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承『記憶喪失の《討伐者》』
第45話 強制労働所
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馬に乗って、森へ向かった。セルバー村で暮らす村人は、皆空を覆い尽くすドラゴンに脅えている。
「この世の終わりじゃ」
「命が助かりますように」
「まさに劇終だ」
奴らがこの村を襲いに来た訳ではないはずだ。俺の「用件があるなら、森に行ってほしい」という言葉通りに、奴らは森に向かった。襲う意思があるなら、もう既にセルバー村もリバイル村も燃え尽きているはず。
ルカをリバイル村で降ろし、森に向かった。森には大量のドラゴンと、ガイアさんやキミカ、シアンもいた。俺が到着してからすぐに、ヘイトリッドもロックも駆けつけた。
「人間を助ける訳ではないが、知らせなければと、遠くの地から遥々飛んで来た」
赤いリーダー格のドラゴンは俺たちに何があったのかを伝えた。
「我々の暮らす塔の近くで爆発が起きた。我々の仲間が爆心地を覗きに行くと、謎の煙に覆われてバタバタと倒れていった。周りに生息していたゴブリンも、気が変わったかのように森を燃やし始めた」
奇妙な現象が起きているというのは、話を聞くだけでも分かる。煙を吸ったドラゴンは倒れ、モンスターは……洗脳されているのか?森を燃やし始めるという行為を取ったということは。
「その煙は消えたが、他のゴブリンは未だに森を燃やしている。村を襲おうとしている者もいた。これは何かがおかしい。また、近くに”世界の帝王”を名乗る人物が、空中に浮かび上がり、何かを喋っていた」
なるほど、やはり洗脳か。
マキシミが言っていた、世界の帝王とやらか。ゴブリンを洗脳して、次は何をするつもりだ。しかも、空中に浮かび上がりって……普通の人間ではありえない動きをしている。人智を超えた生命体にでも進化したか?
「人間を助ける訳ではないが、我々モンスターの存在を脅かす存在は許せない。我々も協力する、だから協----」
「やりましょう、世界の帝王という悪を倒すために」
俺は無意識のうちにそう発していた。
本能から世界の帝王を許せないと感じた。利害の一致、何をしでかすか分からない悪を成敗してやろう。
「了解した。我々の背中であの場まで運ぼう。もうすぐに出発できるな?」
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ここにいる人たち。シアン、キミカ、ガイアさん、ロック、ヘイトリッド、俺。
ここにいるモンスターたち。いつも一緒に旅をしてきた赤いドラゴン、白蛇の子、大量のドラゴン。
ここにいる、モンスターと人間の垣根を越えた生物たちで、世界の帝王とやらを倒しに行く。
今は鎧を装着して、自分に合う剣を選ぶ。友情の証の盾は、マキシミとの戦いで消滅した。新しい盾も欲しいな。
森の中で装備を漁っていくと、背後から声がした。振り向くと、ディールが立っていた。
「俺も連れててくれ、討伐者じゃけん少しは力になると思てな」
ポツリと彼は言う。
周りにはガイアさんとロックがいた。
「同族を殺す覚悟はあるか?」とガイアさんが彼に尋ねた。
「ある」と一言だけ彼は返した。
力が増えるなら構わない、とだけロックに伝え、装備選びに集中した。
剣は2本くらいは欲しい。二刀流での戦闘が気に入っている。盾は円形がいいな、飛びやすい。マントもほしい、これは士気を高めるための物だが。ロックにある草を手渡された。これは回復草らしい、噛めば身体を癒してくれるそう。気休め程度と言われたが、持っておいて損は無いだろう。精神を安定させるのにも必要だ。
ディールは自分の装備を持っている。一旦家に戻り、装備を取ってくるらしい。俺も着いていくことにした。
「どこにいくの? 鎧とかいらんやろ今は……」
ルカは鎧を身につけたディールや俺を見つけたのか、俺の元に駆け寄り俯きながら、悲しみの声混じりで何かをブツブツと発していた。
「絶対帰てきてくださいよ」
返事はできなかった。
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赤いドラゴンは、忘れ物をしたといい、全く別の方向へ戻って行った。
俺たちは今、ドラゴンの背中に乗っている。散々、人間を薄汚いと罵った奴らの背中にだ。いつ奴らが振り落とすかも分からないが、もし裏切ったら……死んでも許さないな。
この間に俺は他の皆に、思い出した記憶のことを伝えた。発光した人間のことや、炎に巻かれて死にかけたことを、第三地区とか迷路みたいな廊下を駆け回ったことも伝えた。これがまた強制労働所の中での記憶なら、炎を吐く人間がいることになる。モンスターとの合成実験で、ドラゴンと合成させられた、とロックは考察した。
なら、俺は何のモンスターと合成させられたんだ。炎を吐くといった、特徴的なものは見られない。白く発光したこともない。俺の中に眠っているモンスターをどう起こしてやろうか。
と、突然空が曇り始めた。
この地域は気候が変わりやすいだろうか。
ドカッ、ドゴーンッ!!
