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後編
一番聞きたいこと
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「三つ目。皇太子妃修行中にレドリシアと浮気はしてないけど、昔は、確かに一度は愛した女性だ。初めて彼女に会った時は、私には彼女が本当のアイスリーに見えていた。」
彼は、遠い目をしてため息をつく。
私との仮婚約が、政治の駆け引きの中で一度消滅した時、彼は荒れたそうだ。
レドリシアは、そんな時に恋人だった女性。
私たちの時代は、庶民の間では氷の民と火の民の恋愛や婚姻は普通だけど、王族同士は祖父母世代に反対する人が多くて、一度消滅すれば再浮上がとても難しい。
ファイ様もそれがわかっていたから、荒れたのかもしれない。
「レドリシアは、最後は他の男と去って私との恋は終わった。」
「追わなかったの?取り返そうとは思わなかった?」
「彼女が去る理由もわかっていたから。
私は何でも許した。周囲に非難されようと、彼女の不正まで揉み消してね。それは、目の前の『アイスリー』を失いたくなかったからだ。そんな愛し方、あのレドリシアが受け入れなくて当然だ」
そういえば、中庭の見えるあの廊下で、レドリシアは『代わり』扱いが悔しかったと言っていた。
・・・だからって、不正していいという理由にする彼女も彼女だけど。
「でも、彼女に未練があるでしょう?フラれたんだもの」
「ない。微塵もない。彼女の不始末の後処理を徹底的にやって、忘れることにした。君の皇太子妃修行中に、私の執務室に詰めていた数十人の官僚たちからも、当時のことを愚痴られたしな。」
「官僚が?執務室で、一人だけで仕事してたんじゃないの?」
「まさか。今終わらせられる仕事は、全部片付けてきた。そのためには、彼らの協力は不可欠だ。つまり、私の宮に来てもレドリシアと二人っきりになどなれない。」
・・・執務室には一人きりだと思ってた。
ちゃんと説明されてなかったし、私も質問しなかったものね。
こういう小さな行き違いが、大きな誤解を生むんだ。気をつけないと。
でもよく考えたら、大国の皇太子の業務は、官僚なしには回らないもの。
「じゃあ、膝枕の話は?」
「あれはホムラが変装して私の代わりをしていた時に、レドリシアの芝居に引っかかってやってもらうことになったそうだ。」
「芝居?」
「宮の入り口で待っていた彼女が急に目の前で貧血を起こして、倒れこんできたんだと。
周りの官僚は慣れてるから、医師を呼ぼうとしたんだけど、ホムラが焦って寝所で介抱したそうだ。」
彼はやれやれと肩をすくめる。
そういえば、レドリシアはホムラの好みの女性だと言ってた。
「そこでレドリシアに誘われるまま、膝枕してもらったらしい。なんなら、その時いた官僚に聞いてもらって構わない。」
「なんだ・・・レドリシアの説明と違うね。」
彼女の話は、執務室で二人きりで過ごして、疲れた彼を膝枕してあげたと言わんばかりの言い方だったのに。
「あれは、君に対する牽制だよ。でも、あの場であまり否定すると、あの時の私が影武者だとばれるから合わせただけだ。」
「ファイのその後の説明も悪かったと思う。
私はずっと誤解したもの。」
「そのようだな。すまない。
これからも、おかしいと思ったら指摘してくれ。説明の機会が欲しい。」
ファイ様は、終始ニコニコしながら説明している。後ろ暗いことがないから、堂々とできるんだろうな。
「わかった。これが最後の質問ね。」
残る疑問はあと一つ。
「あなたは、私をとても愛してくれる。
幼い時の初恋相手とはいえ、今の私と一緒に過ごして短いのに、どうしてそこまで想ってくれるの?」
さっきまでスラスラ答えていた彼が、ここにきて少し言い淀んだ。
あ、言いにくいことだったかな。
彼の顔から笑みが消えて、真剣な顔になる。
「・・・気がついたら恋に落ちていた。
君は、私の心を捕らえて離さない。
あの日から変わらず。」
「あ、あの・・・よくわからないわ。
あの幼い日、私は、お兄様達に喧嘩で負けていたあなたを助けた。それだけでしょう?」
「アイスリーは、私を変えてくれた。
それまでの私は、弱い上にこの瞳の力をうまく制御できず、そのことを自分で責める暗い子供だったんだ。」
そう言って彼は私の手を取ると、自分の手を重ねて指を絡めた。
