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ロペスへの復讐(7)
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自分が色々追い詰められて変わってしまったのは理解しているが、婿であるシムデアの豹変に訳が分からないロペス。
「シムデア様、一体どうされたのですか?」
すっかり自分の不安よりも、目の前で豹変と言うよりも激変してしまったシムデアが気になっているロペス。
「自分の胸に聞いてみろ!俺は一旦家に戻る。次に会うときは会場だ。絶対に遅れるな!」
食事を用意させているのだが、食堂に移動する素振りすら見せずにロペスにわざと勢いをつけてぶつかったまま、さっさといなくなるシムデア。
突然の豹変について行けず、何が何だか分からないと言う表情で見つめるしかないロペス。
不穏な空気が蔓延しているのだが、既に貴族には公に案内を出している以上は婚約発表会が延期や中止される事は無かった。
このおかげか一日程度はシムデアの行動が気になって本当のストレスを感じずに済んだロペスだが、翌日に発表会……つまりは自分自身の死刑執行とも言える行事が行われる日が迫ってくれば、やはり穏やかではいられない。
逃げる事も出来ずに、使用人が準備したドレスに着替えて馬車に乗る。
ロペスただ一人が座っているその席には何故か短剣と共に手紙が置いてあり、手紙を恐る恐る開くと……
―これはプレゼントです―
とだけ書かれていた。
誰がどう考えてもミスクから送られた短剣と手紙であるのが分かるので、只々震えてその短剣を握るロペス。
こうして会場に到着するとロペスは闇魔法を使用して短剣をしまうと、必死で平静を装って会場に入る。
もちろんこの場の全員が二人を祝福するべく集まっており、既に到着しているシムデア同様、入場してきたロペスに対しても拍手で迎え入れている。
そのような行動がロペスを追い詰めているとは知らない貴族達は、ある程度化粧で顔色を誤魔化しているロペスにとっては止めを刺すように聞こえる祝福の言葉を投げかける。
「おめでとうございます、ロペス様!」
「流石は<闇者>の称号を持つお方だ。とても気品に溢れている」
引きつる頬を何とか誤魔化しつつ、既に着席しているシムデアの元に向かう。
「お待たせいたしました、シムデア様」
「あぁ」
やはりシムデアはそっけない態度であり何故そうなったのかが分からないロペスだが、今更それを聞いたとしてもシムデアと結ばれる事は絶対に無いので、黙って座る。
「チッ。おいロペス!それほど俺の権力が欲しいのか?確かに俺は立場上婿と言う事になっているが、婚姻後は全て俺に従って貰うぞ。わかったな!」
極限の状態にいるロペスに対して観客からの悪意無き賞賛、そしてこのシムデアの豹変に突き動かされ、衝動的にロペスは短剣を取り出す。
「ロペス!貴様何をする気だ!!」
ロペスの狂気を含んでいる表情のまま自分を見つめて突然短剣を出したので、思わず立ち上がり大声で威嚇する。
和やかに談笑していたミラバルを含む貴族達の視線は、完全に場違いな声がする方向に向けられる。
「うわ~~~~~」
その情けない叫び声が会場を包んだ直後、ロペスはいつの間にか手にしていた短剣で目の前のシムデアを容赦なく切りつけた。
会場は阿鼻叫喚の図に包まれたが、そこは貴族が集うパーティー。
護衛の者達が放心しているロペスを取り押さえ、シムデアの救命措置が行われた。
「シムデア様!」
ミラバルの護衛としてこの場に来ている、実は魔族であり眷属であるこの男は、今後の重要な手駒となるべくこのシムデアを何とか救おうと試みる。
だが称号を得るほどの実力を持ち、更には殺害に使った短剣はミスクから渡されている物。
これが通常の短剣であれば恐らく魔族の力であれば蘇生する事は可能であっただろうが、切りつけた相手を確実に殺害できるような付与がなされていた事もあって、この場でシムデアは事切れる事になる。
「おい、シムデアは助かるのか?」
シムデアの元に来たミラバル侯爵は自らの眷属に対してこう問いかけるが、治療に当たっていた男は黙って首を横に振り、シムデアから離れる。
「ロペス!貴様何という事を!!」
ロペスの力が有れば普通の人族の護衛程度はどうとでもなりそうなものだが、ロペスは一切抵抗するそぶりを見せずに、床に組み伏せられている。
護衛達に押さえつけられているロペスを、怒りのまま蹴りつけるミラバル。
「ガ……」
「シムデア様、一体どうされたのですか?」
すっかり自分の不安よりも、目の前で豹変と言うよりも激変してしまったシムデアが気になっているロペス。
「自分の胸に聞いてみろ!俺は一旦家に戻る。次に会うときは会場だ。絶対に遅れるな!」
食事を用意させているのだが、食堂に移動する素振りすら見せずにロペスにわざと勢いをつけてぶつかったまま、さっさといなくなるシムデア。
突然の豹変について行けず、何が何だか分からないと言う表情で見つめるしかないロペス。
不穏な空気が蔓延しているのだが、既に貴族には公に案内を出している以上は婚約発表会が延期や中止される事は無かった。
このおかげか一日程度はシムデアの行動が気になって本当のストレスを感じずに済んだロペスだが、翌日に発表会……つまりは自分自身の死刑執行とも言える行事が行われる日が迫ってくれば、やはり穏やかではいられない。
逃げる事も出来ずに、使用人が準備したドレスに着替えて馬車に乗る。
ロペスただ一人が座っているその席には何故か短剣と共に手紙が置いてあり、手紙を恐る恐る開くと……
―これはプレゼントです―
とだけ書かれていた。
誰がどう考えてもミスクから送られた短剣と手紙であるのが分かるので、只々震えてその短剣を握るロペス。
こうして会場に到着するとロペスは闇魔法を使用して短剣をしまうと、必死で平静を装って会場に入る。
もちろんこの場の全員が二人を祝福するべく集まっており、既に到着しているシムデア同様、入場してきたロペスに対しても拍手で迎え入れている。
そのような行動がロペスを追い詰めているとは知らない貴族達は、ある程度化粧で顔色を誤魔化しているロペスにとっては止めを刺すように聞こえる祝福の言葉を投げかける。
「おめでとうございます、ロペス様!」
「流石は<闇者>の称号を持つお方だ。とても気品に溢れている」
引きつる頬を何とか誤魔化しつつ、既に着席しているシムデアの元に向かう。
「お待たせいたしました、シムデア様」
「あぁ」
やはりシムデアはそっけない態度であり何故そうなったのかが分からないロペスだが、今更それを聞いたとしてもシムデアと結ばれる事は絶対に無いので、黙って座る。
「チッ。おいロペス!それほど俺の権力が欲しいのか?確かに俺は立場上婿と言う事になっているが、婚姻後は全て俺に従って貰うぞ。わかったな!」
極限の状態にいるロペスに対して観客からの悪意無き賞賛、そしてこのシムデアの豹変に突き動かされ、衝動的にロペスは短剣を取り出す。
「ロペス!貴様何をする気だ!!」
ロペスの狂気を含んでいる表情のまま自分を見つめて突然短剣を出したので、思わず立ち上がり大声で威嚇する。
和やかに談笑していたミラバルを含む貴族達の視線は、完全に場違いな声がする方向に向けられる。
「うわ~~~~~」
その情けない叫び声が会場を包んだ直後、ロペスはいつの間にか手にしていた短剣で目の前のシムデアを容赦なく切りつけた。
会場は阿鼻叫喚の図に包まれたが、そこは貴族が集うパーティー。
護衛の者達が放心しているロペスを取り押さえ、シムデアの救命措置が行われた。
「シムデア様!」
ミラバルの護衛としてこの場に来ている、実は魔族であり眷属であるこの男は、今後の重要な手駒となるべくこのシムデアを何とか救おうと試みる。
だが称号を得るほどの実力を持ち、更には殺害に使った短剣はミスクから渡されている物。
これが通常の短剣であれば恐らく魔族の力であれば蘇生する事は可能であっただろうが、切りつけた相手を確実に殺害できるような付与がなされていた事もあって、この場でシムデアは事切れる事になる。
「おい、シムデアは助かるのか?」
シムデアの元に来たミラバル侯爵は自らの眷属に対してこう問いかけるが、治療に当たっていた男は黙って首を横に振り、シムデアから離れる。
「ロペス!貴様何という事を!!」
ロペスの力が有れば普通の人族の護衛程度はどうとでもなりそうなものだが、ロペスは一切抵抗するそぶりを見せずに、床に組み伏せられている。
護衛達に押さえつけられているロペスを、怒りのまま蹴りつけるミラバル。
「ガ……」
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