目の前に雷が落ちた、それも何発も。この雷は自我を持っているのか、そのくらい適切な位置に当ててくる。もう少しドラゴンが速く飛んでいたら直撃していたぞ。
「目的地が近い、着陸するぞ」
ドラゴンの声と共に、地面にあいた巨大な穴が見えた。円形にぽっかりとあいた巨大な穴、中にはある施設が見える。中央には監視塔らしき高い建物、周りには鉄格子のついた個室が何百個も、監視塔を取り囲むように建てられている。
これは、夢で見た場所だ。
ここが、強制労働所か。人間を強制的に労働させ、モンスターに関わる危険な実験もここにいる人間で行っている。都市伝説の範疇ではなか--
「着陸すると言ったはずだ、しっかり屈め!」
集中し過ぎた。まただ、集中すると周りが見えなくなる。これのせいで、いつも損をする。
大量のドラゴンは、派手な音を立てて草原に着陸した。
ぽっかりとあいた巨大な穴の真上に、ある男が浮いている。男は紫色のフードのついたローブを被っているため、顔が見えない。それでも体つき的に見ると、間違いなく男だ。
彼は紫の光を手に宿している、この時点で既に人智を超えた行動を取っているが、その紫の光をビームのようにして、俺たちの足元へ放った。位置的に何とか避けることができたが、目の前の地面は激しくえぐれた。これをモロに食らえば即死だ。
「我が国へようこそ、平和を守る勇者たちよ」
男は笑みを浮かべ、俺たちに語りかけるような優しい口調でそう述べた。
辺り一帯が不思議な空気に包まれた。強制労働所の主の、世界の帝王と呼ばれていた男だろう。それなのに優しい口調で……声もそこまで低くない。
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馬に乗って、森へ向かった。セルバー村で暮らす村人は、皆空を覆い尽くすドラゴンに脅えている。
「この世の終わりじゃ」
「命が助かりますように」
「まさに劇終だ」
奴らがこの村を襲いに来た訳ではないはずだ。俺の「用件があるなら、森に行ってほしい」という言葉通りに、奴らは森に向かった。襲う意思があるなら、もう既にセルバー村もリバイル村も燃え尽きているはず。
ルカをリバイル村で降ろし、森に向かった。森には大量のドラゴンと、ガイアさんやキミカ、シアンもいた。俺が到着してからすぐに、ヘイトリッドもロックも駆けつけた。
「人間を助ける訳ではないが、知らせなければと、遠くの地から遥々飛んで来た」
赤いリーダー格のドラゴンは俺たちに何があったのかを伝えた。
「我々の暮らす塔の近くで爆発が起きた。我々の仲間が爆心地を覗きに行くと、謎の煙に覆われてバタバタと倒れていった。周りに生息していたゴブリンも、気が変わったかのように森を燃やし始めた」
奇妙な現象が起きているというのは、話を聞くだけでも分かる。煙を吸ったドラゴンは倒れ、モンスターは……洗脳されているのか?森を燃やし始めるという行為を取ったということは。
「その煙は消えたが、他のゴブリンは未だに森を燃やしている。村を襲おうとしている者もいた。これは何かがおかしい。また、近くに”世界の帝王”を名乗る人物が、空中に浮かび上がり、何かを喋っていた」
なるほど、やはり洗脳か。
マキシミが言っていた、世界の帝王とやらか。ゴブリンを洗脳して、次は何をするつもりだ。しかも、空中に浮かび上がりって……普通の人間ではありえない動きをしている。人智を超えた生命体にでも進化したか?
