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(ん…………私……生きているの?)

 微かに匂う土の匂い。

 そして、口の中に広がるとてつもない苦味・・

(この苦味…………間違いなく、アメル草の味だ)

 解熱剤で最も多く使われているのがアメル草である。

 そのままではあまりにも強力な苦さに、普段は水にエキスを絞って薄めたモノを使うのが普通の使い方だ。

 けれど、アメル草本体・・かじった事により、死薬による高熱が奇跡的に回復したのだ。

(そうか……私、生き残ったんだね…………お母様に教わった薬師の知識が役に立ったわ……)

 その時。

 近くでウォーウルフの鳴き声が聞こえてくる。

(ウォーウルフ!? やっぱり、ここって王都の隣の魔女の森なのね)

 王都のすぐ隣に面した森は通称『魔女の森』と言われ、複数の魔物が住み着いており、冒険者達の狩場として有名な森だ。

(まずいわ…………ん? アメル草はまだまだあるのね? よし!)

 アメル草を引き抜いたエリシアは、少し覚束ないながらも立ち上がり、歩き進める。

 地面を見ると、自分が全身を引きずった跡が残っており、その跡をたどりながら戻って行く。

 すると中身がない袋が一つ、中身が入っている袋が二つ視線の先に見えていた。

 その袋を囲うかのように、ウォーウルフが数匹囲っている。

(あの袋ってもしかして!? 急がないと!)

 エリシアは全力で走ろうとするが、まだ体力が戻った訳ではなく、足を引きずりながらも着実にウォーウルフ達に進んで行った。


 目の前に現れたエリシアを警戒するウォーウルフ達。

 しかし、次の瞬間、エリシアから投げられた草に過剰反応するウォーウルフ達であった。

(はぁはぁ…………ウォーウルフは鼻が良いから、アメル草には近づかないよね……お願いだから早く去って!)

 暫くエリシアと投げられたアメル草を睨んだウォーウルフ達は、せっかくの餌だが、アメル草の匂いに耐えられず、逃げて行った。

(良かった…………でも急がないと……! 袋を……)

 エリシアは袋の中身を確認する。

 一つは間違いなく自分の物だろう。

 つまり、二つの中身も人である可能性があるのだ。

 もしかしたら助けられるかも知れない。

 そう判断したエリシアは急いで袋を開けた。

「っ!? マリー!」

 一つ目の袋の中から現れたのは、自分を庇ってくれたメイドのマリーだった。

 しかし、彼女を袋から出そうとした時に見えた彼女の全身には、鞭で打たれた跡が残っており、あまりの悲惨さにエリシアは思わず涙を流してしまう。

(なんて酷いの……! 何度打たれたか分からないわ…………酷すぎる……)

 だが悲しむ暇はない。

 気を失っている全身傷だらけのマリーを袋から出さず、そのままアメル草が沢山あった木の根元まで運んだ。

(そう言えば、袋はもう一つあったわね。マリーも大切だけど、あの人も助けられるかも知れないわ)

 急いで、もう一つの袋を運ぶエリシア。

 すでに満身創痍のエリシアだったが、火事場の馬鹿力で運び終える事が出来た。

 急いでもう一つの袋を開けると、意外にも男性が一人入っていた。

(これは…………この人は死薬の症状だわ)

 それから周囲の薬草を集め、マリーの全身に薬草を塗った。

 次に男にアメル草を飲ませようとするが、このままではとてもじゃないけど、飲み込めないだろう。

 エリシアはアメル草を齧り、口の中で噛み砕く

 そして、倒れている男にアメル草を口移した。
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