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後編
マウントなんてさせないもの
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私は、レドリシアを真っ直ぐ見つめ返して反論する。
「言いががりです。」
「いいえ!アイスリー様、私はあなたと違って、美貌、権力、財産、名誉、愛する人。全て持ってた。何一つ欠けてはいけないの。その完璧な人生にあなたが傷をつけた。絶対許さない。」
レドリシアの目は血走ってる。
何言っても聞かないんだろうけど、溜め込むのも違う気がする。
「レドリシア、自分で蒔いた種でしょ?」
「あなたのせいなの!
ぜーんぶあなたの!!」
どこまでいっても、平行線。
きっと何を言っても、心に届くとは思えない。
「レドリシア。あなたはファイ様を捨てて、エアーロー皇太子と出ていった。風の国で横領の罪を問われそうになって帰国し、私を追い落として皇太子妃になることで、全て思い通りにしようとしたのよね?」
私が言うと、レドリシアは眉間に皺を寄せて涙を拭った。
「何がいけないの?」
彼女はそう言いながら、私に向かって歩いてくる。
「好きに生きて何が悪いの?
みんな私の美貌の前に傅いて、言うことを聞いてくれた。殿下は一番簡単。アイスリー様の容姿を真似るだけでよかったから。」
彼女は私の前に来ると、顔を覗き込む。
その目にはまだ矜持が残っていた。
「あなたも彼を愛してたんでしょう?」
私が言うと、彼女はふふふと笑った。
「彼をというより、その立場を愛したわ。
殿下は、私にあなたの面影を投影していただけだから。私も彼を愛し返す気はないし、巨万の富を好き勝手にしても誰も文句は言えない立場は、何者にも代え難い、快感でしたわ。」
「な、な、なら、どうして彼を捨てたの?」
「飽きてしまって。エアーロー皇太子が留学していらしたので、彼に乗り換えたのよ。殿下も特に取り返そうとはしなかった。『アイスリー人形』として扱った罪悪感があるから。」
私はチラッとファイ様を見た。
彼は認めるような表情をしている。
そういえば彼女、昔は散々法に触れることをしていたみたいなのに、今裁かれているのも、今回起こったことに対してだけだし。
過去に関しては後処理はしたとファイ様言ってた。
それが、彼女を私の代わり扱いしたことに対する、ファイ様なりの償いだったのね。
でも、彼女にしてみたら昔のことは許してくれたから、ファイ様といた方が『楽』で、『得』だと知ったんだ。
「彼に愛されて、お幸せでしょう?アイスリー様。居心地の良さはわかってますの。何をどうしようと、好き勝手にしても・・・。」
「やめて!!ファイの愛を都合のいいもののように言わないで!!」
レドリシアの言い方にカッときて睨みつけたけど、彼女はまるで勝者のような態度を崩さない。
・・・スノウティが、よくこういう態度をとってた。私が怒れば怒るほど、私を振り回す余裕のある彼女を、周囲は勝者と認めた。
周囲?
こういう人は、周りの評価や空気に敏感だ。
沈黙した私に替わって、ファイ様が口を開こうとしたので、レドリシアはさっと喋りだした。
「ふふふ。アイスリー様より先に、私は恋人として、何でも殿下としてきましたわ。お可哀想に、あなたは私が味見した後を哀れに味わうだけ。あはははははは!!」
むか!・・・と、くるけど、実はそこまで気にならない。
私は彼と手を繋いで、レドリシアを見る。
昔の恋人・・・か。
「そうなの。でも、気にならないわ。昔のことだもの」
私は、はっきり言った。
レドリシアは、フンと鼻を鳴らして私を見下そうとする。
「痩せ我慢して。本当は悔しくてたまらないくせに!!」
・・・そりゃ、少しも悔しくないわけではないけど。彼の手の温もりを感じていたら、どうでもよくなっちゃった。
「レドリシア、あなたはもう終わった人。私は、これから彼と色んな体験をしていくの。あなたの後だろうと、上書きしていけば、最後に残るのは私だけになるわ。」
「上書きぃ?」
「えぇ。これから毎日、一生かけて上書きよ。」
そう言って、ファイ様の肩に頭を乗せるように傾けると、周りから冷やかしの声があがった。
ファイ様も、私の頭の上に自分の頭をのせて、
「もう、上書き済みだけどな。
この先一生、更新はアイスリーしか受け付けない。」
「えぇ。私もあなただけでいい・・・。」
「ん・・・その言葉に、絶対後悔はさせないから。」
と、言ってスリスリと擦り付けるように頭を動かし、私の頭に軽くキスをする。
すると、冷やかしの声に加えて、拍手までする人たちが出てきた。
レドリシアは、顔を真っ赤にして睨みつけてくる。ファイ様を取り返したいというより、私にマウントが取れないことに一番苛立っているみたい。
相手を振り回す、てこういうことなのね。
「くそぉ・・・!離れろぉぉぉ!!」
レドリシアが低く唸るような声を出す。
次の瞬間、彼女の頭に大きな角が生えてきた。
これは!!まさか、魅入られし者が、魔神を守る魔物に変化するという、その時が来たの!?