「人間を助ける訳ではないが、我々モンスターの存在を脅かす存在は許せない。我々も協力する、だから協----」
「やりましょう、世界の帝王という悪を倒すために」
俺は無意識のうちにそう発していた。
本能から世界の帝王を許せないと感じた。利害の一致、何をしでかすか分からない悪を成敗してやろう。
「了解した。我々の背中であの場まで運ぼう。もうすぐに出発できるな?」
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ここにいる人たち。シアン、キミカ、ガイアさん、ロック、ヘイトリッド、俺。
ここにいるモンスターたち。いつも一緒に旅をしてきた赤いドラゴン、白蛇の子、大量のドラゴン。
ここにいる、モンスターと人間の垣根を越えた生物たちで、世界の帝王とやらを倒しに行く。
今は鎧を装着して、自分に合う剣を選ぶ。友情の証の盾は、マキシミとの戦いで消滅した。新しい盾も欲しいな。
森の中で装備を漁っていくと、背後から声がした。振り向くと、ディールが立っていた。
「俺も連れててくれ、討伐者じゃけん少しは力になると思てな」
ポツリと彼は言う。
周りにはガイアさんとロックがいた。
「同族を殺す覚悟はあるか?」とガイアさんが彼に尋ねた。
「ある」と一言だけ彼は返した。
力が増えるなら構わない、とだけロックに伝え、装備選びに集中した。
剣は2本くらいは欲しい。二刀流での戦闘が気に入っている。盾は円形がいいな、飛びやすい。マントもほしい、これは士気を高めるための物だが。ロックにある草を手渡された。これは回復草らしい、噛めば身体を癒してくれるそう。気休め程度と言われたが、持っておいて損は無いだろう。精神を安定させるのにも必要だ。
ディールは自分の装備を持っている。一旦家に戻り、装備を取ってくるらしい。俺も着いていくことにした。
「どこにいくの? 鎧とかいらんやろ今は……」
ルカは鎧を身につけたディールや俺を見つけたのか、俺の元に駆け寄り俯きながら、悲しみの声混じりで何かをブツブツと発していた。
「絶対帰てきてくださいよ」
返事はできなかった。
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赤いドラゴンは、忘れ物をしたといい、全く別の方向へ戻って行った。
俺たちは今、ドラゴンの背中に乗っている。散々、人間を薄汚いと罵った奴らの背中にだ。いつ奴らが振り落とすかも分からないが、もし裏切ったら……死んでも許さないな。
この間に俺は他の皆に、思い出した記憶のことを伝えた。発光した人間のことや、炎に巻かれて死にかけたことを、第三地区とか迷路みたいな廊下を駆け回ったことも伝えた。これがまた強制労働所の中での記憶なら、炎を吐く人間がいることになる。モンスターとの合成実験で、ドラゴンと合成させられた、とロックは考察した。
なら、俺は何のモンスターと合成させられたんだ。炎を吐くといった、特徴的なものは見られない。白く発光したこともない。俺の中に眠っているモンスターをどう起こしてやろうか。
と、突然空が曇り始めた。
この地域は気候が変わりやすいだろうか。
ドカッ、ドゴーンッ!!
目の前に雷が落ちた、それも何発も。この雷は自我を持っているのか、そのくらい適切な位置に当ててくる。もう少しドラゴンが速く飛んでいたら直撃していたぞ。
「目的地が近い、着陸するぞ」
ドラゴンの声と共に、地面にあいた巨大な穴が見えた。円形にぽっかりとあいた巨大な穴、中にはある施設が見える。中央には監視塔らしき高い建物、周りには鉄格子のついた個室が何百個も、監視塔を取り囲むように建てられている。
これは、夢で見た場所だ。
ここが、強制労働所か。人間を強制的に労働させ、モンスターに関わる危険な実験もここにいる人間で行っている。都市伝説の範疇ではなか--
「着陸すると言ったはずだ、しっかり屈め!」
集中し過ぎた。まただ、集中すると周りが見えなくなる。これのせいで、いつも損をする。
大量のドラゴンは、派手な音を立てて草原に着陸した。
ぽっかりとあいた巨大な穴の真上に、ある男が浮いている。男は紫色のフードのついたローブを被っているため、顔が見えない。それでも体つき的に見ると、間違いなく男だ。
彼は紫の光を手に宿している、この時点で既に人智を超えた行動を取っているが、その紫の光をビームのようにして、俺たちの足元へ放った。位置的に何とか避けることができたが、目の前の地面は激しくえぐれた。これをモロに食らえば即死だ。
「我が国へようこそ、平和を守る勇者たちよ」
男は笑みを浮かべ、俺たちに語りかけるような優しい口調でそう述べた。
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