【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

文字の大きさ
11 / 62

10話 宿屋ホワイトテール

しおりを挟む
「ここが宿屋【ホワイトテール】みたいだね」

 入口の脇の看板に宿屋を表すお家みたいな形の看板に、白い馬の尻尾が描かれている。

 ここが衛兵さんが教えてくれたおすすめの宿屋だ。

 中に入るとすぐに「いらっしゃいませ~!」と看板娘さんが元気よく出迎えてくれた。

「こんばんは」

 すっかり日が沈んで夕方になってしまった。

「あら、カップルさんですね」

「違います!」

「えっ?」

「あら?」

 思わず反論してしまったけど、僕はセレナとの婚約が破棄された身だ。変な誤解を受けてしまうと彼女が可哀想だからね。

「え、えっと、部屋はいかがなさいますか?」

 営業スマイルの看板娘さん。

「個室を二つお願いします」

 看板娘さんがちらっとセレナを覗いてから台帳を覗き始めた。

「…………」

「…………」

「あ~! ごめんなさい! 残念ながら個室は全部埋まってまして、二人部屋が一つしか空いてないですね~この部屋も人気なのですぐに埋まってしまう可能性がありますがいかがなさいますか?」

「っ…………」

 これは参った……。誰かに変な誤解をさせてしまったらどうしよう……。

「の、ノア? もう夜も遅いし……野宿じゃなくて……できれば部屋で泊まりたい……かな……って……」

「そ、そうだな」

 令嬢として暖かい部屋で生活してきたセレナにとって、森での三日間の生活はしんどいものだったに違いない。

 なのに僕はそれにも気づかず、変なことで戸惑ってしまった。

「その部屋でお願いします。いくらですか?」

「料金は前払いで、一泊大銅貨五枚になります」

 前世の感覚だと一泊五千円換算だ。食費から見ると宿泊費はリーズナブルだ。

「はい。三日分払います。その、個室が二つ空いたらそちらに移動したいのでお願いします」

「分かりました! ですが、うちって冒険者さんがよく泊まるので長期滞在が多いんです~もしかしたら空かないかも知れません~」

「そ、そうですか。分かりました」

「朝食も夕飯も一階の食堂で、宿泊のお客様には格安で提供しています。ぜひご利用ください。ではこちらの三〇三号室になります。ごゆっくり~」

 鍵を受け取り、階段を上がり三〇三号室に入った。

 中はゴミ一つ見当たらない清潔な部屋だった。衛兵さんにおすすめされただけあって、とても良い宿屋だと分かる。

 僕達がちゃんと約束を守ったから、親切に教えてもらえたのだ。

「あ、あの! ノア!」

「うん?」

「しゃ、シャワー……浴びてくる……ね?」

「ああ。いってらっしゃい」

 セレナはコーンラビットがたくさん入ったリュックを置いて、もう一つの旅用鞄を持ってシャワー室に入っていった。

 この世界では魔法と魔道具が発達していて、意外にもシャワーを浴びれたりするし、お湯が使えるので意外にもいい生活を送れたりする。

 少しすると水が流れる音が聞こえた。

 その間に僕は準備を進める。

 部屋の中で焼肉を作ってもいいのだろうか? 一秒クッキングは料理を一秒で終わらせるスキルなので、完成した料理はもちろん通常通り香りが立つ。

 持ち込み禁止とは言われていないし問題ないか。

 皿を取り出して、部屋に付いている洗面台のところで皿を洗う。

 その後、テーブルに乗せてコーンラビットを取り出す。

 全部で七匹。今日の夕飯で、僕が一匹、ポンちゃんが二匹、セレナが四匹ってところだ。

 シャワー室から出て来たセレナは寝間着のまま、少し恥ずかしそうに出てきた。

「おかえり。食事にしようか」

「う、うん……」

 やっぱり、元気がない。お腹が空いたら我慢せずに言うようにと伝えているのに、ずっと我慢していたみたいだ。

「セレナ? お腹空いたらちゃんと言ってね?」

「…………」

 彼女は小さく頷いてテーブルに座った。

 早速コーンラビットを【一秒クッキング】で焼肉に変換させると、焼肉の美味しそうな匂いが部屋中に充満した。

「いただきます」「いただきます……」

『食べるニャ~!』

 僕達はシーラー街に着いて初めての食事を堪能した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」 探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。 探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼! 単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。 そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。 小さな彼女には秘密があった。 彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。 魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。 そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。 たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。 実は彼女は人間ではなく――その正体は。 チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。

『ひまりのスローライフ便り 〜異世界でもふもふに囲まれて〜』

チャチャ
ファンタジー
孤児院育ちの23歳女子・葛西ひまりは、ある日、不思議な本に導かれて異世界へ。 そこでは、アレルギー体質がウソのように治り、もふもふたちとふれあえる夢の生活が待っていた! 畑と料理、ちょっと不思議な魔法とあったかい人々——のんびりスローな新しい毎日が、今始まる。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

処理中です...