(R18) Lisztomania ~ アル中の女軍人が男とセックスしまくる純愛物語

Purified Water

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ヤズ (2)

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ミロが目を覚ましたとき、部屋の中には日が差し込んでいた。数分間、ぼんやりした後、それが西日であることに気づく。大蒜と生姜と肉を煮込む匂い、洗剤の匂い、下水の匂い、消臭剤の匂いが、あちこちから入り交ざってミロの嗅覚を刺激した。頭痛はしなかったけれどひどく喉が渇いたので、ベッドから転がり落ちるようにして這い出ると、目の前にあるドアを開けた。ドアを開けるとすぐにキッチンになっていて、何かを刻む音がミロの耳に届く。ヤズと同じ亜麻色の髪をした若い女の後ろ姿が目に入った。
「目が覚めた?」
女が振り返って微笑み、低い声でミロに言った。
「兄さんは、朝早く出かけた。今日はダブルシフトだから、戻ってくるのは夜11時過ぎになる」
ヤズと同じ灰色の目がミロの緑色の瞳に映る。
「…水が欲しい」
とミロがささやくような声でつぶやくと、女は水道の蛇口から欠けたガラスコップに水を注いで黙ってミロの前に置いた。
強い塩素臭でも消せない鉛と下水の匂いがする水だったが、ミロは一気に飲み干した。亜麻色の髪をした娘は、二杯目をすぐに注いでくれた。水を飲むと、ようやく少し気持ちが落ち着いた。「兄さん」ということは、この女性はヤズの妹なのだろう。ミロはこういう「ワンナイトスタンド」はしない。連絡先を聞かなかったが、ヤズは酔いつぶれた自分を、ヤズのアパートへ運び込んだのだ。身繕いするとミロはその女性に丁寧に礼を言い、そのアパートを後にした。お互いの連絡先を交換しなかったが、ヤズの住んでいるところがわかったのは、ミロにとっても驚きだった。