「思い出せない?生垣の影に隠れて動けない私を責めずに、太陽の光さす場所まで一緒に歩いてくれたこと。」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
彼は、遠い目をしてため息をつく。
私との仮婚約が、政治の駆け引きの中で一度消滅した時、彼は荒れたそうだ。
レドリシアは、そんな時に恋人だった女性。
私たちの時代は、庶民の間では氷の民と火の民の恋愛や婚姻は普通だけど、王族同士は祖父母世代に反対する人が多くて、一度消滅すれば再浮上がとても難しい。
ファイ様もそれがわかっていたから、荒れたのかもしれない。
「レドリシアは、最後は他の男と去って私との恋は終わった。」
「追わなかったの?取り返そうとは思わなかった?」
「彼女が去る理由もわかっていたから。
私は何でも許した。周囲に非難されようと、彼女の不正まで揉み消してね。それは、目の前の『アイスリー』を失いたくなかったからだ。そんな愛し方、あのレドリシアが受け入れなくて当然だ」
そういえば、中庭の見えるあの廊下で、レドリシアは『代わり』扱いが悔しかったと言っていた。
・・・だからって、不正していいという理由にする彼女も彼女だけど。
「でも、彼女に未練があるでしょう?フラれたんだもの」
「ない。微塵もない。彼女の不始末の後処理を徹底的にやって、忘れることにした。君の皇太子妃修行中に、私の執務室に詰めていた数十人の官僚たちからも、当時のことを愚痴られたしな。」
「官僚が?執務室で、一人だけで仕事してたんじゃないの?」
「まさか。今終わらせられる仕事は、全部片付けてきた。そのためには、彼らの協力は不可欠だ。つまり、私の宮に来てもレドリシアと二人っきりになどなれない。」
・・・執務室には一人きりだと思ってた。
ちゃんと説明されてなかったし、私も質問しなかったものね。
こういう小さな行き違いが、大きな誤解を生むんだ。気をつけないと。
でもよく考えたら、大国の皇太子の業務は、官僚なしには回らないもの。
「じゃあ、膝枕の話は?」
「あれはホムラが変装して私の代わりをしていた時に、レドリシアの芝居に引っかかってやってもらうことになったそうだ。」
「芝居?」
「宮の入り口で待っていた彼女が急に目の前で貧血を起こして、倒れこんできたんだと。
周りの官僚は慣れてるから、医師を呼ぼうとしたんだけど、ホムラが焦って寝所で介抱したそうだ。」
彼はやれやれと肩をすくめる。
そういえば、レドリシアはホムラの好みの女性だと言ってた。
「そこでレドリシアに誘われるまま、膝枕してもらったらしい。なんなら、その時いた官僚に聞いてもらって構わない。」
「なんだ・・・レドリシアの説明と違うね。」
彼女の話は、執務室で二人きりで過ごして、疲れた彼を膝枕してあげたと言わんばかりの言い方だったのに。
「あれは、君に対する牽制だよ。でも、あの場であまり否定すると、あの時の私が影武者だとばれるから合わせただけだ。」
「ファイのその後の説明も悪かったと思う。
私はずっと誤解したもの。」
「そのようだな。すまない。
これからも、おかしいと思ったら指摘してくれ。説明の機会が欲しい。」
ファイ様は、終始ニコニコしながら説明している。後ろ暗いことがないから、堂々とできるんだろうな。
「わかった。これが最後の質問ね。」
残る疑問はあと一つ。
「あなたは、私をとても愛してくれる。
幼い時の初恋相手とはいえ、今の私と一緒に過ごして短いのに、どうしてそこまで想ってくれるの?」
さっきまでスラスラ答えていた彼が、ここにきて少し言い淀んだ。
あ、言いにくいことだったかな。
彼の顔から笑みが消えて、真剣な顔になる。
「・・・気がついたら恋に落ちていた。
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あの日から変わらず。」
「あ、あの・・・よくわからないわ。
あの幼い日、私は、お兄様達に喧嘩で負けていたあなたを助けた。それだけでしょう?」
「アイスリーは、私を変えてくれた。
それまでの私は、弱い上にこの瞳の力をうまく制御できず、そのことを自分で責める暗い子供だったんだ。」
そう言って彼は私の手を取ると、自分の手を重ねて指を絡めた。
「思い出せない?生垣の影に隠れて動けない私を責めずに、太陽の光さす場所まで一緒に歩いてくれたこと。」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
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