18 / 62
17話 母娘の事情
しおりを挟む
「おかえりなさい~あら?」
僕達が宿屋に戻ると、看板娘が首を傾げてこちらを見つめた。
「すいません。一つお願いがあるんですが、こちらの母娘を部屋に上げても問題ありませんか?」
「それは問題ありません。部屋の料金はちゃんと頂いていますので」
「ありがとうございます。それと、この籠を少しの間、どこかに保管して頂けませんか?」
「わあ~コーンラビットがたくさん入ってますね。構いませんよ。こちらの倉庫にどうぞ」
「ありがとうございます」
看板娘の厚意により、コーンラビットが入った籠を倉庫に預けて、そのまま僕達が借りている部屋に入った。もちろん、ミレイちゃんとそのお母さんを連れて。
部屋に入ってすぐに二人にはシャワー室に向かってもらい、その間にセレナが二人の洋服を洗濯する。
この世界の洗濯機は不思議なものになっていて、魔石をセットすると水がぐるぐる回って洗濯する大きなタライになっている。不思議と水がこぼれたりはしない。
洗濯が終わったら、今度は隣にある扇風機の形をした魔道具の前に干して魔石をセットすると、熱風が出て目の前の洗濯物を乾かしてくれる。
魔石もわりとどこでも売っていて、一回用の魔石は銅貨一枚で買えたりする。一回で洗濯と乾燥できる量は少ないけど、手洗いよりはずっとずっと楽でいい。
セレナが洗濯を終えて部屋に持ってくると、僕とポンちゃんは外に出た。
暫く待っている間、ポンちゃんをもふもふしながら扉の前で待つ。
『くふふふ~くすぐったいニャ~』
それにしてもポンちゃんってイヌ科なのに、語尾に『ニャ』を付ける違和感も随分と慣れてきたな。普通『ニャ』って猫じゃないか? これもまた異世界の不思議なのかもしれない。
ポンちゃんと遊んでいると、扉が開いてセレナが呼んだ。
中に入るとすっかり綺麗になった母娘が僕に頭を下げた。
部屋にあるテーブルを囲い、話し合いを始める。
「この度は親切にしてくださって、本当にありがとうございます」
もう何度目か分からない感謝を口にする母親。
「では自己紹介といきましょう。僕はノア。こちらはセレナ。こちらはポンちゃんです」
「私はライラと申します。娘のミレイです」
ライラさんにミレイちゃん。顔立ちも似てて母娘なのは間違いなさそうだ。
「さっき、魔法がどうこうと話したんでしたが、詳しく聞いても?」
母親の顔色が変わる。それもそうで、実は獣人族は魔法が使えないはずだ。
この世界で魔法を使える種族は【上位種】と呼ばれたりする。人族は全員ではないがごく少数の人が魔法を使えたり、中には強力な魔法が使える【賢者】が生まれたりするから、世界でも最も繁栄していると言っても過言ではない。
他にも種族全員が魔法を使えるエルフ族やダークエルフ族はまさに【上位種】の代表のようなものだ。
その中でも、獣人族だけは魔法が使えない【劣等種】として迫害を受けていたりするが、獣人族が大きく栄えることができたのは、獣人族だけが使える特殊な力【獣神化】により凄まじい力を発揮できるからだ。
と、各種族の間にはそんな差があるが、問題は獣人族の中に魔法が使える獣人がいるということだ。
ミレイちゃんは口を滑らしてしまって、魔法という言葉を話した。僕が気になったのはそれだ。
ミレイちゃんがライラさんを見つめて、首を縦に振った。
「分かりました。お話しします………………実は我々獣人族の中でも稀に魔法が使える者が現れます。その者を…………忌み子と呼びます」
「忌み子……」
「魔法が使える者は全員……国外追放となります。娘も例外ではありませんでした」
「そんな!」
過剰に反応するセレナ。きっと彼女達に僕達を重ねていたのかもしれない。
「私達が追放となったその日、目の前で【風渡り】が起きて、娘がそこに放り出されてしまいました。私は……まだ幼い娘を一人にしたくなくて一緒に飛び込んでしまったんです。気が付けば森の中にいて、数か月前にこちらの街に辿り着きました。そこからこのようなことになってしまったんです」
「どうして魔法が使えるだけで追放されるんでしょうか?」
「私達獣人族は多くが魔法によって命を失いました。魔法は獣人族にとって恐怖の象徴です。魔法が使える者は災厄を呼ひ、追放する習わしなんです……」
その種族によってルールが違うことは知っている。僕の家も一見華やかに見えるかも知れないが、剣術を磨くことを強制され、剣士の才能がなければ追放される。それと大きく変わらないのかもしれない。
「ということは、このまま獣人族の国に戻る方法もないと……」
ライラさんが頷いた。
だからずっとこの街に留まっていたんだ。本来なら何が何でも故郷を目指すはずなのにそうしなかった理由。やっと僕が感じていた違和感がなくなった。
しかし、それが分かったからと言って、何か解決したわけではない。むしろ、彼女達がこの先、救われる道がないのは言うまでもない。
その時、何かをずっと考え込んで目を瞑っていたセレナが目を開いて、ミレイちゃんに声を掛ける。
「ねえ、ミレイちゃん。使える魔法ってどういう魔法なの?」
僕達は全員彼女達に注目した。
僕達が宿屋に戻ると、看板娘が首を傾げてこちらを見つめた。
「すいません。一つお願いがあるんですが、こちらの母娘を部屋に上げても問題ありませんか?」
「それは問題ありません。部屋の料金はちゃんと頂いていますので」
「ありがとうございます。それと、この籠を少しの間、どこかに保管して頂けませんか?」
「わあ~コーンラビットがたくさん入ってますね。構いませんよ。こちらの倉庫にどうぞ」
「ありがとうございます」
看板娘の厚意により、コーンラビットが入った籠を倉庫に預けて、そのまま僕達が借りている部屋に入った。もちろん、ミレイちゃんとそのお母さんを連れて。
部屋に入ってすぐに二人にはシャワー室に向かってもらい、その間にセレナが二人の洋服を洗濯する。
この世界の洗濯機は不思議なものになっていて、魔石をセットすると水がぐるぐる回って洗濯する大きなタライになっている。不思議と水がこぼれたりはしない。
洗濯が終わったら、今度は隣にある扇風機の形をした魔道具の前に干して魔石をセットすると、熱風が出て目の前の洗濯物を乾かしてくれる。
魔石もわりとどこでも売っていて、一回用の魔石は銅貨一枚で買えたりする。一回で洗濯と乾燥できる量は少ないけど、手洗いよりはずっとずっと楽でいい。
セレナが洗濯を終えて部屋に持ってくると、僕とポンちゃんは外に出た。
暫く待っている間、ポンちゃんをもふもふしながら扉の前で待つ。
『くふふふ~くすぐったいニャ~』
