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11.デートの終わり②(アラン視点)
しおりを挟むグレースの姿が見えなくなるのを見届けると、フェイトは馬車の方へ足を向けた。
アランはその背を睨みつける。
「シーフォード閣下が随分紳士的な方で驚きました。戦場では部下を置いて逃げ出したと聞くが、婦人には優しいんですね。あぁ、あなたにとって女選びは部下より大事なことか」
「どういう意味だ」
足を止め、くるりとこちらを振り向いた男の眼差しは、さっきまでグレースに向けていたものとはまるで違っていた。
これが、屈強な騎士すら縮み上がるという氷の眼光か。
その視線をいなすようにアランは肩をすくめた。
「意味も何も、事実を言ったまで。僕はあなたの死んだ部下、ルドルフの友人なんでね。色々と聞いてるんです」
「ルドルフの……」
それまでびりびりと凄みを効かせていた冷酷な瞳は、急速に光を失った。
1年前のアマリスの戦場で、旗色が悪くなった我が国の騎士団は、団長の判断で撤退した。
後に体勢を立て直し敵軍を撃破した為、王から英雄の称号を授与された。
その騎士団長がフェイト・シーフォード。
戦死したルドルフは、その時まだ息があったという。
この冷徹な男は、自らの手柄の為に部下を見捨てたのだ。
「失礼する」
フロックコートを翻した後ろ姿を記憶するように、アランは鋭く見続けた。
「卑怯者め」
吐き捨てるように言った言葉は、誰もいない夜空に響く。
どこで嗅ぎつけたか、あの男はグレースに目をつけたらしい。
グレースは美しい。
あどけなさは残るが、今はまだ蕾。じきに花は開く。
この男の魂胆はわかっていた。
英雄の称号を得た次に、美貌と知性を備えた妻を手に入れるつもりだ。
ルドルフの死だけでなく、グレースをも己の踏み台にしようとしている。
そうはさせるか。
グレースは俺のものだ。
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