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番外編
誰がために筆は舞う 二人旅編 2
しおりを挟む大天君と真海に飛び込んだにゃ。
鶴毘を早く戻さないと、紅葉が可哀想にゃ!
毎日隠れて泣いてるの知ってるにゃんよ。
にしても、大天君さえ龍族の女王にひどいことをしていなければ、こんなことまでしなくてすんだにゃ!
まったく困ったやつにゃんね!
神龍とは会ったことあるにゃんよ。
まだ、天尊から分離する前だけど。
とても荘厳で、聡明にゃんだけど、ものすごく神経質にゃ。
なるべく音を立てずに潜ったにゃんけど、こう静かだと多分音は聞こえてるにゃん。
う?
なんか下からくるにゃ。
ぎゃー、神龍!
なんか怒ってるにゃ!
にゃに?
侵入者から守るために、宝玉を飲み込んだが、お腹が痛くなったから取ってくれ?
お前にゃー、何してるにゃんよ。
大天君に言葉を伝えると、腹に入って取りますと答えたにゃ。
神龍が口を開けたので入るにゃん。
怖いー。
うー、紅葉、ボクはちゃんと生きて帰るにゃん。
どんどん奥に入っていくと、広いところに出たにゃ。
宝玉、宝玉・・・はここにゃんか?
お?
おや。
この広いところからさらに下があるにゃん。
そこの通り道にちょうど丸いものが挟まってるにゃんね。
あー、痛そう。
にしてもでっかいにゃんね!
どうやって持ち出すにゃ?
大天君が物を小さくする術をかける言うにゃ。
いや、それはいいけど、ここでそれしたら・・・。
あー!
小さくなって下に落ちたにゃ!
こりゃ!
ややこしくなったにゃ!
仕方なくさらに下までいくにゃ。
小さいから、さらに転がっていくにゃんよ。
待ってー!
大分下まできたにゃんよ。
やっと前足で掴まえたにゃ。
やっぱりこういうのを掴まえるのは、猫の得意技にゃ。
う?
大天君、なんかドロドロしたものが出て来たにゃんよ?
ぎゃー!
これ、物が溶けるやつにゃん!
神龍!
なんとかしにゃいか!
にゃに?
腹痛が治ったから、そのまま栄養になれにゃと?
ふざけんにゃ!
恩人に、にゃんたることを!
「羅迦の狙いはこれか!」
大天君が真っ青になって慌てているにゃ。
冗談じゃないにゃ!
お前は当事者だからいいだろうけど、こっちは違うにゃ!
お前の女グセの悪さの、犠牲になるにゃんて!
ボクはちゃんと紅葉に一途にゃ!
大天君は宝玉の中に潜んで、更に下に行こうと言うのにゃ。
宝玉は決して神龍に溶かせないから、大丈夫にゃ、と。
うう、宝玉の中に入るにゃんね?
こうなりゃヤケにゃ!
入ったるにゃ!
ボクの神通力で二人で宝玉に潜むにゃ。
やる時はやるにゃんよ。
ひぃー、それにしても気持ち悪いにゃ。
あっという間にドロドロの沼の海に沈んで、下に流れていくにゃんよ。
うー、紅葉、帰ったら鯛でも食いたいにゃー。
頑張るにゃよー。
しばらくして、神龍のお尻から出て来たにゃ。
詳細は省くにゃ。
神龍は、ボクらが出て来たことに驚いてたにゃ!
こりゃ!
迷惑料として、宝玉はもらってくからにゃ!
文句言うにゃよ!
文句言ったら、普段何食べてるか、バラすにゃん!
やっとこさ、真海から出て、羅迦のところへ戻ったにゃんよ。
あ、宝玉は舐めてもいいくらい、綺麗に洗ってるにゃん。
そこはちゃんとしてるにゃんよ。
羅迦は、ボクたちが宝玉を持ち帰ったことに驚いていたけれど、宝玉と引き換えにちゃんと牙をくれたにゃん。
もちろん大天君ではなく、このボクに。
羅迦は少し悲しそうな顔してて、大天君が謝ってたにゃ。
当たり前にゃ!
