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異動願い①
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11月になり、私は二次試験を受けた。
高野が休日も指導してくれ、かなりのスピードアップが図れるようになったと思う。
でも、持てる力を出し切って頑張ったけれど、やっぱりそんなに簡単なものではなかった。圧倒的な経験不足、問題はそこだ。
結果は年明けだけど、今回はダメだろう。現実はそう甘くない。
そういうわけで、私は異動願いをどうしようかと悩んでいた。
一次は通過したものの、胸を張って「合格予定なので、設計部に異動させてください!」とは言えそうにないからだ。
「いや、結果は関係ないだろう。そもそも花緒が設計希望だということは、人事部もわかっていることだ。異動願いを出すのは自由じゃないか? 意思表示はするべきだ」
「でも、今回の二次試験は無理だよ……」
「だとしても、異動願いは出せ。4月になれば受付にも新入社員が入るんだ。そうすれば花緒が解放される可能性はあるんだから」
こうして高野に背中を押され、私は異動願いを出す決心をした。
年が明けた1月、二次試験の結果が出た。やはり不合格だった。
予想していたとはいえショックは大きく、私は激しく落ち込んだ。
「いっぱい試験勉強を見てくれたのに、ごめんね」
「いや、花緒は頑張ったよ。ただどうしても経験不足は否めない。元々一級建築士の試験は実務経験を積んでからしか受けられなかったんだ。実務が後回しになったからと言って、試験内容が大幅に変わるわけじゃない。やっぱり経験って必要なんだよ」
建設会社でインターンとして4年の実務経験を経てから一級を受けた高野の言葉には重みがあった。
「来年に向けてまた頑張ろう。そのためにも、異動が叶うといいな」
「うん……」
励ましてくれる恋人がいて、ありがたいと思う。
高野は私にとって恋人であり、先を行く先輩であり、師でもある。
もう、この人がいない生活は考えられない……。
3月に入り、人事から呼び出しがあった。
「高嶺さん、4月から副社長秘書になってもらうわ」
「副社長秘書……?」
「今度新しく副社長に就任されるの。その方の補佐をして――」
「待ってください! 私は設計部に希望を出しました。秘書課じゃありません! どうしてそんなことになるんですか? この一年、受付に立ちながら一級建築士の試験を受けて、一次は合格しました。二次はダメでしたが、実務の経験を積まないと来年合格できたとしてもずっと登録ができないままになります」
「それはあなたの事情でしょう? 会社があなたに一級建築士の資格を取ってほしいとお願いしているわけではないのよ? あなたそこのところを間違えていない?」
「……!」
高野が休日も指導してくれ、かなりのスピードアップが図れるようになったと思う。
でも、持てる力を出し切って頑張ったけれど、やっぱりそんなに簡単なものではなかった。圧倒的な経験不足、問題はそこだ。
結果は年明けだけど、今回はダメだろう。現実はそう甘くない。
そういうわけで、私は異動願いをどうしようかと悩んでいた。
一次は通過したものの、胸を張って「合格予定なので、設計部に異動させてください!」とは言えそうにないからだ。
「いや、結果は関係ないだろう。そもそも花緒が設計希望だということは、人事部もわかっていることだ。異動願いを出すのは自由じゃないか? 意思表示はするべきだ」
「でも、今回の二次試験は無理だよ……」
「だとしても、異動願いは出せ。4月になれば受付にも新入社員が入るんだ。そうすれば花緒が解放される可能性はあるんだから」
こうして高野に背中を押され、私は異動願いを出す決心をした。
年が明けた1月、二次試験の結果が出た。やはり不合格だった。
予想していたとはいえショックは大きく、私は激しく落ち込んだ。
「いっぱい試験勉強を見てくれたのに、ごめんね」
「いや、花緒は頑張ったよ。ただどうしても経験不足は否めない。元々一級建築士の試験は実務経験を積んでからしか受けられなかったんだ。実務が後回しになったからと言って、試験内容が大幅に変わるわけじゃない。やっぱり経験って必要なんだよ」
建設会社でインターンとして4年の実務経験を経てから一級を受けた高野の言葉には重みがあった。
「来年に向けてまた頑張ろう。そのためにも、異動が叶うといいな」
「うん……」
励ましてくれる恋人がいて、ありがたいと思う。
高野は私にとって恋人であり、先を行く先輩であり、師でもある。
もう、この人がいない生活は考えられない……。
3月に入り、人事から呼び出しがあった。
「高嶺さん、4月から副社長秘書になってもらうわ」
「副社長秘書……?」
「今度新しく副社長に就任されるの。その方の補佐をして――」
「待ってください! 私は設計部に希望を出しました。秘書課じゃありません! どうしてそんなことになるんですか? この一年、受付に立ちながら一級建築士の試験を受けて、一次は合格しました。二次はダメでしたが、実務の経験を積まないと来年合格できたとしてもずっと登録ができないままになります」
「それはあなたの事情でしょう? 会社があなたに一級建築士の資格を取ってほしいとお願いしているわけではないのよ? あなたそこのところを間違えていない?」
「……!」
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