【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

文字の大きさ
30 / 62

29話 僕達のお店が目指す場所

しおりを挟む
 たれ焼肉は匂いが強烈だ。森の中だと気づかなかったけど、街の中だと大通りまで匂いが運ばれているようだ。

 その匂いに釣られてやってきたお客様も多く、遠くから見るだけの人も多かった。

 そもそもたれ焼肉は銅貨十枚もするので、異世界ではかなりの高額商品だ。中々手が出せない人も多いはずだ。

 もっと値段を下げても問題ないので、いずれは価格調整をしてもいいかも知れない。屋台【自由の翼】の理念は、腹いっぱい食べてもらいたいから。

 そんな中、僕達を遠くから羨望の眼差しで見つめる集団がいた。

「お兄ちゃん~」

 僕の後ろで食べ終わった食器を水魔法で洗っているミレイちゃんが声を掛けてきた。

 彼女は空中で水玉を作り、そこに食器を入れて洗っている。それを外にも見えるようにやっているので、見る人によっては芸に見えるかも知れない。

「どうしたんだい?」

「向こうからこちらを見ている子供達が沢山いますよ~」

 ミレイちゃんが指差す場所には、二十人くらいのボロボロ衣服で小汚い子供達が遠くからこちらを見つめていた。さっきからこちらを見つめていた集団だ。

「どうしますか?」

「もちろん――――ミレイちゃんに任せるよ」

「かしこっ~!」

 可愛らしく手のひらを見せながら敬礼するミレイちゃん。

 やっぱりこのポーズ癖になっているな。もう公式ポーズでいいかも知れない。

 真っすぐセレナに向かってミレイちゃんが何かを伝えると、二人で屋台の裏側・・に向かった。

 すぐに簡易的な木箱テーブルと木箱椅子を並べる。

 完成してすぐにミレイちゃんが子供達の集団に向かった。

「いらっしゃいませ~屋台【自由の翼】です!」

「あ、あの……ごめんなさい。僕達客じゃないです……」

「それは残念……」

 当然のことだけど、うちの屋台の匂いに釣られてきた人は多くいるが、その半数はミレイちゃんとライラさんを見ては、帰っていった。獣人族だからだ。

 でも彼らはミレイちゃんに対してそういう・・・・素振りは見せない。

 その時、集まっていた子供達から勢いよくお腹の音が鳴り響く。こういうのって不思議と連鎖するからみんな同時になるよね。

「ふふっ。お腹空いてるじゃないですか」

「は、はい……でも僕達お金がなくて…………」

「それなら――――実はここだけの話、いま試食会をしてまして、とっても格安で食べることができるんです。ただ、食堂じゃなくて裏の試食場になりますけども」

「!! ほ、本当に食べられるんですか!?」

「もちろんですよ~」

 ミレイちゃんが天使のような笑顔を浮かべる。猫耳がピクピクと動くところも可愛らしい。

「あっ! でもごめんなさい。一応商品なので料金がかかってしまうんです。お一人――――――小銅貨一枚もしくはそれ相当の素材で食べれます!」

 流暢りゅうちょうに説明を終えると、みんながそれぞれ顔を合わせて目を大きく見開いて驚いた。

「こ、小銅貨ございます! 全員分ございます!」

「はいっ! こちらにどうぞ!」

 ミレイちゃんの案内を受けて屋台の裏側、厳密に言うと厨房の裏側に設置した木の箱のテーブルと椅子に彼らを案内した。

 男の子十人、女の子十人か。

 先にプレートを二十個並べて待つことにする。食堂の方が既に満員なので、追加注文が届くのは少し先になりそうだ。

 プレートを並べ終えるとセレナがやってきた。

「初めてのお客様・・・だね~」

「そうだな」

 セレナが言うお客様は食堂のお客様のことではない。厨房の裏側にいる子供達のことだ。

「お兄ちゃん~注文入りました~!」

 ミレイちゃんが元気よく声を上げてやってきた。手には注文用紙を四枚も持っている。

 それから注文通りのたれ焼肉を二十人前と、パン六十個を作る。

 次々と完成したたれ焼肉が乗ったプレートを、セレナとミレイちゃんが手際よく運び始めた。

 全て運び終えて、厨房の裏側から大きな声で「いただきます!」と子供達の声が聞こえてくる。

 お腹が空いていただろうに、全員分揃うまで誰も食べなかったようだ。

 それからすぐに「美味しい~!」という声が鳴り響く。

 中には泣き出す子までいて、ちょっぴり胸が苦しくなった。

 異世界は前世よりも弱肉強食の世界。彼らのような貧困層を救ってくれる国はそういない。この街で少ない方らしいけど、現に二十人もの子供達がいる。

 僕は彼らを救うなんて大それたことを言うつもりはない。

 ただ……一食だけでもいいから、腹いっぱいに美味しいものを食べられる場所を作りたかった。

 無料での提供は他のお客様に失礼に当たる。だからセレナ達と数時間に及ぶ会議の末、貧困層には格安で食べれる・・・・・・・作戦を思いついた。

 名目として、彼らはあくまで料理の試食会ということにしている。

 テーブルや椅子も通常のものではなく、あくまで余っている木箱テーブルと木箱椅子だ。といっても実はこれも特注で作ってもらった立派なテーブルと椅子だけどね。

 食事が終わったようで、今度はミレイちゃんがアンケート調査を行う。

 アンケート内容は「味に満足したか」「量に満足したか」「食べる前にワクワクしたか」など、とても重要・・・・・なアンケートだ。

 最後にアンケート調査に協力してくださったお客様達に――――籠いっぱいのパンをプレゼントした。

「「「ご馳走様でした!」」」

 子供達が僕の前で大きく挨拶をしてくれる。

 中には少し目元が赤く腫れてる子もいるけど、みんな笑顔を見せてくれた。

「ご利用、ご協力ありがとうございました」

 僕も彼らに感謝を伝えた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...