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ロペスへの復讐(2)
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二人の実力では一階層の奥に到着するのには無傷とはいかないのだが、バミアにはそこまでのリスクを背負わずに到着する事が出来る秘策があった。
魔物の攻撃を抑え目にしてもらうように、どう見ても<水の都>関連の者であるミスクに頼むのだ。
こうすればミスクに復讐の進捗の報告にもなるし一石二鳥だと考えており、実は既にこの事はミスクとイジスの了解を得ている。
少し前に<水の都>一階層の入り口でその旨を口にすると、直後に視界が暗転して以前動く事が出来なかった下層に移動したのだ。
周囲にはバミアにとっては死の象徴である魔物が存在しており恐怖が鮮明に蘇ったが、そこにはミスクがいたために、何とか落ち着く事が出来た。
「あなたの話、面白そうだから乗ります。頑張ってロペスを連れてきて下さいね。あの女にもあなたと同じように、デヒルをプレゼントしましょう。あの女の条件は……あなたと同じ条件の他に何が良いかしら?婿をその手で始末する事が最も良い復讐かしらね?」
流石にこれだけの力が有るのだから、いくら地上の出来事とは言え婿入り程度の情報は知っているのだろうと納得するバミア。
しかし、一点だけ腑に落ちない点がある。
短い期間しか行動を共にしなかったが、ミスクは無関係の物を積極的に巻き込むような性格ではなかったはずだが、ミスクの話を聞いて納得する他なかった。
「その……作戦自体は大賛成ですが、無関係の婿に手を掛けるのですか?」
「まさか貴方がそんな事を心配するなんて、可笑しいわね。ようやく普通の人になり始める事が出来たのかしら?もちろん始末するわよ。そうするのはあの女だけれど。フフ、あなたの考えている事はわかるわ。でも余計な心配よ。その婿、この<水の都>に敵対する人物と繋がりがあるのだから、容赦する必要はないのよ」
ダンジョン以外の地上、人族の中でもダンジョン関連の勢力争いが行われている事実を突然聞かされたバミアだが、先ずは自分の生存を最優先にする必要があるので、敢えてそこには触れずいる。
ロペスの婿になる人物はミラバル侯爵の息がかかった人物である事が判明しているので、ミスクやイジスとしても何の憂いもなく始末できるのだ。
「それで宜しいですよね?イジス様」
突然ミスクがバミアの背後に向かって問いかけるので、思わず視線を後ろに向けてしまうバミア。
そこには当然のようにイジスが佇んでいたのだ。
「あぁ、今回は全てミスクに一任しているから、文句はないぞ。俺は状況を見に来ただけだからな」
「ありがとうございます。あの女、貴族である婿を手にかければ地上での生活は最悪なものになり、手にかけなければデヒルによって死亡する。どの道最悪な末路です。できれば長く苦しんでもらいたいので、デヒルによって苦しむのではなく、敵の戦力を削減する方向で動いてほしいものですね」
婿がイジスの敵であるミラバル侯爵に連なる者でなければ、仮に貴族の次男程度を殺害してしまっても<闇者>の称号を得たロペスに大きなダメージはない。
だが侯爵であり魔族でもあるミラバル関連の者であれば、ミラバル侯爵の怒りを買って大きなダメージを受ける事は間違いないのだ。
そこまで計算した結果、この作戦を実行する事にした。
「じゃあ、四階層の入り口付近のあの場所で作戦を実行しましょう。常に監視しているから、いつ来るかの報告はいらないわ。では帰りましょう、イジス様」
その言葉の直後、瞬時に一階層に戻ったバミアは、背中や額に冷たい汗が流れるのを止める事は出来なかった。
当時は疑惑程度だったが、その後にある程度落ち着いて再びミスクとイジスに対峙して、あの二人の強さは別格、特にイジスは異常だと感じているバミア。
人族では決して辿り着く事の出来ない域にいる事は間違いないと確信した。
加えて、<水の都>の魔物を完全に制御できている。
浅層であっても、最高の称号を得るほどの実力がある自分達でも手も足も出ない魔物達を……だ。
つまり、あの二人は高位の魔族である確率が非常に高いと理解した。
その二人に喧嘩を売る形になっていたバミアは当時の自分の行いを激しく後悔したのだが、最早どうしようもない。
自分の命のために、そして自分すら切り捨てたロイエス一行への復讐のために、手始めにロペスをその手にかける事にしたのだ。
こうして予定通りに数日後、ロペスは誰にも見つからないように屋敷を抜け出してバミアと待ち合わせをしている<水の都>一階層の奥に進んでいた。
この隠密行動には理由がある。
建前上は今後の事を考えて、あの鉱石が容易に手に入れられる手段を知っている事を誰にも知られないようにする為だが、本音はロペスの身に何かが起きた事を誰にも悟られないようにする為だ。
侵攻中には当然魔物の襲撃はあるが、以前ロイエス達と攻略していた時よりも遥かに弱い攻撃であったために、一人でも難なく捌く事が出来ている。
「今日はどうしたのかしら?これだけ魔物が弱いとは……先行しているはずのバミアが何かしたのでしょうね。ますますバミアの知っている情報に信憑性が増したわね。楽しみになってきたわ」