それにしてもポンちゃんってイヌ科なのに、語尾に『ニャ』を付ける違和感も随分と慣れてきたな。普通『ニャ』って猫じゃないか? これもまた異世界の不思議なのかもしれない。
ポンちゃんと遊んでいると、扉が開いてセレナが呼んだ。
中に入るとすっかり綺麗になった母娘が僕に頭を下げた。
部屋にあるテーブルを囲い、話し合いを始める。
「この度は親切にしてくださって、本当にありがとうございます」
もう何度目か分からない感謝を口にする母親。
「では自己紹介といきましょう。僕はノア。こちらはセレナ。こちらはポンちゃんです」
「私はライラと申します。娘のミレイです」
ライラさんにミレイちゃん。顔立ちも似てて母娘なのは間違いなさそうだ。
「さっき、魔法がどうこうと話したんでしたが、詳しく聞いても?」
母親の顔色が変わる。それもそうで、実は獣人族は魔法が使えないはずだ。
この世界で魔法を使える種族は【上位種】と呼ばれたりする。人族は全員ではないがごく少数の人が魔法を使えたり、中には強力な魔法が使える【賢者】が生まれたりするから、世界でも最も繁栄していると言っても過言ではない。
他にも種族全員が魔法を使えるエルフ族やダークエルフ族はまさに【上位種】の代表のようなものだ。
その中でも、獣人族だけは魔法が使えない【劣等種】として迫害を受けていたりするが、獣人族が大きく栄えることができたのは、獣人族だけが使える特殊な力【獣神化】により凄まじい力を発揮できるからだ。
と、各種族の間にはそんな差があるが、問題は獣人族の中に魔法が使える獣人がいるということだ。
ミレイちゃんは口を滑らしてしまって、魔法という言葉を話した。僕が気になったのはそれだ。
ミレイちゃんがライラさんを見つめて、首を縦に振った。
「分かりました。お話しします………………実は我々獣人族の中でも稀に魔法が使える者が現れます。その者を…………忌み子と呼びます」
「忌み子……」
「魔法が使える者は全員……国外追放となります。娘も例外ではありませんでした」
「そんな!」
過剰に反応するセレナ。きっと彼女達に僕達を重ねていたのかもしれない。
「私達が追放となったその日、目の前で【風渡り】が起きて、娘がそこに放り出されてしまいました。私は……まだ幼い娘を一人にしたくなくて一緒に飛び込んでしまったんです。気が付けば森の中にいて、数か月前にこちらの街に辿り着きました。そこからこのようなことになってしまったんです」
「どうして魔法が使えるだけで追放されるんでしょうか?」
「私達獣人族は多くが魔法によって命を失いました。魔法は獣人族にとって恐怖の象徴です。魔法が使える者は災厄を呼ひ、追放する習わしなんです……」
その種族によってルールが違うことは知っている。僕の家も一見華やかに見えるかも知れないが、剣術を磨くことを強制され、剣士の才能がなければ追放される。それと大きく変わらないのかもしれない。
「ということは、このまま獣人族の国に戻る方法もないと……」
ライラさんが頷いた。
だからずっとこの街に留まっていたんだ。本来なら何が何でも故郷を目指すはずなのにそうしなかった理由。やっと僕が感じていた違和感がなくなった。
しかし、それが分かったからと言って、何か解決したわけではない。むしろ、彼女達がこの先、救われる道がないのは言うまでもない。
その時、何かをずっと考え込んで目を瞑っていたセレナが目を開いて、ミレイちゃんに声を掛ける。
「ねえ、ミレイちゃん。使える魔法ってどういう魔法なの?」
僕達は全員彼女達に注目した。
36
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
七億円当たったので異世界買ってみた!
コンビニ
ファンタジー
三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。
ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。
「異世界を買ってみないか?」
そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。
でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。
一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。
異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~
うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」
探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。
探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼!
単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。
そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。
小さな彼女には秘密があった。
彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。
魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。
そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。
たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。
実は彼女は人間ではなく――その正体は。
チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。
『ひまりのスローライフ便り 〜異世界でもふもふに囲まれて〜』
チャチャ
ファンタジー
孤児院育ちの23歳女子・葛西ひまりは、ある日、不思議な本に導かれて異世界へ。
そこでは、アレルギー体質がウソのように治り、もふもふたちとふれあえる夢の生活が待っていた!
畑と料理、ちょっと不思議な魔法とあったかい人々——のんびりスローな新しい毎日が、今始まる。
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる