやがって!!ぶん殴るだけじゃ、済ませないからな!!」

く、口調まで変わるなんて。
ファイ様、キャラが変わってない?

・・・でも、これがファイ様よね。
さっきの試練のファイ様は、やっぱり偽物。
私のいびつな心が投影された、幻の彼だったんだ。

一人納得している私の目の前で、彼の怒りがヒートアップしていく。
また彼の全身から、緋色のオーラが立ち昇り始めた。

「ダメ!ファイ!!」 

あわてて、また彼の唇にキスをして落ち着かせる。

ファイ様は、すぐにおとなしくなって、オーラもおさまっていった。
よかった・・・危ない危ない。

目線を合わせて、なだめるように声をかける。

「ファイ、落ち着いて。」

「はい・・・。」

すごく素直。こんなにキスに弱い人だった?以前は迫ってくる時、そんな素振り見せなかったのに。

もしかして、さっき私にされたキスが影響してるとか?

なんだか、可愛かわいい。
今なら、なんでも答えてもらえるかも。

「ファイ、よく聞いて。
魔神は殴らなくていいから。
それに、試練のおかげで私はかえって自分と向き合えたの。だから、あなたにもちゃんと聞こうと思うの。」

「?」

「私ね、あなたが迎賓館で、スノウティたちに虐められる私を見たから同情したんじゃないか、皇太子妃修行中に、本当はレドリシアと浮気してたんじゃないか、て疑ってたの。
・・・あと、似てさえいれば他の人でもよかったんじゃないの、て。」

「アイスリー、それは、」

「あなたに嫌われたくなくて、聞けずにいたの。」

ファイ様は少し考えてから、私を見た。
怒るかな、ふざけるな・・・て。

「わかった、アイスリー。悩ませて悪かった。」

彼は頭を下げて謝った。
ファイ・・・。

「言葉にしてくれるまで、わからなかった。
今度から率直に言ってくれたら助かる。
お互いわかろうとするには、どうしても必要だ。」

彼に真摯しんしな目で言われて、私も反省する。
言わなくても通じるなんて、思い込みよね。

「ごめんなさい、あなたの言う通りよ。
今度からそうするね。
今回は、このまま私の疑問に答えてくれる?ファイ。」

ファイ様は姿勢を正すと、説明し始めた。

「まず一つ。迎賓館でのことは、酷い目にわされているといきどおったけど、私は手助けしかしていない。
あの状況で勝利を勝ち取ったのは、アイスリー自身だから、同情ではなく、賞賛しかない。」

「し、賞賛。」

「次に二つ。確かに以前は、似てるというだけで他の女性たちとつきあったよ。でもそれは、君がこの国の人間ではなかったからだ。君がこの国いたら、他の女性と付き合ったりするものか」

私たちの仮婚約が正式決定したのは、最近。

それに私は、幼い頃に出会った彼を、成長と共に忘れ、迎賓館で再会するまでは正直なんとも思っていなかった。

・・・そのくせ好きになると、過去の恋愛にまで嫉妬しっとしてしまうの。勝手よね。

「ありがとう。でも、私の知らないあなたを知っている女性たちがうらやましい、て思ってしまう。」

ける?」

「・・・えぇ。
正直に言うとそうなの。」

それを聞いたファイ様は、なんとなく嬉しそうに目を細める。
私に手を伸ばしかけて、思い直したように引くと、頭をバリバリいた。

可愛かわいいこと言うなよ。危なく滅茶苦茶にするところだった。そういえば・・・。」

彼は、何か思い出したような顔をして、私を見た。

「アイスリーの初恋の彼には、もう未練なかったよな?」

ファイ様は、この話題になると、目が少し吊り上がる。
また、し返すの?スノウティに奪われて終わった恋なのに。

「ありません。
ファイ、あなたもいてる?」

「いや?面白くないし、ここにいたら全力で排除するけど、いてない。今後は私が全部上書きするから、未来永劫みらいえいごう彼のことは思い出さなくていい。」

・・・しっかりいてるじゃない。
ふふ、なんでだろう、ました顔で言ってるのに何故か嬉しい。
お互い様ね。

「レドリシア・・・は?
かつて、彼女には本気だったんじゃない?」

私の質問に、ファイ様は王太后様の中庭の見える廊下で見せたうれいの表情を一瞬見せた。
・・・やっぱりね、なんとなくそれはわかってた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。


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