高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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異動願い②

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 確かにそうだ。私は会社に設計士として求められているわけではない。
 今の言い方は完全に私のミスだ。

「すみません……。でも、私が秘書の仕事をできるとも思えません。秘書検定も受けていませんし……」

 秘書なんて考えたこともなかった。私には縁のない仕事だと思っていたし、到底務まるとは思えない。

「まあ、ちょっと落ち着きなさい。そして話はちゃんと最後まで聞くこと」
「……はい」
「さっきの話の続きね。4月から新しい副社長が就任されるの。人事発表がまだだからこの話はオフレコでお願いするわ」

 人事課長の話によると、新副社長は、一般的なスケジュール管理をするだけのような秘書を求めていないという。設計の基礎知識があり、助手として仕事を手伝える者を傍に置きたいと。

「設計部の若手を考えていたんだけど、副社長自ら……いえ、えーっと、だからね、高嶺さんならちょうどいいと思ったのよ。設計の基礎知識はもちろんあるだろうし、秘書としての見栄えもね。それに、あなたにとってこれは悪い話じゃないと思うの。多くは言えないけど、新副社長は若いのにいくつもの物件を手掛けられていて、指名が入るような方なの。まあ、そこは会えばわかると思うけど」
「はあ……」
「あなたも受付にいるよりは学べることがたくさんあると思うわ。それに実務経験の方も、積めないわけじゃないかも……。ごめんなさい、これ以上は私の口から言えないのよ」
「あ、あの……逆にそれ、私で大丈夫なんでしょうか? 建築の基礎知識はありますが、そんなにすごい方の助手なんて務まるのか心配です」

 話を聞くほどに、私に出来るのか不安になる。

「あちらも高嶺さんの経歴を見た上で引き抜いているわけだから大丈夫よ。実務経験がないということも経歴を見れば分かることだもの」
「そう……ですよね」

 どちらにせよ、1年前と同じく夏成に残りたいのであれば、この異動を受け入れるしかないのだ。

「承知しました。4月から副社長秘書をさせていただきます」


 ◇ ◇ ◇


「副社長秘書⁉」

 帰ってきた高野に、異動が決まったことを報告する。

「東京支社から新しい副社長が来られるそうなの。その方の秘書にって」
「はぁ?」
「私も初めは戸惑ったんだけど」
「話が違うだろう⁉」

 そうなんだよね。私は秘書になりたかったわけではない。
 高野が私を思って怒ってくれる気持ちがよくわかる。
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