湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

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 谷底に三原を残し、崖を登り始める岩本。

 この岩本は現時点でレベル43であり、三原のレベルの52よりも相当低い。

 ここで魔法に長けていれば互いを補完できたのだが、岩本も三原と同じく物理攻撃を得意としており、槍を使って戦う事を基本としている。

 高いレベルと身体能力に物を言わせて三原と同じようにスイスイ崖を登って行くのだが、やはりどこからともなく一気に大量のパッドが現れる。

 三原は既に経験済みなのだが、こうして地に足をつけて上空をしっかりと確認している状況で、どこからともなく無数のパッドが現れた事に驚愕する。

 少しでもパッドを始末しようと地上から炎魔法を行使するのだが、相当上空にいる事と敵は攻撃を察知する能力に長けているので、あえなく避けられてしまう。

 その最中にも超音波による攻撃が岩本を襲っており、程なくして少し前の三原と同じように地上に落下してきた。

「うっ、くそ。俺が思うに、今ダンジョンマスターは真正のクソ野郎だ!」

 岩本もそのレベルから擦り傷程度しか負っていないが、相当数のパッドによる攻撃を受けて頭痛がするのか、頭を少し抱えている。

「だから言ったろう?崖を削り取って行くしかないんだよ」

「いや、俺が思うに、そうでもない。見ろ!」

 三原に対して強気の発言を崩さない岩本は、上空を指さす。

 三原が再び上空を確認すると、自分の時には一気に消え去っていたパッドの一部が未だに空中に残っているのだ。

「俺が思うに少々賭けだったが、成功だ。あいつ等は最早俺の支配下にある」

 これこそが岩本が手に入れていた力、ダンジョン関連の者に対して行使できる契約魔法だ。

 召喚魔物で何も強化していないパッドのレベルは7であり、岩本のレベルは43。

 その力の差から、相当数のパッドを一気に強制的な契約で支配下に置く事が出来た岩本。

「アンタ、結構凄いじゃないか。次は私が登って、その最中にその魔法を行使すれば多数の配下を得られるって事?」

「一応そうなるが、俺が思うに、あまり距離が離れすぎていると恐らく不可能だ」

 この会話も完全にハライチとミズイチに聞き取られているので、次にパッドを出す際には相当な高さまで登った所で送還しようと決断していた。

「暫く大人しくさせて、セーギ様とカーリ様が十分お休みになられた後に状況をご報告しようと思っているのですが、あの四人と違ってこちらの二人は無駄に活発ですね、ミズイチ」

「あの四人も<淫魔族>の洗脳から解けたようですが、確かにこちらの二人の方が無駄に活動的で困りますね」

 ハライチの言う通り、もう少し湯原セーギ水野カーりに休息をとってもらいたいと思っている二人は、無駄に活動的な岩本と三原の対策に乗り出す。

 先ずは支配権を奪われてしまっているパッドだ。

 岩本と三原は更にパッドを支配下に置こうとしているのだが、今支配下にある多数のパッドをこの階層中に飛ばして情報を集められる方がよほど不利益を被るので、あの場に残っている送還できなかったパッドを殲滅する事にする。

「ついでに基本的には好んで飛ばない魔物でも妨害程度はできる事を知らしめておけば、大人しくなるのではないでしょうか?」

「良い案ですね、ミズイチ。では、強化したマンティス数体を送りましょう」

 何もしていないマンティスであれば見た目は蟷螂のレベル30の魔物なのだが、今回は強化済みでレベル77の化け物だ。

 その動きは極めて速く、崖だろうが自由自在に移動でき、当然足で岩を掴んでいるので両手……鎌のような手は自由に動かすことができる。

 もちろん羽を持っているので飛ぶ事もできるのだが、飛んでいる時にはあまり攻撃を行う事は無い。

「あの二人、レベル49と43ですから、4体も送れば完全に大人しくなるのではないでしょうか?」

「わかりました、ミズイチ。早速送ります」

 過剰と言う言葉では足りない程の戦力を簡単に送れるこのダンジョンの力を見誤っていた岩本と三原。

「まて、俺が思うに危険だ!」

 三原が正に崖を登ろうと手をかけた瞬間に、自ら支配権を持ったパッド達の様子がおかしい事に気が付いた岩本。

 二人は上空を見ると……どう見てもマンティスなのだが、自分達の知っている速度ではない動きをしつつあっという間にパッド全てを始末して見せた。

「あれほど攻撃を当てるのが難しいパッド……それも全部一撃?」

「俺が思うに、相当やばいぞ。鑑定でもレベルが見えない」

 ボトボトと空中から落ちてくる、強化マンティスに始末されたパッド達が殊更二人の恐怖を煽る。

「わ、私の鑑定でも見えない……私はレベル49なのに!マンティスはレベル30のはずだから、見えないなんておかしい!」
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