[R-18]あの部屋

まお

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7.本性2

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その瞬間、柏木の動きがピタッと止まる。

「……あれ?野坂……。…お漏らししちゃったの?」


嘲るように言われて、いつの間にか溢れていた涙でぐちゃぐちゃの顔で茫然と朔は柏木の顔を見上げる。
そして暫くたってから、履いたままのスウェットが重く、そしてシーツの上共々が生暖かく湿っていることに気づく。

「っ……」


恐怖で麻痺していた様々な感覚が、それを理解するとみるみるうちに正常に働き出し一気に羞恥心と絶望感に朔は支配された。

「お漏らししちゃうくらい恐かったかぁ…。野坂の為を思ってさっさと済ませてあげようと思ったんだけど。恐がらせちゃってごめんね。」


柏木は羞恥で俯き静かに涙を滲ませる朔の頭を慈しむように撫でた。

「…じゃあ、ハサミで切るのやめてあげる代わりに俺のお願い聞いてよ、野坂。」


俯く朔の視界に入るように、柏木は朔の胸の上に顎を乗せて小首を傾げて笑顔で朔の顔をのぞき込む。朔は柏木を直視出来なかった。
羞恥、恐怖、怒り、悲しみ、焦燥…様々な負の感情が頭の中を駆け巡り、ただ目の前の男に関わりたくない。逃げたい。その気持ちが全てだった。

「……」

「何も返事がないなら続行するよ。」


チャキンとハサミを動かす音が耳に入り、朔は慌てて柏木に視線を合わせる。その瞳は完全に恐怖に支配されていた。

「…なに……を、……す…れば…っ」


震える声で絞り出すように訊ねた。柏木は今日1番優しい笑顔で言い放った。

「じゃあ…「柏木のおちんちんをはじめのおまんこに挿れてください、いっぱい犯してください」って言ってごらん?」


朔は信じられない気持ちで柏木を茫然と見返した。

(コイツ……一体…何を言って……)
柏木は楽しそうに朔の様子を観察していた。

「……嫌だ…っ。なあ、正気か!?」

「俺の目的は君を犯すこと。でもどうせなら合意で抱き合いたいでしょ?兄貴には沢山ねだってたのに俺には言ってくれないの?」

「そ…そんな事ねだった事ない!適当なこと言うなッ」

「…まぁいいや。言わないならこのまま犯すだけだから。合意じゃないならそれ相応の抱き方になるけどいいよね?」


そう言いながら柏木は先程の貼り付けたような笑みからスっと感情が抜け落ちた無表情を作る。

「まずは慣らさずココ、挿れるよ。処女じゃないし大丈夫だよね。」


言いながら柏木は朔の太腿を左手で押さえ濡れたスウェット越しに右手の中指で的確に朔の後孔をグイっと捩る。

「──なッ…触るな!」

「慣らさなかったら多分裂けるだろうけど、そのまま奥まで突っ込んであげようね。血まみれで俺のを咥えこんでる野坂のここ、きっと健気でかわいいんだろうな…」


無表情だった柏木の表情が今度は一変、うっとりとした恍惚な表情を見せる。

「俺のは大きいからそのまま野坂の結腸まで届くだろうし、一気に貫いてあげる。初めてだと相当痛いだろうね。」

「…な…に……言って……」


淡々と話続ける柏木の言っている事を頭が理解するのを拒否する。

「後ろの痛みを取り除くために別のところに痛みを与えていけばきっと野坂も辛くないね。」


朔の動揺と恐怖なんか全く気にしていないように今度は楽しげに声を弾ませ柏木は話し出す。そして右手に再びハサミを持った。

「乳首は切られたくないみたいだから…例えば耳。耳の下を切ってあげようか。千切れるギリギリまでハサミで切って痛みを分散しよう。切り取られず身体に残っていれば野坂も安心でしょ?あとは俺達が愛し合った証として太腿の裏に正の字を刻んでいこう。一生消えないように深く刃を差し込んで残るようにしっかり刻んであげるから安心してね。」


柏木は持ったままのハサミをスウェット越しに朔の右太腿の裏に強めに押し当てる。

「っ………ゃ………だ……」


余りの恐怖心から朔は声だけではなく身体も小さく震え出す。

「また震えてるね。そんなに嫌だ?ならさっきお願いしたこと言ってくれたら止めてあげるよ。」


柏木は朔の頭を優しく撫でながら諭すようにもう一度言葉をかける。その優しく頭を撫でる手の感触と、自分の置かれたこの状況のギャップに朔の瞳からは自然と涙が流れ幾筋も頬を伝っていく。

「……なん……で……」

「何?」


弱々しく呟いた朔の言葉に、柏木はやはり笑みを崩すことなく聞き返してくる。

「っ…なんでッ……俺なんだ…。お前なら抱ける女なんて腐るほどいるだろ!もう…やめてくれ……」


嗚咽混じりに訴えた言葉に柏木は目を細め朔の頬を撫でる。

「俺は君を抱きたいんだよ野坂。」


そう言い柏木は朔の首筋に顔をうずめ下からねっとり舐めあげると、耳を通り朔と視線を合わせながら朔の唇を舌でなぞる。


「いやだ…いやだっ…なんで俺っ…」

絶望的なこの状況と、過去の記憶が重なり涙がまた零れる。すっかり抵抗する気力がなくなった朔は発する言葉でのみ拒否を示した。

「ちゃんと言えたら痛いこともしないし、傷も残らないようにするよ。ほら、言ってごらん。」


柏木は優しい表情と声で囁き、朔の頬を優しく大切なものを扱うように撫でながら誘導する。その囁きは恐怖と苦しみに迫られ行き場を無くして弱っている朔の心の隙間に入り込むのには十分だった。
痛いのも苦しいのもつらいのももう嫌だった。
そして柏木の異常性と同じくらい怖かったのが、昔の記憶を思い出すことだった。

家庭教師との記憶が柏木を通して時折頭の中を掠めるのに朔は震える程の恐怖を感じていた。ずっと思い出さないようにしていた家庭教師との記憶。その記憶は薄れつつあったのに、目の前の拓先生の面影を持つ男に朔は嫌悪感と恐怖を拭いきれなかった。記憶を思い出せば、何かが壊れる。自己嫌悪で死にたくなる。記憶が無い中でもそれだけは直感で理解できた。だから記憶を消したかったのに、目の前の男にその自己防衛を解かれそうなのが朔は怖くて仕方がなかった。


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