湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
156 / 159

(155)

しおりを挟む
 相当な冒険者と住民が幸せに生活できている番のダンジョン。

 すっかり住民達にダンジョンマスターだと知れ渡っている湯原セーギ水野カーリは、1階層に来るたびに大歓迎を受けるようになっていた。

 番のダンジョン関連の者達、他のダンジョンマスターも含むのだが、その全てが楽しく幸せに生活しているのだが、幸せとは言えない状況になっている者もいる。

 今の所の例外は、ダンジョンマスターである湯原セーギ水野カーリに難癖をつけたり、ジッタ家族による見回り時に問題を起こしたりしてダンジョンの外に放り投げられて再侵入が出来ない者、召喚冒険者である岩本、三原、更には湯原セーギ水野カーリの同郷である四人、吉川、笹岡、藤代、椎名、更にはこのダンジョンから最も近い位置にある村のギルドに努めている受付と言った所だろうか。

 岩本と三原はミド・ラスリの奴隷契約下にあり自由行動は出来ず、日々危険な魔物を片手で始末しては、有り得ない程の少ない報酬を受け取って生活しており、吉川達四人は、ダンジョン侵入にとてつもない恐怖を感じるようになってしまい、ダンジョンの外で自然交配した魔物達を狩って細々と生活している。

 番のダンジョンを放り出された冒険者の一部は、ラスリ王国では生活が出来ないと判断してコッタ帝国に移動して各ダンジョンに潜っている。

 潜っているのだが、同じダンジョンを潜っている冒険者達のほぼ全てが番のダンジョンから転移魔方陣Cを使ってこの場のダンジョンに来た者達で、装備も良ければ生活も良いのか健康そうな顔をしている。

 コッタ帝国での生活も悪くはないのだが、生活するには宿なり家なりが必要で、その分自由に使える金銭は少なくなる。

 そして……実際に彼らは気が付いてはいないのだが、どのダンジョンに潜ろうが他の冒険者と比べると高価な報酬の出現率は異常に低く、出たとしても価値が非常に低いのだ。

 薬草採取依頼にしても魔物の素材入手にしても、通常数時間で十分成果を得られる依頼なのに、対象をなかなか発見できずに丸一日を擁する事もあり、どう考えてもダンジョンマスター側から調整が入っている。

 実際には各ダンジョンマスターが直接何かをしているのではなく、番のダンジョンから派遣されている高レベルの召喚魔物による仕業だ。

 番のダンジョン所属の魔物からすれば、自らの主をコケにするような者は始末すべきと考えていたのだが、主が見逃している以上は手を出すわけにはいかず、その鬱憤を晴らすように対象の者の依頼を邪魔し続けている。

 少し前に岩本と三原が地上のマンティスを始末したのだが、こればかりは地上の自然交配の魔物であり制御下にないので、特に対策をとる事はしなかった。

 冒険者としてはダンジョンに潜って素材を入手するのが一番報酬を得る事ができる上、安定した収入になっている。

 そのダンジョンに、トラウマから潜る事が出来ない四人の召喚冒険者の生活は良いとは言えない。

「もうラスリ王国はダメだな。いくら納めても他と比べて相当叩かれている」

「じゃあさ、いっそのこと……思い切って番のダンジョンに住んでみる?ささっち」

 今日の納品も経験した事がない程の安値の報酬しか手に入らずに、見限って出国するべきと発言した吉川に対して椎名が爆弾発言をブチかます。

「な、何をいっているのだ、椎名殿。自分達がダンジョンに潜れなくなった諸悪の根源とも言えるあのダンジョンに住む?」

「そ、そうよ、理沙椎名。色々な意味で大丈夫?」

 三人に一斉に否定されるが、椎名は意見を変えるつもりはないようだ。

「え?だってさ、仮に普通の報酬であったとしても真面な生活なんて無理だよ。地上に高価な素材となる魔物がいるのも稀だし、それなら少しでも良い暮らしが出来そうなところに行くのは普通じゃない?ダンジョンだと言っても、3階層まではアスレチックみたいなものだったでしょ?4階層入り口の薬草採取だけでも今よりは絶対に良い暮らしができるよ」

 椎名の言う事には一理ある。

 そもそも地上にいる強力な魔物は優先的に排除すべく依頼がギルドから出されており、ラスリ王国ではその素材を逃さんとばかりにミド・ラスリが奴隷としている岩本と三原を使い即座に始末して手に入れてしまっている。

 その為に、恐らくこの国にいては地上の依頼だけで生活環境が改善する事は無い。

 解決策として示された番のダンジョンへの移住だが、その行為をダンジョンマスターである湯原セーギ水野カーリが許容するかどうかは別の話だ。

「それはそうだけど……吉川君はどう思うの?」

「お、俺か?逆に藤代はどうなんだよ?」

 互いにけん制しているようだが、実のところは椎名の言う通りにこのままでは仮にコッタ帝国に移住しても生活の質は上がらないだろうと言う事は薄々わかっている。

 今の窮地も、見知った冒険者を時折見かけるのだが誰一人として救いの手を差し伸べる事は無い。

 最も自分の力を過信している時に色々やらかしているので、他国に拠点を移しても現状以上に扱いが悪くなる可能性も否定できない事実を目の当たりにしている四人。

「自分、一度行ってみる事を提案したい」

 暫く黙っていた笹岡がこう告げると、結局四人とも即座に賛同して番のダンジョンを目指す。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「……と言う事だそうです、セーギ様、カーリ様」

 常に監視されている四人の会話は、即座に湯原セーギ水野カーリに伝達される。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

処理中です...