能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。

文字の大きさ
89 / 102
四章

第88話 新しい魔王です

しおりを挟む
 ヘルドさんの迎えが来る前日。

 魔王城の前には多くの魔族が集まっていた。

 そこに一人の美しい女魔族が立っている。

 その姿に割れんばかりの拍手と声援と共に、泣き崩れている者も多数いた。

 彼女の名はエヴァグリンデ。

 元魔王だ。

 彼女は『拡声器』を手にし、語り始めた。

「皆の者! まず初めに、今まで姿を見せられなかった事を詫びよう。本当にすまなかった」

 深々と頭を下げる彼女に多くの魔族がその場に土下座する。

「本日報告したい事は二点あるのじゃ。一点は、見ての通り……私の怪我が完治したのじゃ!」

 広場は今日一番の盛り上がりを見せた。

 歓喜を表すかのように飛び跳ねている魔族もいれば、声をあげている魔族と様々な表現の仕方ではあったが、みんな喜んでいる事が伝わってくる。

「そして、二つ目の報告じゃが……ちと残念な事じゃ」

 彼女の言葉に喜んでいた者達が一斉に静かになった。

「此度……このエヴァグリンデは……魔王の座から降りる事になったのじゃ」

 今度はさっきとはまるで違う、この世の終わりみたいな絶望な雰囲気になった。

「これこれ、皆の者! 話は最後まで聞け! まだこの話には続きがあるのじゃ」

 絶望な雰囲気のまま、魔族達が静かになり、彼女は更に続けた。

「魔族と人間が争う事になったのは……言わば、魔剣と聖剣。魔王と勇者がいたからじゃと私は思っておる。しかし、此度……その両方を手に入れた人間が現れたのじゃ! 私は……彼を信じてみようと思う! かの悪の極みであった元勇者クラフトに変わり、新たな勇者となったアレクじゃ! そして、此度、新たな魔王にも就任して貰う事になったのじゃ!!」

 彼女の紹介で、僕は両手に光り輝く聖剣と禍々しい光を放つ魔剣を手にして魔族の前に立った。



 不安な気持ちはまだある。

 僕に何が出来るかは分からないけど、出来る限り人間と魔族の間を保てるように頑張りたいと思う。

 エヴァもそれを望んで、僕に魔剣を授けてくれたのだろう?

 彼女の眩しい笑顔が魔族と人間の未来を占うようだった。

 そして僕は、魔族達の沢山の声援と共に、エヴァの前に平和を誓った。



 ◇



 ◆演説数時間前◆

「あ、エヴァ。そう言えば、どうして包帯は取らないの?」

「ん? アレク……お主もエロいやつじゃのう? 私のはだか・・・がそんなに見たいのか?」

「なっ!?」

「ん!? アレク???」

 ちょっ!? アイリス!? そういう事じゃないんだよ! だからまずその拳を――――痛っ!!


「あははは~悪かった悪かった~ほんと、からかいのあるバカップルじゃ!」

「うう……」

「私が包帯を巻いている理由はのう……これじゃ」

 エヴァは巻かれていた包帯をはがしてくれた。



 ――とても、見ていられる傷ではなかった。

 ――「我々魔族に、あの聖剣から受けた傷は決して癒えないのじゃ」。

 ふと、エヴァが会談中に話した事を思い出した。

 そうか……この傷はその時に……それにしても…………治らないのか……。

 今では自力で歩く事すら出来ないというのがまた……。


 僕は聖剣を召喚した。

「聖剣! お前の所為・・でエヴァが苦しんでいるだろう! どうすればこの呪いを解けるのか教えろ!」

【ひ、ひぃ!? ご主人様!? 呪いとは一体!?】

「聖剣に傷つけられた魔族は傷が癒えないそうなんだよ」

【あ~聖なる加護によるものですね~それなら儂がいつでも解除出来ますよ!】

「んな!? だったら今すぐ解除しろ! このボケアホ聖剣が!!!」

【ひいい!! かしこまりました!!!】

 痛々しいエヴァを見ていた所為か、言葉が悪くなってしまった。

 エヴァを包んでいた目に見えない光の壁が、割れるのが見えた。

 これが聖なる加護か……。

 どうやら、魔剣ですら解除出来ない呪い・・らしい。

「エヴァ! この『ポーション』を飲んでくれ」

「……ああ、分かった」

 エヴァは、迷わず僕が渡した『ポーション』をかぶかぶと飲んだ。

 淡い光が彼女を包み、傷をみるみる癒した。



「ああ……私の身体が……治っ…………アレク……ありがとぉ……なのじゃ…………」

 彼女は大きな粒の涙を流した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...