そよ風と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~

御峰。

文字の大きさ
6 / 33

6話

しおりを挟む
 巨漢の出現によって、オルゲンさん達は凍り付いたかのように動かなくなった。
 
 だって、僕から見ても、彼がすごく強いのがわかる。
 
「な、何だよ……」
 
「まさか冒険者が力で仕事を強制している連中がいたとはな……」
 
「そんなこと俺達の勝手だろ! あいつは無能で働く場所がなかったんだ! 俺達が飼ってやってるんだ!」
 
「……だが、随分と必死に止めていたな?」
 
「そ、それはっ!」
 
「もうお前達ではあの少年には勝てない。いくら力があっても、心で少年と絆を結べなかった時点で、お前達の負けだ。それと、今回の件は冒険者法の違反になる。このまま全員逮捕させてもらう」
 
「はあ!? ふ、ふざけるなっ!」
 
 オルゲンさんは巨漢に剣を振りかざす。
 
 危ないっ――――と思ったときにはすでに巨漢の腕がオルゲンさんの腹部にめり込んでいた。
 
「がは……っ」
 
「こいつらを全員牢にぶち込んでおけ!」
 
「「「はっ!」」」
 
 後ろから数人の兵士さん達がやってきては、オルゲンさん達を連れていった。
 
「イマイル様」
 
「ほっほっほっ~問題ないですよ~それに~私からお願いしたことですから~」
 
 また前回のような柔らかな雰囲気になった。
 
「ハウッ!」
 
「うわっ!? リーゼ?」
 
「大丈夫? どこかケガしてない?」
 
「僕は何もされてないよ? それよりおじさんが突き飛ばされてしまって……」
 
「じゃあ、私が治してあげる!」
 
「リーゼ!?」
 
 リーゼはすぐにおじさんに向かって右手を出した。そして、そこから淡い緑色の光が、おじさんの体を包み込んだ。
 
「これは……」
 
「リーゼ……誰にもバレないようにって……おじさんおばさんに怒られるよ?」
 
「で、でも……ハウの恩人だもの。これくらいはさせて欲しいよ」
 
「そっか……ありがとう。もし怒られたら僕も一緒に謝るから」
 
 彼女の才能は彼女が大きくなるまで秘密にしたいってことで、でも秘密にしなさいと言われたその日に僕にだけ明かしてくれた。
 
 おばさんは呆れていたけど、僕にもできるだけ秘密は守って欲しいと頼まれた。
 
 もちろん、リーゼにとって悪いことになるなら、僕は死んでも言うつもりはない。
 
「それより……このおじさんは誰なの?」
 
「あ~えっと、この前道でぶつかってしまって、タンポポの綿毛を僕の魔法で集めたんだ」
 
「う~ん? タンポポの綿毛?」
 
「あはは……あとでちゃんと説明するよ」
 
「ってことは、私に秘密にしていたって……こと?」
 
「違う! 変に心配されたくなくて……」
 
「んもぉ。ハウってば、いつもそうなんだから!」
 
「あはは……ごめん」
 
 起き上がったおじさんが柔らかい表情を浮かべて、僕の前に来てくれた。
 
「おじさん。今日はありがとうございます」
 
「いやいや~まさかハウくんが~あんなことになっているとはね~」
 
 リーゼが小さく「おじさんって喋るの遅いね」ってボソッと僕に言ってきた。
 
「えっと……おじさん。どうして僕に優しくしてくれるんですか?」
 
 すると、意外なことに、おじさんは少しだけ言葉を詰まらせた。
 
「庭園で話そうか~」
 
「はい。えっと、リーゼも一緒でいいですか?」
 
「彼女はハウくんにとって~どんな人なんだい~?」
 
「僕にとって……とても大切な人です!」
 
「そうか~なら一緒に行こう~」
 
「ありがとうございます!」
 
「ハウ? 庭園って?」
 
「ほら、街のはずれにある何とかの庭園あるでしょう?」
 
「あ~ソフィアの庭園?」
 
「そんな名前だっけ?」
 
「そうだよ。人の名前だって、お母さんが言ってた」
 
「ほえ~」

 僕にとっては懐かしい名前だね……。
 
 それから僕はおじさんと巨漢の男とリーゼと一緒に庭園に向かった。
 
 
 ◆
 
 
「わあ~! 綺麗~!」
 
 庭園に入るや否や、リーゼが可愛らしい声をあげた。
 
「リーゼ? 勝手に花をとったりしちゃダメだからね?」
 
「え~いくら何でも誰かわからない花にそんなことしないわよ」
 
 意外だ……。
 
「……今、とても失礼なこと、考えてない?」
 
「考エテイマセン」
 
 ジト目で僕を見るリーゼ。
 
 前回と同じく、タンポポの花畑の前にやってきた。
 
「ハウくん。さっきは、どうして私がよくしてくれるのかと聞いてくれたね?」
 
「はい」
 
 また喋り方が変わった。
 
 すごく高貴な人みたいだ。
 
「ハウくんの魔法の力は、ここで育っている花や木々にはとても大切な力なんだ」
 
「僕の魔法がですか?」
 
「風を吹かせてみてくれるかい?」
 
「はい」
 
 僕の風魔法を周りに広く展開させると、花や木々が揺らぎ始めた。
 
「この庭園を守るために壁を作っているからね。風が入ってこないのだよ」
 
「そういえば、初めて入ったときも揺らいでいませんでしたね」
 
「そうなんだ。でも本来の植物というのは、風に揺らいでいるのが普通なんだ。そうやって体を動かして活力を見出すんだけれど、ここの植物達は私のわがままで……そういう自由を失ってしまったんだ」
 
「自由を失った……」
 
「だから、ハウくんにはここにある植物達に風を吹かせて欲しいんだ。これはハウくんにしかできないことで、とても大切なことなんだ。どうだい? 私が君をどうしても雇いたい理由はわかったかい?」
 
「はい!」
 
「あの~おじさん」
 
 一緒に聞いていたリーゼが手を挙げた。
 
「どうしたんだい? お嬢ちゃん」
 
「ハウがここで働くのはいいんだけど、お給金はいくら出してくれるの?」
 
「リーゼ!?」
 
「お給金は大事だよ? また安い給金で働かされたら嫌だもん……」
 
「そうだな。では一日、銀貨十枚でどうだい?」
 
「「一日銀貨十枚!?」」
 
 それはとんでもなく破格な金額だ。
 
「それとお昼ご飯付き。さらにタンポポの出荷時にはボーナスも出すよ~」
 
「すごい! ハウ。ここでちゃんと頑張って働くのよ?」
 
「リーゼに言われなくても頑張るよ?」
 
「それもそうね。だって――――ここで働くってハウが自分で決めたんだもんね」
 
 まさかそんなに給金が頂けるとは思わなくて驚いた。
 
 これなら……リーゼとオリアナおばさんとリアタおじさんに、タンポポ入りのあの美味しいスパゲッティをご馳走できるかもしれない!
 
 そう思うと嬉し笑みがこぼれた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな ・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー! 【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】  付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。  だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。  なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!  《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。  そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!  ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!  一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!  彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。  アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。  アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。 カクヨムにも掲載 なろう 日間2位 月間6位 なろうブクマ6500 カクヨム3000 ★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...