最早バミアの言葉を一切疑う事なく、間もなく手にする事が出来るのであろう大量の鉱石と、そこから得られる応分の報酬に頭がいっぱいのロペス。
魔物の攻撃を抑え目にしてもらうように、どう見ても<水の都>関連の者であるミスクに頼むのだ。
こうすればミスクに復讐の進捗の報告にもなるし一石二鳥だと考えており、実は既にこの事はミスクとイジスの了解を得ている。
少し前に<水の都>一階層の入り口でその旨を口にすると、直後に視界が暗転して以前動く事が出来なかった下層に移動したのだ。
周囲にはバミアにとっては死の象徴である魔物が存在しており恐怖が鮮明に蘇ったが、そこにはミスクがいたために、何とか落ち着く事が出来た。
「あなたの話、面白そうだから乗ります。頑張ってロペスを連れてきて下さいね。あの女にもあなたと同じように、デヒルをプレゼントしましょう。あの女の条件は……あなたと同じ条件の他に何が良いかしら?婿をその手で始末する事が最も良い復讐かしらね?」
流石にこれだけの力が有るのだから、いくら地上の出来事とは言え婿入り程度の情報は知っているのだろうと納得するバミア。
しかし、一点だけ腑に落ちない点がある。
短い期間しか行動を共にしなかったが、ミスクは無関係の物を積極的に巻き込むような性格ではなかったはずだが、ミスクの話を聞いて納得する他なかった。
「その……作戦自体は大賛成ですが、無関係の婿に手を掛けるのですか?」
「まさか貴方がそんな事を心配するなんて、可笑しいわね。ようやく普通の人になり始める事が出来たのかしら?もちろん始末するわよ。そうするのはあの女だけれど。フフ、あなたの考えている事はわかるわ。でも余計な心配よ。その婿、この<水の都>に敵対する人物と繋がりがあるのだから、容赦する必要はないのよ」
ダンジョン以外の地上、人族の中でもダンジョン関連の勢力争いが行われている事実を突然聞かされたバミアだが、先ずは自分の生存を最優先にする必要があるので、敢えてそこには触れずいる。
ロペスの婿になる人物はミラバル侯爵の息がかかった人物である事が判明しているので、ミスクやイジスとしても何の憂いもなく始末できるのだ。
「それで宜しいですよね?イジス様」
突然ミスクがバミアの背後に向かって問いかけるので、思わず視線を後ろに向けてしまうバミア。
そこには当然のようにイジスが佇んでいたのだ。
「あぁ、今回は全てミスクに一任しているから、文句はないぞ。俺は状況を見に来ただけだからな」
「ありがとうございます。あの女、貴族である婿を手にかければ地上での生活は最悪なものになり、手にかけなければデヒルによって死亡する。どの道最悪な末路です。できれば長く苦しんでもらいたいので、デヒルによって苦しむのではなく、敵の戦力を削減する方向で動いてほしいものですね」
婿がイジスの敵であるミラバル侯爵に連なる者でなければ、仮に貴族の次男程度を殺害してしまっても<闇者>の称号を得たロペスに大きなダメージはない。
だが侯爵であり魔族でもあるミラバル関連の者であれば、ミラバル侯爵の怒りを買って大きなダメージを受ける事は間違いないのだ。
そこまで計算した結果、この作戦を実行する事にした。
「じゃあ、四階層の入り口付近のあの場所で作戦を実行しましょう。常に監視しているから、いつ来るかの報告はいらないわ。では帰りましょう、イジス様」
その言葉の直後、瞬時に一階層に戻ったバミアは、背中や額に冷たい汗が流れるのを止める事は出来なかった。
当時は疑惑程度だったが、その後にある程度落ち着いて再びミスクとイジスに対峙して、あの二人の強さは別格、特にイジスは異常だと感じているバミア。
人族では決して辿り着く事の出来ない域にいる事は間違いないと確信した。
加えて、<水の都>の魔物を完全に制御できている。
浅層であっても、最高の称号を得るほどの実力がある自分達でも手も足も出ない魔物達を……だ。
つまり、あの二人は高位の魔族である確率が非常に高いと理解した。
その二人に喧嘩を売る形になっていたバミアは当時の自分の行いを激しく後悔したのだが、最早どうしようもない。
自分の命のために、そして自分すら切り捨てたロイエス一行への復讐のために、手始めにロペスをその手にかける事にしたのだ。
こうして予定通りに数日後、ロペスは誰にも見つからないように屋敷を抜け出してバミアと待ち合わせをしている<水の都>一階層の奥に進んでいた。
この隠密行動には理由がある。
建前上は今後の事を考えて、あの鉱石が容易に手に入れられる手段を知っている事を誰にも知られないようにする為だが、本音はロペスの身に何かが起きた事を誰にも悟られないようにする為だ。
侵攻中には当然魔物の襲撃はあるが、以前ロイエス達と攻略していた時よりも遥かに弱い攻撃であったために、一人でも難なく捌く事が出来ている。
「今日はどうしたのかしら?これだけ魔物が弱いとは……先行しているはずのバミアが何かしたのでしょうね。ますますバミアの知っている情報に信憑性が増したわね。楽しみになってきたわ」
最早バミアの言葉を一切疑う事なく、間もなく手にする事が出来るのであろう大量の鉱石と、そこから得られる応分の報酬に頭がいっぱいのロペス。
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