【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

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8話 森を抜けて

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 東を目指して森を歩く。僕の左手に伝わる暖かい感触は紛れもない本物だ。

 小さく鼻歌を歌い始めたセレナに合わせて、前を歩くポンちゃんがリズムよく尻尾を左右にふりふり動かす。

 ふたりとも、もう仲良しになってる。

 森に入って三日目で日が暮れそうな頃に、僕達はようやく森を抜けることができた。

「やっと抜けたあ~!」

 僕の手を握ったまま、セレナは左手を突き上げて、森の景色からの解放感を体に表した。

「やっとだね。森の生活も悪くないけど、やっぱり水浴びとかしたいしな」

「うんうん。私も速く水浴びがしたいかな?」

「その前にまず、お金の工面をしなくちゃいけないからね。コーンラビットって売れるのかな?」

「どうなんだろう?」

 セレナも知らないようで首を傾げた。

 綺麗な銀色の髪は森の生活でも乱れることなく美しいまま保たれていて、彼女の挙動によって揺れ動く。

 僕達を迎えてくれた景色は、広い緑の芝生が広がっている広大な平原で、少し高台になっているからとても見晴らしがいい。

 そしてその先に大きな街が見えた。

「あれがイデラ王国の玄関街と呼ばれるシーラー街だね」

「噂通りものすごく広いね~」

「真っすぐ向かおうか。あそこに着くころには夕方になってそうだから」

 僕達はまた歩き始めた。

 森から開けた場所に来て解放感があるため、また新鮮な感覚で歩くのが楽しい。

 前世でいえば、車やバス、電車なんてあったけど、異世界では主に馬車か調教された魔物に乗るくらいだ。だからこそテイマーという才能は貴重だったりする。

 平原は常に涼しい秋風が吹いており、おかげで汗ばむことなく夕方頃にはシーラー街に着くことができた。



 ◆



 シーラー街の城壁は見上げるくらい高い。大体八メートルくらいかな?

 僕達が育った街よりも高い壁をセレナと一緒に見上げた。

「高いね」

「うん」

 ちょっと珍しいものを見て、街の入口に入ろうとした。

「止まれ」

 衛兵さんに止められた。

「こんばんは~」

 不思議と挨拶も日本と同じく「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」の三種類だったりする。

「住民の証は?」

「ごめんなさい。僕達隣国から来た旅人なんです」

「それなら通行料を払わないと入れない。一人大銅貨一枚ずつになる。従魔も適応される」

「うっ……ごめんなさい。今は手持ちがなくて、このコーンラビットって売れますかね?」

 リュックに入れた血抜きしたコーンラビットを見せる。

「冒険者だったのか?」

「まだ冒険者にはなっていません。コーンラビットが売りたいのでそういう情報を聞きたかったんです」

「ふむ。それなら通行料は延滞させることができる。それを今日中に払えば問題ないが、もし今日中に払えないと不法侵入となる。それと君が持っているコーンラビットは高値で売れるはずだ。一匹大銅貨一枚はするだろう。それを冒険者ギルドに持っていけば、冒険者じゃなくても買い取ってくれるはずだ」

「ありがとうございます! それでいきます!」

「分かった。ではこの板を持っていけ。三人一組で一つだ」

 そう言いながら衛兵さんは僕に五センチくらいの細めの白い棒を渡してくれた。

「無くしたら罰金で銀貨一枚になるので気を付けるように」

「はい! 通行料はすぐに払いに来ますから!」

 セレナと一緒に衛兵さんに深く頭を下げて、僕達は初めてのシーラー街に入って行った。
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