心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

文字の大きさ
64 / 64
後編

手を繋いで、これからもずっと

しおりを挟む
「騒がしい裁きだったな。ファイバーン、女性のトラブルはこれで最後だからな。」

王様が苦い顔をして、ファイ様を見た。
それは、私もそう願ってる。

「まったくです。我が息子ながら、あきれていますけれど。」

そう言った王妃様が、意味深に王様を流し目で見て、

「昔の誰かさんを、思い出しますわ・・・。」

と、つぶやいたの。王様が慌てて立ち上がり、審議の終了を宣言して、その場は解散になった。

それから時が流れて、最初の混乱が嘘みたいに穏やかな日々が続いている。

ヴィノガン様に協力した人たちは、皆処罰されて、特に王太后様の主治医は、厳罰に処された。

次の主治医は、なんとファイリアお義姉様ねえさま
元々博識な上に、医学を学んでいらして、普段は身分を隠して施療院なんかで働いてたんだって。

そういえば、王太后様が毒物を与えられているかもと、最初に気づいたのは彼女だった。

プロメテクスお義兄様にいさまは、ヴィノガン様が抜けた後の軍事部門を統括することに。

アポロニお義兄様にいさまは、司法長官の座についた。
レドリシアのお父様である、バドリック・モエン公爵は、娘であるレドリシアにちゃんと裁きを受けさせたら辞めるつもりだったそう。

バーニスお義姉様ねえさまは、来年のアイシスとの婚約と結婚に向けて、私にブリザードゥ国のしきたりとか、行儀作法とか、色々学びによく氷の宮に来てくれる。

レドリシア?彼女はエアーロー皇太子に保釈させて、皇太子妃になろうとしたら、風の国の王妃様から絶対ダメだと反対されたんだそう。

もう魔力もないのに、勝手に風の試練を受けようとしたり、エアーロー皇太子のお見合い相手を撃退したりと、毎日騒動を起こしてるとか。

何とかしてくれと、ファイ様に手紙が次々と送られてくる。

そして、私にも。

ミユキが、私宛の手紙を執務室まで持ってきてくれた。

「ありがとう、ミユキ。ええっと、あ、また、この人から来てる。」

「アイスリー様、エアーロー皇太子と、サラマンダムでしょ?二人とも懲りもせずに、口説いてきますものね。」

そこへファイ様もやってきて、片眉を上げると手紙を取り上げて魔法でさっと燃やした。

「あ!もう、読んでないのに。」

私が頬を膨らませると、ファイ様は涼しい顔をかたむけて笑う。

「毎回同じ内容の手紙だろ?『愛しいアイスローズ皇太子妃殿下、あなたを想うと眠れません。どうか、苦しいこの胸の内を察して、私のところへ来てください。』だったかな。」

「すごいファイ!暗記してる。」

「人妻を堂々と・・・!アイスリーもライバルばかり増やしてくれるな。」

腕を組んで機嫌の悪いファイ様の様子を見て、椅子から立ち上がると、彼の手を握った。

「ライバルなんて。誰もあなたには及ばないよ?」

「当然。全部蹴散らすからな。」

顔を見合わせて、ぷっと吹き出す。

「でも、ファイもすごいね。私に変装したミユキと間違えなかったもの。」

「まぁ、な。」

そう、私の影武者をミユキが務めることになったの。顔立ちは全然違うけど、そこはメイクで補ってる。

特に公務がない今日みたいな日から、少しずつ場数を踏んで、最後は公式な場でもその役を演じられるようにするんだとか。

「失礼致します。」

そこへ、ファイ様に変装したホムラも入ってきた。うわー、なんだか圧巻。

鏡を見てるみたい。

横に並んだホムラとミユキを見て、私が感心していると、ファイ様が二人に向かって笑顔で拍手をした。

「完璧だな。本物の恋人同士だから、二人の間に漂う雰囲気まで問題なしだ。じゃ、私たちも着替えて行ってくる。」

ホムラとミユキの顔が、さっと赤くなるのを見ながら、私たちも準備をした。

ファイ様が皇太子の衣装を取ると、下から庶民の服装が出てくる。

私もドレスを脱ぐと、町娘の服装に早変わり。

あとはファイ様が、丁寧にメイクしてくれる。
早く私も覚えないと。

「アイスリー様、お気をつけて。」

ミユキが心配そうに言うので、私は笑顔で手を振った。

「大丈夫よ。あ、ご心配ありがとうございます、アイスリー様。ふふっ。」

私はファイ様と手を繋いで、隠し扉から氷の宮を抜けると、王宮の裏にある秘密の通路を抜けて外に出た。

「わぁー。」

城下町に降りて、そこで生き生きと生活する人々が目の前にいる。

「忘れるなよ、アイスリー。今、君は町娘の『ミユキ』だ。」

ファイ様が私を見て言うので、私も頷いた。

「わかってるわ、『ホムラ』。それにしても暑いね。ファイアストム国は火の国だけど、暑すぎない?」

「昨今気温が急上昇して、確かに悩みの種だな。熱を上げる魔物でも、棲みついたかもしれない。そこは・・・まあ、アイスリー、じゃないミユキがいれば、解決だろ。」

ファイ様が少しおどけて言うので、私は袖を捲った。

「えぇ、任せて。まずは城下の皆さんにご挨拶代わりに。」

私は目を閉じて、氷の魔法で城下町一帯の気温をグッと下げた。

周りから歓声が上がって、今日は過ごしやすいとか、助かるーとか、賛美の声が聞こえてくる。

「お見事。誰がやったかも、気づかれていない。」

ファイ様が誇らしそうに見つめてくる。
私は嬉しくなって、ファイ様の腕に自分の腕を絡めた。

「ねぇ、その魔物はどこ?すぐに行きましょう!みんなを困らせてるなら、急がないと。」

「その勢いは素晴らしいけど、一つ一つステップを踏もう。まずは庶民としての振る舞いを覚えるのが先。長くいれば怪しまれるから、すぐに帰るよ。魔物はまた今度。」

「えー。」

「周りに溶け込む術を身につけて、それからよく人々の生活を見てくれ。彼らの話の中にこれからどうしていくべきかのヒントがある。」

ファイ様はそう言うと、楽しそうに人々の様子を見始めた。
王宮の人たちとはまた違う人々。

新鮮で物珍しくて、わくわくしちゃう。

「楽しいことばかりではないことは、王宮の中と変わらない。でも、この人たちがいないと国は成り立たない。もう少し慣れたら国の端々まで案内するよ。私が見てきたものを見せたい。」

ファイ様がそう言いながら歩き出すので、私たちは腕を解いて手を繋いだ。
この方が自然。

私は人々の生活を見て回りながら、少しずつ色んなことを覚えていく。

本当は一目見ただけで、全てを把握して、すぐに改善につながる提案ができることが理想だけど、とても無理。

それくらい一人一人違う。

それでも、ファイ様がいるから。この人と手を繋いで、一歩また一歩踏みしめながら歩いていくしかない。

「そうだ、幸運のキャンディは食べてきた?」

不意に彼が聞くので、私は笑顔でうなずくとこう言った。

「えぇ、いいことが、たくさん起きるわ。」

いつものおまじないは、欠かさない。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
この物語はこれで完結です。

皆様にも、いいことがたくさん起きますように!!

お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。


※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。

次回作は、『人身御供の乙女は、放り込まれた鬼の世界で、超絶美形の鬼の長に溺愛されて人生が変わりました』です。現在公開中です。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...