湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

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 谷底の地面に足をついた状態なので広い谷底の中を自由自在に動き回れる状態ではあるが、どう見ても通常のマンティスよりもレベルが高い個体が4体、岩本の支配下にあったバッドを全て始末した状態で壁にへばり付き、高みからじっとその巨大な目で岩本と三原を見下ろしている。

「ど、どうするのよ!あんなの、私……無理よ!アンタ、さっきパッドを支配したようにさっさと支配してみなさいよ!」

「お、俺が思うに、俺でも無理だ。相当レベル差があるのか、距離もあるのかもしれないが支配できない」

「そ、それじゃあ、近づいた時に支配しなさいよ!」

「あの速さで4体纏めて来られると、お、俺が思うに無理だろう!」

 もうてんやわんやの二人だが、完全に捕捉されているので刺激しないように逃げるような素振りは見せていない。

 マンティスも相当高い位置の壁にとりついているような状態で微動だにせず、じっと岩本と三原を見下ろしているまま……

「あ、あの4体、襲ってこないわね」

「俺が思うに、ただの監視をしているようだ。ここは刺激しない方が良い」

 襲われた場合には勝てないまでも直ぐに対応できるような体勢になっている二人だが、生きた心地がしていないので休む事は一切できない。

「まったく。これで漸く大人しくなりましたね。セーギ様とカーリ様がお休みの間はこうして置きましょう」

 ハライチとミズイチが考える、湯原セーギ水野カーリの十分な休息時間を確保する為だけに、極度の緊張の中過ごす事を余儀なくされている召喚冒険者の岩本と三原。

 余計な動きをしなければ、他の四人の召喚冒険者と同じように何事もなく過ごす事が出来ていたのだが……

 丸々一晩極度の緊張状態に置かれ続けた二人は、一切目を離さなかったマンティスに見える魔物が突然消えた事で互いを背にして周囲を全力で警戒する。

 見えない速度で同じ谷底に降りてきたのかと暫く警戒したのだが、どうやら他のパッドと同じようにこの場から消えたようだと判断するとそのまま座り込んでしまう。

「お、俺が思うに、このダンジョンはやばい!」

「アンタが思わなくても、誰でもわかるわよ。ちょっと今後の行動を根本的に見直さないと。でも、先ずはどうやってここを出るのか……よ」

「俺が思うに、上に行くしかない巨大な閉空間。どこかに同じように転移の罠がある可能性が高いと思うぞ」

「それよ!」

 ダンジョンマスター側としては一切メリットのない話になるのだが、その話に縋るしかない二人は疲れた体に鞭打って転移罠を必死で探し始める。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

セーギ様、少々ご報告したい事がございます。セーギ様と同時に召喚された四人の召喚者の他、異なる時代の召喚冒険者二名を捕えております。全員とは申しませんが、一部を除きセーギ様やカーリ様を狙ってきているのは確実です。消してしまおうかと思ったのですが、ご判断を頂きたく」

 ハライチとミズイチに呼ばれて水野カーリは部屋で寝ている状態のまま、一人全ての階層の情報が投影される部屋に来た湯原セーギ

 7階層の状態が大きく映っている映像を見ながら、ハライチの話を聞いている。

「あっちの二人……一人は、イーシャとプリマが前に言っていた朋美さんを燃やそうとした人だよね?」

 アイズによって右肘から下は魔道具である事と、レベル49の召喚冒険者である事まで明らかになっているので、ここまでは容易に推測する事ができる湯原。

「はい。あの肘を落としたのは四人の召喚冒険者であり、その恨みを晴らそうとしているので、今回の侵入者6人の中で唯一セーギ様に害意がない者になります」

「ハライチに付け加えますと、レベル77のマンティス4体で一晩監視させた影響なのか、あの二人岩本・三原は最早戦意はなさそうです」

「う、うん。見た感じ、相当だもんね。わかるけど、アレって、何してるの?」

 映像には、血走った目で多少フラフラしつつも必死で地面の雪や土、枯葉をかき分けながら何かを探している二人が映っている。

「その……転移魔方陣を探しているようです。あの谷底から脱出する手段として壁を登っていたのですが、当初はパッドで対策していた所、岩本と言う二人目の召喚冒険者が来た時に一部のパッドを支配下に置かれてしまいましたので、続いてマンティスを送還しておきました。その結果、考え得る脱出手段がなくなったようで……」

「じゃあ、あの女性三原については放免で良いよ。岩本の方は、パッドを支配下に置くような能力をチェーに剥奪してもらってから放免ね」

「「承知しました」」

「四人の方は……」

 懐かしい顔ぶれが移っている映像に視線を移す湯原。

「おはようございます。もぅ、ミズイチちゃん、ハライチちゃん。私は大丈夫だからあまり気を使わないでね?」

 そこに入ってきたのは水野カーリ

 映像を見て直ぐに、自分が呼ばれなかった事情を把握した上で優しくミズイチとハライチに接する。
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