ヴィノガン様でさえ、高齢になった今でも変わってなかったのに、彼女は早すぎない?
私は素早く彼女を凍結した。彼女は頭に角、口には鋭い牙が生えかけて止まっている。
「大神官!」
ファイ様が声をかけた。
大神官が、慌ててレドリシアの前にやってくる。
王様も驚いて質問した。
「大神官・・・彼女はこのままでも、魔力剥奪できるか?何故こんなに変身が早いんだ?」
大神官は、レドリシアを見てため息をつく。
「おそらく、彼女の魔力は弱いのです。
ヴィノガン様も魅入られし者ですが、あの方は氷の火炎を撃てるほどの魔力を持っていましたから。」
彼はそういうと、祝詞をあげた。
レドリシアの額から、ヴィノガン様と同じ魔力の結晶が出てきて、床に落ちて割れる。
すると、頭に生えた角がなくなって、牙も消えていった。
・・・はぁ、よかった。
ここで被害が出たら大変だもの。
私は凍結の魔法をさっと解いた。
レドリシアは、何が起こったのか理解できずに辺りを見回している。
「あら?私、一体何が・・・。」
王様は、頬を両手で押さえて戸惑っている彼女を一瞥して、
「では、魔力剥奪もすんだところで、エアーロー皇太子、どうぞレドリシアをお連れください。」
と、言った。突然話を振られたエアーロー皇太子は、最初に出会った時の勢いをなくして、オロオロしながら、レドリシアと私を見る。
レドリシアは、周りの視線を敏感に感じ取って、エアーロー皇太子に擦り寄っていった。
「エアーロー皇太子殿下。行きましょう。
あなたの国で、私が皇太子妃になってあげますわ。二人でこの国を見返してやるのです。」
エアーロー皇太子は、ギョッとしたように彼女を見る。
「あ、あの、レドリシア。
私と結婚するなら、『風の試練』を受けねばならぬ。」
「えぇ、ふふ、私が魔神の心臓を取り出すので、禁断の魔法が撃てますわ。」
「だが、肝心の魔力を君はなくしたぞ?」
「風の魔力がなくても、あなたの力を封印した指輪があれば・・・て、え?」
レドリシアはエアーロー皇太子を、穴が開くほど見つめた。
エアーロー皇太子は、ジリジリと後ろに下がる。
「そ、それに、君は火の試練すら負けていたんだな・・・。ま、魔物に変わりかけた君を見たよ・・・。こ、怖かった。」
レドリシアは、すぐに距離を詰めて、エアーロー皇太子の手を掴む。
「ひぃ!レドリシア!」
「あなたの一番は私だと、皆の前でお認めになりましたわよね?舌の根も乾かぬうちに、取り消すなんてことはさせませんわ・・・。」
エアーロー皇太子は、今にも泣きそうな顔で怯えている。
彼の侍従たちも、どうしたものかと悩んでいるみたい。
レドリシアは、私をチラリと見て、
「みてらっしゃい。例え魔力がなかろうと、平民から皇太子妃に昇り詰めた私のサクセスストーリーに、皆涙するの。あなたの人気も今だけですわよ?」
と、言ったの。サクセスストーリー?脅すように結婚を迫ったあなたの?
「レ、レドリシア、まずは君が風の国で起こした様々な罪を償う方が先だぞ?
わ、私は待ってるから、懲役を済ませてから・・・。」
「あーら、モタモタしている間に、他の女を皇太子妃にして、よくて側室止まりにする気なんでしょう?あなたのことなら、なんでもわかるのよ。」
「し、しかし、君はさっきファイバーン皇太子殿下の側室でもいいと、言って・・・。」
「他の女を本命にする男なんて、もう沢山。でも、あなたは、私よね?そうよね?」
「い、いや、私もアイスローズ皇太子妃殿下の方が素敵だと思・・・。」
「きぃぃぃぃ!!」
エアーロー皇太子の首を締め上げ出したレドリシアは、周りの侍従たちに取り押さえられて、風の魔法で拘束されると、一緒に退室していった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
「言いががりです。」
「いいえ!アイスリー様、私はあなたと違って、美貌、権力、財産、名誉、愛する人。全て持ってた。何一つ欠けてはいけないの。その完璧な人生にあなたが傷をつけた。絶対許さない。」
レドリシアの目は血走ってる。
何言っても聞かないんだろうけど、溜め込むのも違う気がする。
「レドリシア、自分で蒔いた種でしょ?」
「あなたのせいなの!
