【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

文字の大きさ
31 / 62

閑話 お給金(セレナ視点)

しおりを挟む
 ◇セレナ視点◇

「ノア~今日もみんな来てくれたよ~」

 私の言葉に、すごく嬉しそうに笑顔を浮かべる彼。

 彼が笑う時って、自分が作った料理を誰かに食べて貰える時だ。

 何度も作ってくれた焼肉を食べる私を見て、いつもニコニコと笑みを浮かべて見守る。

 最近は貧困民の子供達が毎日昼食を食べに来てくれる。二十人とも最初の頃とは違って表情がとても明るい。

 アンケートに協力してくれたら小銅貨一枚。でも対象はあくまで私達の中の誰かが選んだ人だけ。

 ノアの想いから貧困民や孤児など、困っている人達が対象だ。もちろん、子供だけでなく、働けなくなった人や身寄りがなくなった老人も対象になったりする。

 そんなノアが夢見た【自由の翼】は、まだミレイちゃんとライラさんを快く思わない人達はいるけど、匂いに釣られて連日満員だからか、毎日凄い額を稼いでいる。



 初日が終わった日の出来事だった。

「「「乾杯~!」」」

 宿屋ホワイトテールで、私達はテーブルを囲って美味しそうな料理を並べて乾杯をした。

 ホワイトテール自慢の果実水も料理もとても美味しい。

「今日のお客様。数百人もいて、ものすごく稼ぐことができたよ」

「これもノアの料理が美味しいからだね!」

 たれ焼肉は大好評で列に並んだお客様達はずっと食堂を見つめていた。

 私が知っている中でも、このたれ焼肉を超える料理は食べたことがない。ホワイトテールのご飯も美味しいけど、やっぱりノアの料理には勝てない。

「では、先にこれを渡しておくよ」

 そう言いながら私達の前に、それぞれ大銅貨十枚と銀貨二枚を出した。

「ノアさん? これはなんですか?」

「なにって、みんなのお給金だよ?」

「「「お給金?」」」

 私達が首をかしげると、ノアが大きな溜息を吐いた。

「いやいや、君達。ちゃんと働いているんだからお給金を貰って当然でしょう? 貰えないとでも思ってたの?」

「あ、あの……! ノアさん。これは頂けません。娘の分もです」

 すぐにライラさんがお金を押し返して、ミレイちゃんもそれを真似て押し返した。

「私達は食事を頂けるだけで十分です!」

「ライラさん。それとこれは別です。僕のお店で働いてくれる人には賄い・・を出しているだけなので、お給金に含まれていると思ってください。このお金はみなさんが働いた報酬です。ちゃんと貰ってくれないと困ります」

「ノア……? 私も貰えないかな……」

「セレナ……」

 悲しい表情を浮かべたノアに、私の気持ちをちゃんと伝える。

「ご飯ってお金を出せば買えるかも知れない。でも私は大食いで、いつもノアにご飯を作って貰ってて、でもそれが当たり前じゃないと知ってるから。私にそれ相応の支払える能力はないけど、せめてノアのために働きたいの。だから報酬は貰えない」

「それは誤解だ。セレナ。そもそも僕がセレナから貰ってるものも多い。セレナが気づいていないだけで、僕は多くを貰ってる。いつも僕が作るご飯は、セレナのためでもありながら、僕のためでもあるんだ。だから屋台のお仕事は別。ライラさんもミレイちゃんも」

 ノアはお給金を再度私達の下に押してきた。

「みんな。よく聞いて欲しい。僕達は【自由の翼】の仲間なんだ。仲間というのはお互いが背中を合わせて生きていくものだと思う。みんなが言ってるように僕はご飯が作れる。でも僕だけじゃ無理なんだ。セレナが狩りをしてくれて、ミレイちゃんが皿を洗ってくれて、ライラさんがお客様を案内してくれて、ポンちゃんが店を守ってくれて、みんながいるから【自由の翼】なんだ。だから僕達は対等であり、一人もかけてはならない。このお給金はみんなが貰うべきお金。ちゃんと自分のために使って欲しいんだ」

 そして、ノアは【簡易収納】から三つの袋を取り出した。

 チェーンが付いている財布だ。

 私には赤色の財布を、ミレイちゃんには水色の財布を、ライラさんには緑色の財布をくれた。

「これからお金がいっぱいになるから、ちゃんと財布を持っていないとね」

 本当はお給金なんていらない。ノアの隣にいるだけで感謝だと思っていたけど、ノアの想いを受け止めるのも仲間として…………うん。仲間として必要なものだと思った。

「分かった。お給金、ちゃんと貰うね?」

「ああ。ぜひ貰ってくれ」

 私が受け取ると、ライラさんも少し辛そうな顔でお給金と財布を受け取ってくれた。

「ノア? 一つ確認するけど、お給金は自由に使っていいんだよね?」

「もちろんだよ。それはもう僕のお金じゃないからね。僕の顔色なんて伺う必要もないし、みんなの頑張りに対する報酬だから」

「分かった」

 そう話すと本当に嬉しそうに笑ってくれた。

 いつだってそう。ノアは何もかもが私よりも上手くて、考え方も私では考えも付かないことを考えてくれる。

 ほんの少しだけ、私がノアの隣に立っていいのかなと心配になった。

 ノアに貰ってばかり…………私が彼にしてあげられることは何があるのか……その日から大きな悩みが増えた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」 探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。 探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼! 単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。 そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。 小さな彼女には秘密があった。 彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。 魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。 そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。 たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。 実は彼女は人間ではなく――その正体は。 チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。

『ひまりのスローライフ便り 〜異世界でもふもふに囲まれて〜』

チャチャ
ファンタジー
孤児院育ちの23歳女子・葛西ひまりは、ある日、不思議な本に導かれて異世界へ。 そこでは、アレルギー体質がウソのように治り、もふもふたちとふれあえる夢の生活が待っていた! 畑と料理、ちょっと不思議な魔法とあったかい人々——のんびりスローな新しい毎日が、今始まる。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

処理中です...