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思いを伝える④
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「はぁ……花緒のことが好きすぎておかしくなりそうだ」
「太一くん……」
「……聞きたくないかもしれないけど、こんな気持ちは初めてなんだ。俺には学業と仕事の両立が何よりも大事で、今までいい加減な付き合いをするつもりはなかったけど、結果的に自分を優先することばかりだった。花緒と出会って初めて、自分よりも大事にしたい存在ができたんだ」
それは、まさに私がモヤッとした内容だったのだけれど……。
「仕事中は気づいたら花緒のことを考えていて、何かにつけてショールームを覗きに行ったり」
「え」
「設計の野郎どもが話しかけようものなら、俺との仲をチラつかせ」
「ええっ?」
「常に同期以上の関係をアピールして」
「待って待って、初耳なんだけど!」
「そりゃ言ってないから」
しれっと暴露する高野に驚く。
確かにショールームでよく会うと思っていたけれど、本当に仕事があるのだと思っていた。
「ショールームに用があったのは事実。でも建材のサンプルを見るだけなら、エレベーターを2階で降りればいい話だ」
「あ」
言われてみればそうだ。
通常お客様がショールームの2階へ行くには、ショールーム1階入口にある専用階段から上がる。もちろんその横には車椅子やベビーカーのためのエレベーターもあって、ちゃんとバリアフリーの対策もなされていた。
でもそこは本来お客様のためのもの。社員であれば2階にあるSTAFF ONLYの扉から行き来できるのだ。
じゃあ高野は、毎回わざわざ遠回りをしてショールームの入口まで回っていたということ?
「多分、気づいてないのは花緒だけだと思うぞ。俺の行動、結構わかりやすかったと思うが。受付の姉さん方とか広報の小さい姉さんとか、いつもニヤニヤ笑っていたのにな」
と当たり前のように言う。
「知らなかった……」
えええーっ! それって、もう入社してすぐの頃からだよ。じゃあ、そんなに前から?
「ちょっとでも花緒に話しかけたいとか、小学生レベルだよな」
高野が自嘲気味に言う。
たしかに。一緒に住んでやることやってるのに、仕事中まで会いたいと思ってくれていたってことよね? そう思うと……。
「プッ」
「あ、笑ったな?」
「だって、太一くんみたいな大人の男の人が、しかも超がつくエリートなのに、子供みたいなことをしていたなんて……フフッ」
私は込み上げる笑いを抑えることができなかった。
「笑いたきゃ笑えばいい。俺はそんなガキみたいな男だ。でもそれも花緒に対してだけだ。こんな気持ち、マジで初めてなんだ」
「太一くん……」
「今思えば、合宿の時にはもう花緒に落ちてたんだと思う。遠回りして、悪かった」
「……ううん、嬉しい。太一くんの気持ちが知れて、すっごく嬉しいよ」
こんな素敵な人が、はたから見れば子供っぽいような行動をしていたなんて聞くと、キュンとしてしまう。
モヤモヤしていた気持ちなんて一気に吹き飛んでしまった。
それから再びベッドに戻ると、高野は夜が明けるまで私を抱いた。
私も今までの思いがあふれ出して、ずっと高野を求め続けた。
翌朝はもちろん早く起きられるはずもなく、朝食ビュッフェが終わってしまうギリギリの時間に会場へ滑り込み、近江の食材をふんだんに使った朝食を慌ただしくいただいた。
チェックアウトの時には「払わせるわけないだろう」と私には一円も出させなかった。
プレゼントもいただいたし、随分とお金を使わせてしまった。
でも純粋に嬉しかったので、おいしいものを作ることで日々お返ししようと思う。
思いがけない一泊旅行だったけれど、どこへ行くのも何をするのも楽しくて、連れて行ってくれた高野には感謝しかない。
そして、こんな素敵な一泊旅行で気持ちを伝えてくれたこともとても嬉しかった。
「太一くん……」
「……聞きたくないかもしれないけど、こんな気持ちは初めてなんだ。俺には学業と仕事の両立が何よりも大事で、今までいい加減な付き合いをするつもりはなかったけど、結果的に自分を優先することばかりだった。花緒と出会って初めて、自分よりも大事にしたい存在ができたんだ」
それは、まさに私がモヤッとした内容だったのだけれど……。
「仕事中は気づいたら花緒のことを考えていて、何かにつけてショールームを覗きに行ったり」
「え」
「設計の野郎どもが話しかけようものなら、俺との仲をチラつかせ」
「ええっ?」
「常に同期以上の関係をアピールして」
「待って待って、初耳なんだけど!」
「そりゃ言ってないから」
しれっと暴露する高野に驚く。
確かにショールームでよく会うと思っていたけれど、本当に仕事があるのだと思っていた。
「ショールームに用があったのは事実。でも建材のサンプルを見るだけなら、エレベーターを2階で降りればいい話だ」
「あ」
言われてみればそうだ。
通常お客様がショールームの2階へ行くには、ショールーム1階入口にある専用階段から上がる。もちろんその横には車椅子やベビーカーのためのエレベーターもあって、ちゃんとバリアフリーの対策もなされていた。
でもそこは本来お客様のためのもの。社員であれば2階にあるSTAFF ONLYの扉から行き来できるのだ。
じゃあ高野は、毎回わざわざ遠回りをしてショールームの入口まで回っていたということ?
「多分、気づいてないのは花緒だけだと思うぞ。俺の行動、結構わかりやすかったと思うが。受付の姉さん方とか広報の小さい姉さんとか、いつもニヤニヤ笑っていたのにな」
と当たり前のように言う。
「知らなかった……」
えええーっ! それって、もう入社してすぐの頃からだよ。じゃあ、そんなに前から?
「ちょっとでも花緒に話しかけたいとか、小学生レベルだよな」
高野が自嘲気味に言う。
たしかに。一緒に住んでやることやってるのに、仕事中まで会いたいと思ってくれていたってことよね? そう思うと……。
「プッ」
「あ、笑ったな?」
「だって、太一くんみたいな大人の男の人が、しかも超がつくエリートなのに、子供みたいなことをしていたなんて……フフッ」
私は込み上げる笑いを抑えることができなかった。
「笑いたきゃ笑えばいい。俺はそんなガキみたいな男だ。でもそれも花緒に対してだけだ。こんな気持ち、マジで初めてなんだ」
「太一くん……」
「今思えば、合宿の時にはもう花緒に落ちてたんだと思う。遠回りして、悪かった」
「……ううん、嬉しい。太一くんの気持ちが知れて、すっごく嬉しいよ」
こんな素敵な人が、はたから見れば子供っぽいような行動をしていたなんて聞くと、キュンとしてしまう。
モヤモヤしていた気持ちなんて一気に吹き飛んでしまった。
それから再びベッドに戻ると、高野は夜が明けるまで私を抱いた。
私も今までの思いがあふれ出して、ずっと高野を求め続けた。
翌朝はもちろん早く起きられるはずもなく、朝食ビュッフェが終わってしまうギリギリの時間に会場へ滑り込み、近江の食材をふんだんに使った朝食を慌ただしくいただいた。
チェックアウトの時には「払わせるわけないだろう」と私には一円も出させなかった。
プレゼントもいただいたし、随分とお金を使わせてしまった。
でも純粋に嬉しかったので、おいしいものを作ることで日々お返ししようと思う。
思いがけない一泊旅行だったけれど、どこへ行くのも何をするのも楽しくて、連れて行ってくれた高野には感謝しかない。
そして、こんな素敵な一泊旅行で気持ちを伝えてくれたこともとても嬉しかった。
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