塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける

吉岡ミホ

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再会は壁ドンで

再会は壁ドンで④

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「叶恋ちゃん、秘書って興味ある?」

「はい? 秘書、ですか……?」

「うん。正確には大学の医局秘書だね」

「医局?」

「医局というのは、お医者さんが集まる場所。学校で言えば職員室みたいなところかな」

「職員室……」

「ちょっと違うけど、あくまでもイメージね」

 そんなところで、私が秘書!?

「あの、私で務まるのでしょうか……」

「仕事内容自体は問題ないはずだよ。まあ、まだちょっとはっきりとは言えないけれど、一度医局長と相談してみるから」

 即決ではなかったのできっとこの話はなくなるだろうと思っていたのに、翌週になって改めて鹿島先生からお電話をいただいたのだ。

 そうして慌ただしく私の再就職が決まった。


 ◇ ◇ ◇


「鹿島先生から、お父さんの看病をしながら弟たちの面倒をよくみて、本当に気の利く子だと聞いていたんだよ」

「えぇ? そ、そうなんですか……お恥ずかしい限りです……」

 鹿島先生は奥様の誕生日らしく、今日は来られていなかった。
 でも、入院中とてもお世話になった先生にそんな風に言ってもらえていたと知るのは正直嬉しい。

「イシハラに勤めていたんだろう? 就職は狭き門だったろうに、家族のために思い切って退職したと聞いたよ」

「は、はい……」

 これは褒められているのだろうか。
 こういうことを面と向かって言われるととても恥ずかしい。家族として当然のことをしただけなのに。

「うちは一般企業と違って異質だ。秘書さんにはドクターの裏側を見せてしまうし、ワガママ無茶ぶりにも対応してもらうことになるだろう。
でも、きっと伊原さんは面倒見が良さそうだからすぐに慣れると思う。
川崎さんがよーく教えてくれるだろうから、頑張って。
伊原さんを歓迎するよ」

「ありがとうございます!」

 ワガママ無茶ぶり……?
   少し気になるワードはあったが、優しい声掛けを有難いと思った。

 次から次へと肉を焼いてくださるので、すぐにお腹はいっぱいに。
 勧められるままに二杯目のジョッキに手を出したところで、横から手が伸びてきた。

「おい、飲みすぎだ」

「へ? あ、エイシン……じゃなかった。えっと」

 あれ? エイシンさんの名前が浮かばない……。
 
「お前、弱いんだから、こういうところではちゃんと弱いって伝えろ」

「あはははは……はーい」

「あれ、伊原さん酔ってるの? もしかして酒に弱かった?」

 医局長が心配そうにこちらを見ている。

「だいじょーぶ、れす」

「大丈夫じゃないね。顔に出ないんだ。
しまったな……。おい、水を頼んでくれ」

 なんだかほわほわして、眠くなってきた。
 
 



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