破滅のアダムとイヴ 〜Sランクと記憶喪失と東京と〜

新進真

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承『記憶喪失の《討伐者》』

第44話 囚人

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 で、特に夢も何も見なかった。まぁいい、ゆっくり思い出す。思い出そうとしていても駄目なら、気ままに生きてみるしかない。その過程で思い出せばいい。

 今日はまたセルバー村に向かう。古城のある丘に行きたい。世界を見渡したい。まぁ、リバイル村でやることはない。
 そういや皆武器や装備を揃えたらしい、リバイル村の森の中に隠してあるらしい。俺の装備もあるはずだし、後で寄っておかなければ。

「スカイさん、よかればルカも連れてて?」

 一緒に行きたいのか、多分そう言っている。独りになりたいが、断るのも彼女に申し訳ない。
結局2人でセルバー村の丘に向かった。

「花畑はねぇけど、いい景色やね」

 古城は薄汚いが、丘は綺麗だ。素晴らしい景色を前にすると、人間は何も言えなくなる。彼女は慣れているのか、感想を発しているが、俺は何も声が出せない。感受性が豊か……ということにしておこう。

 丘をそよ風がなびく。やさしい風が俺とルカを包むように吹く。この丘からはセルバー村もリバイル村も見える。汗水垂らして仕事に励む様子が、全部ここから見える。

 世界は広いが、ここに立つと世界全体を見渡している神になった気分になれる。

「いい気分やね、スカイさん。ここにおると眠ってしまいそやわ」

 彼女は笑顔のまま、草原に大の字になって眠りについた。気持ちよさそうに寝ている。

 そういや、最近は記憶を思い出そうという所ばかり必死になって、上手く寝れていない気がする。寝ても寝ても、身体は疲れるばかり。今なら何も気にせず寝れるな。

 大の字になって寝ているルカの横で、俺も横になった。寝れなくても、身体を休めればそれでいい。睡眠不足は、全ての敵だ。

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 ドカーン! と、大きな爆発音が轟き渡る。俺の前にあった鉄格子は何者かによって開けられた。

「施設内で火災が発生した、ここから第三地区まで退避しろ」

 言葉通りに、その係員らしき男の顔面を3発ほど殴り首を絞め、気絶させたことを確認してから第三地区の方面へ向かった。

 ここは強制労働所か、それにしては前回見た場所とは違う。前回よりは飯も毛布もある。
強制労働所にしては何かがおかしいと思ったが、火災が発生しているならここから逃げなければならない。あわよくば、この牢獄らしき場所からも逃げ出せればいいな。

「そこの囚人、止まれ! 第三地区は第A棟の庭にあるぞ!」

 声をかけてくれた別の係員の元に向かい、注意を受けた。ここはどういう施設か分からない今、とりあえず目の前の係員の顔面を蹴り上げ、頭から地面に叩き落とす。
 グギッという鈍い音が鳴ったのを確認して、係員の服を漁った。服の中からは、片手で持てるくらいだが少し重い、小さな黒い物体が出てきた。これを武器として使っていこうと考え、第三地区とは真逆の方向に向かった。

「第三地区は向こうだ!」と叫ぶ者には顔面に一発拳を入れた。

「止まれ、止まらないと撃つぞ」と叫ぶ輩には、飛び蹴りを顔面に食らわせた。

 ある程度廊下を進むと、係員らしき男は居なくなっていた。邪魔がいない、これは逃げ出せる。しかし、この施設は迷宮みたいだ。廊下をどれだけ進んでも、元いた廊下に辿り着く。ややこしいな、これでは一生出口に行けないな。

「お前は……何者だ」

 廊下を進んだ先に、ある男が立っていた。先まで倒してきた係員とは違う服装、どちらかといえば俺と同じように、質素な格好をしている。

「俺は、ここから出たいだけだ」

 何者かと聞かれているが、本当の名前が分からない。名乗る者でもない、だから目的だけを伝えておく。もしかしたら彼もここから出たいのかもしれない。ならば協力……とまでは行かなくとも、何か有力な情報を……。

「お前には興味が無い、先生を出せればそれでいい」

 目の前の男は何かを口走った後、突然光り始めた。白い光が男から放たれている。人間が発光している、何か魔法でも使ったのか? 有り得ないことが、目の前で起きている。
 やがて、光を纏った男は炎を噴き始めた。ドラゴンのように、口から大量の炎をだす。

 まずい、逃げなければ。
 急いで男とは逆の方へ走ろうとしたが、後ろにもまた別の男がいた。その男も白く発光し、炎を噴き始めた。

 逃げ場がない。前からも後ろからも炎が来ている。炎に囲まれた。横には道がない、壁を突き破るのも困難だ。

「死ね、ここで消えてしまえ」

 俺の身体が炎に巻かれる。熱い、火傷なんて比じゃない。直接炎に炙られている。皮膚は爛れ、筋肉も燃え尽き、神経を直接焼かれている感覚だ。だが、意識は途絶えない。
 目も開けられず、何が起きているかも分からない。耳も焼けきったはず、何も聞こえないし何も見えないのに、感覚は残っている。終わらない。終わらない。終わらない。

 でも、何かが聞こえ始めた。

 大きな爆発音みたいな音が。

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「爆発だ」
 俺は目覚めた。それに記憶を思い出した。それに……震えていた。

 さらに無意識のうちに、俺は寝ていたルカの腕を掴んでいた。怖かったのか、力を入れて強く握っていた。

「スカイさん、めちゃ顔色悪いですよ。どうしたで……」

 彼女は怯えながらも俺に声をかけた。が、急に前が真っ暗になった。気絶したんじゃない。空が暗くなった。
 見上げると、真上に大量のドラゴンがいた。塔にいたあのドラゴンだ。

「世界の終わりや……スカイさん逃げま……」
 ルカはとても怯えている。

 俺はそのドラゴンたちに、向こうの森に行くように伝えてから、馬で森に向かった。彼女はずっと怯えていたが、まだ話せない。今話したら全てが台無しになる気がして。

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