乙女心を弄んだのにゃ。
「ま、お前の血も手に入ったし、これで私の子供にお前の強さを受け継がせる滋養の粥ができた。」
羅迦が嬉しそうに言って、大天君が真っ青になってたにゃ。
「ら、羅迦?
まさか、腹の子・・・。」
「お前の子だ・・・と、言いたいところだが、これは今の夫との子だ。
私の体は弱くてな、強い滋養の粥を飲んで体力をつけねばならんのだ。
本当は全部お前を食べたいが、そうもいくまい。
さあ、早く行け。
気が変わらぬうちに。」
羅迦が手で退室を促したにゃ。
大天君が背を向けて歩き出すと、羅迦がボソリと言ったにゃ。
「悔しいが・・・。
私はお前がまだ好きじゃ。
あんな酷い仕打ちを受けたのに、お前が私を笑わせてくれたり、優しくしてくれたのを忘れることができぬ。
今回も・・・、お前の顔を見て、牙をすぐに渡しそうになった。
罪な男じゃ・・・。」
本当にこいつは罪な男にゃ。
でも、なんだか憎めないやつにゃんよね。
羅迦、ごめんにゃ。
なんか、なんか、可哀想にゃ。
ね?
大天君。
ありゃ?
いない。
あ!
龍族の若いおねーさんに声をかけてるにゃ!
こりゃ!
あ!
おねーさんも顔が真っ赤でまんざらでもにゃい?
このっ!
カブっとしてやるにゃ!
お前のおかげで食われかけたにゃ!
お前にゃんか、羅迦に全部食われたらいいにゃんよ!
さあ!帰るにゃ。
ようやく帰り着いて、牙を美蛇に渡したにゃ。
他の材料は揃えたから、これでようやく薬ができると、美蛇は言ったにゃんよ!
早く、早く!
・・・え!?
鶴毘が暴れてる?
紅葉が危ないにゃ!
薬持ってすぐいくにゃっ。
鶴毘たちがいる如鶴洞に着いたにゃ。
鶴毘から混沌の気配がするにゃ!
魂魄に混沌の牙が残ってると大天君は言うにゃよ。
あー、鶴毘と大天君戦いだしたにゃ。
紅葉は?
あ、いた!
大丈夫?
紅葉はボクを抱っこして、戦いを見つめてるにゃ。
あ!
鶴毘の手ぬぐいが破れてる!
そんにゃ・・・。
ずっと大事にしてたのに。
紅葉?
あ、手ぬぐいは胸のところが裂けてるにゃんね。
あれ?
胸になんか刺さってるにゃ、これまさか!
紅葉も気づいたけど、絵の中の牙は取れないにゃ。
そこで紅葉は、鶴毘の隣に新たに自分の姿絵をあの筆で描き加えたにゃ!
絵の中の紅葉はさっと動いて、牙を抜き取ったにゃ!
きゃー愛の力にゃ!
大天君と戦っているこちらの鶴毘もガックリと、気を失ったにゃ。
すかさず大天君、薬を飲ませようとするけど、鶴毘が飲めずに口から出てしまうにゃ。
あれ?
紅葉?
あ、口移しでのませるにゃんね。
ひゃー、ボクは見てないにゃんよ。
飲んだ?
よかった。
ほっ。
鶴毘翌日目を覚ましたにゃ。
元に戻ったにゃんよー。
みんな喜んだにゃん。
鶴毘ずっと平謝りにゃ。
大天君が気にするな、て、おい!
お前はことをややこしくした張本人にゃ!
反省しにゃさい!
鶴毘、あれからますます紅葉にべったりしてる。
いっぱい悲しませたから償いだって。
紅葉は、また新しい手ぬぐいに鶴毘描いたにゃんよ。
前の手ぬぐいは、ついに捨てたにゃ。
うん、いいにゃ、これで。
一件落着にゃ!
あ、紅葉、鯛を食べたいにゃ!
鯛を出してにゃー。
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