塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける

吉岡ミホ

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夢のような一夜

夢のような一夜⑥

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「…………そうか。なら君のバッグを持って来よう」

「あ、ありがとうございます……」

 気まずいけど、コンシェルジュに頼むなんてもっと気まずい。それに、なるべく迷惑をかけたくない。

 昨日は、私が頼み込んで抱いてもらったようなもの。
 一晩、ここに置いてもらう見返りに。

 本来なら、相手が眠っている隙に姿を消すのが正しい作法なのではないだろうか。
 お礼のメモをひとつ残して。
 それが後腐れのない一夜限りの関係の礼儀な気がする。

 それなのにこんなに日が高く昇った時間まで寝てしまっていたとは……完全にミスった。
 でも体力の限界だったのよ……。

 それにしても、まさか自分がこんな一夜限りのお相手とハジメテを経験するなんて思いもしなかった。
 ハジメテは両親のように、愛する人と経験するものだと思っていた。

 陽介と付き合い出した時に、キスをした経験だけはあった。でも昨日のキスは、そんなのとは比べものにならないくらい大人のキス。ましてや体の繋がりは……。
 今思い出しただけでも顔が火照る。

 想定外の出来事だったけれど、不思議なくらい後悔はない。それはきっと、相手がエイシンさんだったからだ。喋り方は少しぶっきらぼうだけど、優しい人だ。
 
それに明るいところで近づいて見ると、とても素敵な人だった。今はあの人がハジメテの相手で良かったと心から思う。
 
 エイシンさんがお湯を張ってくれた湯船に浸かっていると、全身の重だるさが解けていく。
 不思議だ……。
 昨日の私と、今日の私。きっと外見は何も変わっていないのに、違うんだなぁー。

 そんなことをボーッと考えていたら、少し長風呂になってしまった。

 バスタオルを体に巻き、軽くメイクをしたところで服がないことに気づく。

 服………………あ、寝室?

 さすがに裸のままで取りに行くことは出来ないので、短めのワンピース位の長さにはなるエイシンさんのシャツをまたお借りすることにした。
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