二度目にミロがヤズに会ったのは、それからほどなくしてからだった。生体調整の用件がなくても、ミロが香港基地に来なければならない機会はたびたびある。香港基地は、日防が海外におく軍事施設としては、最大規模のものの一つだ。
忍は、相変わらずどこかの財閥の令嬢と出歩いている。にもかかわらず、忍はいつもと変りなくミロに連絡して会おうとしていたが、ミロはどうしてもその気になれなかった。忍の今回の相手に「結婚」という言葉がまとわりついていることが、ミロの気に障る。ミロは、忍がどこかの女と結婚することで、忍とミロの関係が変わるであろうことが嫌でたまらなかった。
湾仔で、日防軍と大倉研究所の要件を済ませるとすぐ、ミロは香港島へ移動して繁華街に入った。カウンターバーを何件かはしごしてアルコールをたっぷり補給した後、再びヤズに会うために「ライノ」へ行こうかと思案したが、止めておくことにした。今ライノに行っても、また会える気はしない。ミロのこういう予感はよく当たるのだ。連絡先を聞いておけばよかった、と後悔したが、後の祭りだ。一度会っただけの相手のアパートをいきなり訪ねるわけにもいかない。急に何もかもがどうでもよくなり、目に入った先にあった「タイムアウト」というバーにふらふらと入って行った。「タイムアウト」。これほど今の自分にふさわしい名の場所があるだろうか。ミロが入った瞬間、奥からどっと男たちの笑い声が聞こえてきた。中はかなり混んでいる。屋内全面禁煙、というユニバーサルルールにも関わらず、タバコと大麻の匂いが漂っている。ミロは、忍の言いつけを守って、軍服ではない恰好で入って行ったから、男たちの視線はすぐにミロに注がれた。黒と茶系統の色合いで露出がまったく無い服装ではあったが、女優かモデルと見間違えそうな顔立ちと体型は、男たちの興味を強く引いた。ミロは、喉が渇いてたまらなかった。バーカウンターへ真っすぐ突進すると、Maker’s Markウィスキーのダブルとミラーライトのパイントを注文した。客の間を縫いまわるように走り回るのはバニーガールの格好をしたウェイトレスたちだ。ここの客は、ビールはガロンのピッチャー、ハードリカーはボトルで注文する。のんびりグラスを磨いていたバーテンダーは、眼鏡越しの上目遣いでちらりとミロを見ると、すぐに殻付きピーナツを山盛りにした金属製ボウルを突き出し、ウィスキーをなみなみとグラスに注いだ。ミロは、グラスを一気に空にする。そのタイミングで、ミラー・ビールが出てきた。
「よう」
ミロのボウルからピーナツを鷲掴みにする大きな手がミロの目に入った。ミロは、口元のウィスキーのしずくを拭う。鼻腔をくすぐったのはイヴ・サンローランのジャズだ。振り返ると、ヤズが微笑みを浮かべてミロを見降ろしていた。
ヤズは、ピーナツの殻を器用に片手で向きながら、次々と口に放り込んでいく。
「また会えたな」
「……」
ミロは驚いて言葉を失った。
「偶然ってのはよ、偶然なんだが、神サマの思し召しなんだ。こういう偶然は大切にしたほうがいい」
ヤズはニヤリと笑ってミロに顔を近づけた。周囲の男たちは、興味津々で二人の様子に目を向けた。
「よう、ヤズ。お前、こんないい女をひっかけてんのか」
「お前のカノジョが、ほったらかしにされて怒ってたぜ?」
「ヤズ、俺にも分けろ」
ヤズは、このバーの常連らしく他の常連客から怒鳴り声に近い大声でヤジとも応援ともつかない声が飛んでくる。ああ、この男にもちゃんとしたガールフレンドも友達もいるんだな、とミロは思う。ミロが付き合う男は、忍を除けば、既婚者や彼女持ちばかりだ。ヤズは、ミロの首筋に口づけをすると手を握って言った。
「ここはうるさい。行こう」
ミロは黙ってヤズに手を引かれるままについていく。ヤズは周囲の喧騒と群衆をかき分けるようにして、店の外に出た。
「お前、どうやってここに来たの?」
ミロは、湾仔から来ているのでシェアライドを使ったと告げる。ヤズは、そのままミロの手を引いて路駐してある自分の車まで歩いて行った。軍用車だ。
「一応な、今、勤務中ってことになってんの、夜勤で。休憩中ってことで抜け出したんだが、このまま退勤連絡するからよ、ちょっと待っててくれ」
酔って朦朧とした頭の中で、ヤズが軍関係者であることを把握する。
「今日は、何もない。静かだし夜勤の人員も十分いる。誰もコールアウトしてない」
そう言うと、端末を操作して基地へ連絡を入れた。
ミロを助手席に座らせてドアを閉めると、ヤズはすぐにミロの唇を塞いだ。タバコと香水の香りがミロの口の中に広がる。ヤズは運転中ずっと、ミロの太ももをさすり続けた。
ヤズは、路地裏を抜けかなりのスピードで旺角まで運転すると、器用に縦列駐車をする。目の前には「ゲストハウス・ハリウッドホテル」という派手なピンク色の看板があり、チカチカと明かりが着いたり消えたりしている。
「ラブホだがな、我慢しろ。うちには妹がいる。この連れ込み宿はこのあたりではいちばん清潔だ」
ヤズはそう言って、玄関先で前払い料金を支払う。階段は、ミロの肩幅よりわずかに広いほどの幅で、ステップを踏むとぎしぎしと音が鳴る。階段の板には、シミがある。目につく動くものは、大小の虫だった。ヤズの先導にしたがって3階のはずれにある部屋に入る。中は、意外なほど広く清潔だったが、大きなベッドが部屋の半分以上を占めていた。
ヤズは、ミロの服を脱がせる手間ももどかしいらしく、ダークブラウンのタートルネックをブラごとまくり上げた。ミロの大きな乳房が弾け飛ぶように現れると、すぐに乳首に唇を這わせた。ミロの薄い色の乳首は、興奮して淡いピンク色に色づく。ヤズはそれを見て欲望を掻き立てられて強く吸うと、ミロは思わず低い吐息を漏らした。ヤズの指が下着をかき分けるようにして入ってくる。
「……たいへんなことになってるな?」
ヤズの身体が下に移動して、ミロの脚を開かせるとしばらくそこを見つめながら、指で巧みにヒダの中をさぐり真芽を呼び覚まし、深い中心部分に指を這わせる。ミロはなされるがままの快楽に身を任せ、ついに喘ぎ声をもらす。それを合図にするかのように、ヤズが、ミロの掘り起こされた萌芽にそっと口づけした。ミロが再び悦びの声を上げた。ヤズは舌を巧みにつかってミロの芽をねぶりあげながら、同時に気づかないほどスムースなタイミングでミロの中に中指と薬指を差し込む。二本の指は、ミロを中から滑らかに刺激して同時にヤズが芽を唇で吸い上げたとき、ミロは知らず知らず達していた。ミロが達するとき、ヤズはミロの乳首を左手で優しくひねり上げ、それが絶頂の時間を長くした。ミロが絶頂に達して我を忘れたのを見計らうように、ヤズはそっと指を引き抜いた。ミロは狂気の声を上げ、中心を埋めてくれるように懇願した。
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