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1話 転生者
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広い運動場のような場所で木剣を持って、白い稽古着を着た男二人が剣をぶつけ合う。
普通の人なら一秒で何回ぶつけ合える?
今の僕の答えは――――十回だ。
いやいや、速すぎだろ。いくらなんでも人間の体があんなにキビキビ動けるのが今だ凄いと思ってる。
そう言っている僕はというと、健全な成人の日本人――――と言いたいけど、今の僕の体は全然違う。
「ノア。父上がお呼びだ」
後ろを振り向くと、いつものしかめっ面で僕を見下ろしている兄上がいた。
「グレイ兄上。わかりました」
「ふん。一族の恥晒しめ。ようやくこの日が来たようだな」
「あはは……すいません…………」
兄から怒りを向けられながら、僕は父上が待っている執務室に向かった。
扉をノックすると中から「入れ」と厳格そうな低音の声が聞こえた。
「失礼します」
中に入ると、顔が皺だらけで常にムスっとしている僕の父上がいた。
「お呼びでしょうか。父上」
「…………お前も今日で十二歳となったな」
「はい。今日で十二歳となります」
つまり誕生日だ。
ただ、今まで誕生日を祝ってもらったことはないし、そういう雰囲気でもない。それにこれから言われることも知っている。
「成人となったお前を――――アスカジュー子爵家から追放する」
「かしこまりました。長い間、こんな不出来な息子を育ててくださりありがとうございます。これからアスカジュー家は名乗らず生きて参ります」
「…………」
冷たい瞳が僕に向く。
返事はない。でもこれでいいのだ。
父上に一礼して部屋を後にした。
「ふん。二度とその面を見せるな」
外で待ってましたと言わんばかりに兄上のグレイが言葉を投げかけて去って行った。
はあ……アスカジュー家の親も親なら子も子よな。
アスカジュー子爵。ミグニル王国の有力貴族の家であり、代々剣聖を輩出してきた家柄だ。
グレイは当然【剣聖】を授かっている。次男のフィリップも【剣士】を、四男のモリアも【剣士】だ。
アスカジュー子爵家の子供は全員が金髪で剣術に関する才能を授かる。
その中で唯一、三男である僕だけ剣術とは違う系統の才能を目覚めさせてしまったのだ。実は僕の才能は生まれた瞬間に覚醒してたりする。
部屋はこじんまりとしているが、息子ということもあって、まあまあ暮らしやすい部屋となっている。
旅支度のためにクローゼットを開くと、扉に付いている鏡に僕の姿が映った。
黒い髪と黒い目。僕は真っ当に父上と母上の子供なのに髪色と目の色が金色じゃない。その上に剣術才能もない。これが僕が家の恥晒しと呼ばれている所以だ。
服をいくつかリュックに入れて旅支度を終える。というのもいつでも家から出れるように準備していたのだ。
本来なら生まれた時点で【才能】を持つ僕は、その気になれば家を捨てて出ても問題なかった。ただ、成人していない年齢で外に出ても、最悪冒険者になって食いつなぐことも難しく、前世の感覚からも成人になるまでずっと待っていた。
家のメイドたちからですら白い目で見られていたから、僕は今日の日をずっと待っていた。
ひゃっほ~!
ごほん。家を出るまではまだ貴族らしく振る舞わなくちゃな。
最後だというのに、誰一人見送りにこない。アスカジュー子爵家らしいというかなんというか。
僕は待ちに待った十二歳――――異世界での成人となり、晴れてアスカジュー子爵家から無事に(?)追放されることができた。
普通の人なら一秒で何回ぶつけ合える?
今の僕の答えは――――十回だ。
いやいや、速すぎだろ。いくらなんでも人間の体があんなにキビキビ動けるのが今だ凄いと思ってる。
そう言っている僕はというと、健全な成人の日本人――――と言いたいけど、今の僕の体は全然違う。
「ノア。父上がお呼びだ」
後ろを振り向くと、いつものしかめっ面で僕を見下ろしている兄上がいた。
「グレイ兄上。わかりました」
「ふん。一族の恥晒しめ。ようやくこの日が来たようだな」
「あはは……すいません…………」
兄から怒りを向けられながら、僕は父上が待っている執務室に向かった。
扉をノックすると中から「入れ」と厳格そうな低音の声が聞こえた。
「失礼します」
中に入ると、顔が皺だらけで常にムスっとしている僕の父上がいた。
「お呼びでしょうか。父上」
「…………お前も今日で十二歳となったな」
「はい。今日で十二歳となります」
つまり誕生日だ。
ただ、今まで誕生日を祝ってもらったことはないし、そういう雰囲気でもない。それにこれから言われることも知っている。
「成人となったお前を――――アスカジュー子爵家から追放する」
「かしこまりました。長い間、こんな不出来な息子を育ててくださりありがとうございます。これからアスカジュー家は名乗らず生きて参ります」
「…………」
冷たい瞳が僕に向く。
返事はない。でもこれでいいのだ。
父上に一礼して部屋を後にした。
「ふん。二度とその面を見せるな」
外で待ってましたと言わんばかりに兄上のグレイが言葉を投げかけて去って行った。
はあ……アスカジュー家の親も親なら子も子よな。
アスカジュー子爵。ミグニル王国の有力貴族の家であり、代々剣聖を輩出してきた家柄だ。
グレイは当然【剣聖】を授かっている。次男のフィリップも【剣士】を、四男のモリアも【剣士】だ。
アスカジュー子爵家の子供は全員が金髪で剣術に関する才能を授かる。
その中で唯一、三男である僕だけ剣術とは違う系統の才能を目覚めさせてしまったのだ。実は僕の才能は生まれた瞬間に覚醒してたりする。
部屋はこじんまりとしているが、息子ということもあって、まあまあ暮らしやすい部屋となっている。
旅支度のためにクローゼットを開くと、扉に付いている鏡に僕の姿が映った。
黒い髪と黒い目。僕は真っ当に父上と母上の子供なのに髪色と目の色が金色じゃない。その上に剣術才能もない。これが僕が家の恥晒しと呼ばれている所以だ。
服をいくつかリュックに入れて旅支度を終える。というのもいつでも家から出れるように準備していたのだ。
本来なら生まれた時点で【才能】を持つ僕は、その気になれば家を捨てて出ても問題なかった。ただ、成人していない年齢で外に出ても、最悪冒険者になって食いつなぐことも難しく、前世の感覚からも成人になるまでずっと待っていた。
家のメイドたちからですら白い目で見られていたから、僕は今日の日をずっと待っていた。
ひゃっほ~!
ごほん。家を出るまではまだ貴族らしく振る舞わなくちゃな。
最後だというのに、誰一人見送りにこない。アスカジュー子爵家らしいというかなんというか。
僕は待ちに待った十二歳――――異世界での成人となり、晴れてアスカジュー子爵家から無事に(?)追放されることができた。
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