ぜーんぶあなたの!!」
どこまでいっても、平行線。
きっと何を言っても、心に届くとは思えない。
「レドリシア。あなたはファイ様を捨てて、エアーロー皇太子と出ていった。風の国で横領の罪を問われそうになって帰国し、私を追い落として皇太子妃になることで、全て思い通りにしようとしたのよね?」
私が言うと、レドリシアは眉間に皺を寄せて涙を拭った。
「何がいけないの?」
彼女はそう言いながら、私に向かって歩いてくる。
「好きに生きて何が悪いの?
みんな私の美貌の前に傅いて、言うことを聞いてくれた。殿下は一番簡単。アイスリー様の容姿を真似るだけでよかったから。」
彼女は私の前に来ると、顔を覗き込む。
その目にはまだ矜持が残っていた。
「あなたも彼を愛してたんでしょう?」
私が言うと、彼女はふふふと笑った。
「彼をというより、その立場を愛したわ。
殿下は、私にあなたの面影を投影していただけだから。私も彼を愛し返す気はないし、巨万の富を好き勝手にしても誰も文句は言えない立場は、何者にも代え難い、快感でしたわ。」
「な、な、なら、どうして彼を捨てたの?」
「飽きてしまって。エアーロー皇太子が留学していらしたので、彼に乗り換えたのよ。殿下も特に取り返そうとはしなかった。『アイスリー人形』として扱った罪悪感があるから。」
私はチラッとファイ様を見た。
彼は認めるような表情をしている。
そういえば彼女、昔は散々法に触れることをしていたみたいなのに、今裁かれているのも、今回起こったことに対してだけだし。
過去に関しては後処理はしたとファイ様言ってた。
それが、彼女を私の代わり扱いしたことに対する、ファイ様なりの償いだったのね。
でも、彼女にしてみたら昔のことは許してくれたから、ファイ様といた方が『楽』で、『得』だと知ったんだ。
「彼に愛されて、お幸せでしょう?アイスリー様。居心地の良さはわかってますの。何をどうしようと、好き勝手にしても・・・。」
「やめて!!ファイの愛を都合のいいもののように言わないで!!」
レドリシアの言い方にカッときて睨みつけたけど、彼女はまるで勝者のような態度を崩さない。
・・・スノウティが、よくこういう態度をとってた。私が怒れば怒るほど、私を振り回す余裕のある彼女を、周囲は勝者と認めた。
周囲?
こういう人は、周りの評価や空気に敏感だ。
沈黙した私に替わって、ファイ様が口を開こうとしたので、レドリシアはさっと喋りだした。
「ふふふ。アイスリー様より先に、私は恋人として、何でも殿下としてきましたわ。お可哀想に、あなたは私が味見した後を哀れに味わうだけ。あはははははは!!」
むか!・・・と、くるけど、実はそこまで気にならない。
私は彼と手を繋いで、レドリシアを見る。
昔の恋人・・・か。
「そうなの。でも、気にならないわ。昔のことだもの」
私は、はっきり言った。
レドリシアは、フンと鼻を鳴らして私を見下そうとする。
「痩せ我慢して。本当は悔しくてたまらないくせに!!」
・・・そりゃ、少しも悔しくないわけではないけど。彼の手の温もりを感じていたら、どうでもよくなっちゃった。
「レドリシア、あなたはもう終わった人。私は、これから彼と色んな体験をしていくの。あなたの後だろうと、上書きしていけば、最後に残るのは私だけになるわ。」
「上書きぃ?」
「えぇ。これから毎日、一生かけて上書きよ。」
そう言って、ファイ様の肩に頭を乗せるように傾けると、周りから冷やかしの声があがった。
ファイ様も、私の頭の上に自分の頭をのせて、
「もう、上書き済みだけどな。
この先一生、更新はアイスリーしか受け付けない。」
「えぇ。私もあなただけでいい・・・。」
「ん・・・その言葉に、絶対後悔はさせないから。」
と、言ってスリスリと擦り付けるように頭を動かし、私の頭に軽くキスをする。
すると、冷やかしの声に加えて、拍手までする人たちが出てきた。
レドリシアは、顔を真っ赤にして睨みつけてくる。ファイ様を取り返したいというより、私にマウントが取れないことに一番苛立っているみたい。
相手を振り回す、てこういうことなのね。
「くそぉ・・・!離れろぉぉぉ!!」
レドリシアが低く唸るような声を出す。
次の瞬間、彼女の頭に大きな角が生えてきた。
これは!!まさか、魅入られし者が、魔神を守る魔物に変化するという、その時が来たの!?
