湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

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 想定していた通りにダンジョンを変更できない事が分かった四宮。

「畜生。だけど……これしかねーんだよ!」

 二階層の傾斜の罠の手前に雑草の魔物ウイドを50体召喚し、侵入者の足を掛けるべく配置する。

 傾斜には、以前召喚したレベル1のスライムが待ち受けており、体勢を崩して傾斜になだれ込めば勢いがついた状態で突き当りの槍の様な壁に突き刺さるので、余程防御力の高い侵入者か、特殊な魔法を行使できない限りは始末する事は出来そうだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 四宮が悩んでいる頃、同じ地上型のダンジョンである辰巳も危機的状況に陥っていた。

 最強戦力であるタツイチが謎の侵入者とダンジョンの外で相打ちになった為に現時点では侵入者はおらず、ダンジョンのレベルアップと内包魔力を得ていると理解していた辰巳。

<辰巳>のダンジョン レベル15 内包魔力2020 <保有レベル15>

 侵入していた冒険者のレベルが異なっていた事もあり、四宮よりもレベル上昇率が低く、内包魔力も低い。

 ダンジョンのレベルが16に至っていないので、四宮のように毒霧等の環境変化を実施する事は出来ずに、選択メニューの項目にすら出現しない。

 そもそも出現していたとしても、内包魔力が不足しているので余計に絶望するだけだっただろう。

 今辰巳が出来るのは、気温や天候、重症を負わせる事が出来る罠の設置、レベル5までの魔物召喚程度だ。

 辰巳も10階層までダンジョンを拡張しているので何をするにも内包魔力が大幅に必要になっており、レベル5の魔物50体召喚でも、1000の内包魔力が必要になっている。

「だとすると……侵入者共を駆逐できるとするのは……」

 一人しかいないコアルームで、ブツブツ呟いて考えている辰巳。

 隣の四宮のダンジョンがどうなっているのか等確認する余裕はなく、ただひたすらに自分のダンジョン、ひいては自分の身の安全だけを必死で考える。

 無駄に階層を増やしても戦力増強にはならないので二階層の傾斜はそのままに、三階層を内包魔力800使用して森林に変化させ、スワームと呼ばれるレベル5の魔物を50体召喚した。

 このスワームはミミズの様な見た目だが、地中だけではなく木にも生息する事が出来、攻撃対象に接触すると強力な酸の様な体液で溶かす事が出来る。

 正直一気に溶かす事が出来るわけではないので決定打にかけるのだが、辰巳がこの魔物を選んだ事には理由があり、実はスワームは自然交配して増殖しやすい魔物なのだ。

 既に侵入者の気配はなく、未だ新たな侵入者が無いこの時間を利用して魔物の個体を増やし、数で押す作戦に出た。

 少ない選択肢の中からもかなり良い選択をする事が出来ており、迷わず実行し、残りの内包魔力は220。

 レベル1の魔物召喚で200を使用する事が出来るのだが、今更レベル1を召喚しても変化はないと、生き残る事を前提に次の貯蓄に回す事にした。

 ダンジョン外の様子を知る為の準備を一切していなかった二人は、準備は整っているので、残りは侵入者を待つばかりとなっている。

 今のところは大量の備蓄があるので食料に困る事はなさそうなのが唯一の希望であり、無駄に豪華に見えるコアルーム……実は軽度の変更を重ねて行った所謂張りぼてではあるが、その中で一人寂しく何をするでもなくボーッとしている。

 そこに、侵入者の気配を感じた。

「頼む!できれば二階層で!!」

 二階層は二人共傾斜の罠であり、その次が最後の砦である為に二階層を超えて欲しくないと言うのが共通の願いだ。

 しかし、良く気配を調べると……侵入してきたのは蠅型の魔物であり、一体である事から、空中を飛んでいる以上二階層での罠にはかかり様はないが、危険な魔物ではないだろうと安堵する。

 その魔物ベルゼは狙ったように階層を一気に下り、ついに10階層に到着すると、二つのダンジョン内部で同じ様な事を話し始めた。

 夫々のダンジョンで、言い回しは異なるが内容は配下になる事を勧める言葉が響く。

「そこに隠れている召喚者のダンジョンマスターよ。このままでは、おぬしはそう遠くない内に冒険者共の餌食になるじゃろう。容赦なく……な。クククク。そこで提案だ。この儂、淀嶋のダンジョンの配下になるのであれば、この窮地を救ってやろう。どうじゃ?」

「僕は水元だよ。もう後がないマスターに助け舟を出そうと思うんだよね。断っても良いけど、そうなると冒険者達に蹂躙されるだろうね。嫌だったら、僕の配下になるのがお勧めだよ?そうすれば、命は助かるけど……どうする?」

 配下を使ってダンジョンマスター本人の声を届けているのだろうが、ここまで騒ぎになってしまった二つのダンジョンマスターの助け舟を出した事だけは間違いない。

 その結果、四宮と辰巳の環境が好転するかどうかは別問題だが、一先ずは命の危険はなくなるだろう。

 この助け舟には、迷う事なく肯定する、してしまう四宮と辰巳。

「助けてくれるのかよ?だのむぜ!」

「助けてくれ!早く!」

 二人共に、助かると分かった瞬間に、少々態度が宜しくないのだが、一も二もなく提言を受け入れていた。
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