ヴィノガン様でさえ、高齢になった今でも変わってなかったのに、彼女は早すぎない?
私は素早く彼女を凍結した。彼女は頭に角、口には鋭い牙が生えかけて止まっている。
「大神官!」
ファイ様が声をかけた。
大神官が、慌ててレドリシアの前にやってくる。
王様も驚いて質問した。
「大神官・・・彼女はこのままでも、魔力剥奪できるか?何故こんなに変身が早いんだ?」
大神官は、レドリシアを見てため息をつく。
「おそらく、彼女の魔力は弱いのです。
ヴィノガン様も魅入られし者ですが、あの方は氷の火炎を撃てるほどの魔力を持っていましたから。」
彼はそういうと、祝詞をあげた。
レドリシアの額から、ヴィノガン様と同じ魔力の結晶が出てきて、床に落ちて割れる。
すると、頭に生えた角がなくなって、牙も消えていった。
・・・はぁ、よかった。
ここで被害が出たら大変だもの。
私は凍結の魔法をさっと解いた。
レドリシアは、何が起こったのか理解できずに辺りを見回している。
「あら?私、一体何が・・・。」
王様は、頬を両手で押さえて戸惑っている彼女を一瞥して、
「では、魔力剥奪もすんだところで、エアーロー皇太子、どうぞレドリシアをお連れください。」
と、言った。突然話を振られたエアーロー皇太子は、最初に出会った時の勢いをなくして、オロオロしながら、レドリシアと私を見る。
レドリシアは、周りの視線を敏感に感じ取って、エアーロー皇太子に擦り寄っていった。
「エアーロー皇太子殿下。行きましょう。
あなたの国で、私が皇太子妃になってあげますわ。二人でこの国を見返してやるのです。」
エアーロー皇太子は、ギョッとしたように彼女を見る。
「あ、あの、レドリシア。
私と結婚するなら、『風の試練』を受けねばならぬ。」
「えぇ、ふふ、私が魔神の心臓を取り出すので、禁断の魔法が撃てますわ。」
「だが、肝心の魔力を君はなくしたぞ?」
「風の魔力がなくても、あなたの力を封印した指輪があれば・・・て、え?」
レドリシアはエアーロー皇太子を、穴が開くほど見つめた。
エアーロー皇太子は、ジリジリと後ろに下がる。
「そ、それに、君は火の試練すら負けていたんだな・・・。ま、魔物に変わりかけた君を見たよ・・・。こ、怖かった。」
レドリシアは、すぐに距離を詰めて、エアーロー皇太子の手を掴む。
「ひぃ!レドリシア!」
「あなたの一番は私だと、皆の前でお認めになりましたわよね?舌の根も乾かぬうちに、取り消すなんてことはさせませんわ・・・。」
エアーロー皇太子は、今にも泣きそうな顔で怯えている。
彼の侍従たちも、どうしたものかと悩んでいるみたい。
レドリシアは、私をチラリと見て、
「みてらっしゃい。例え魔力がなかろうと、平民から皇太子妃に昇り詰めた私のサクセスストーリーに、皆涙するの。あなたの人気も今だけですわよ?」
と、言ったの。サクセスストーリー?脅すように結婚を迫ったあなたの?
「レ、レドリシア、まずは君が風の国で起こした様々な罪を償う方が先だぞ?
わ、私は待ってるから、懲役を済ませてから・・・。」
「あーら、モタモタしている間に、他の女を皇太子妃にして、よくて側室止まりにする気なんでしょう?あなたのことなら、なんでもわかるのよ。」
「し、しかし、君はさっきファイバーン皇太子殿下の側室でもいいと、言って・・・。」
「他の女を本命にする男なんて、もう沢山。でも、あなたは、私よね?そうよね?」
「い、いや、私もアイスローズ皇太子妃殿下の方が素敵だと思・・・。」
「きぃぃぃぃ!!」
エアーロー皇太子の首を締め上げ出したレドリシアは、周りの侍従たちに取り押さえられて、風の魔法で拘束されると、一緒に退室していった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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