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ダンジョンバトル(7)
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あまりのリティの勢いにのまれた魔王イジス。
「そ、そうだね。そうしようかな~?実は俺もその方が良いと思っていたんだよ。じゃあ、プラタ!」
なんだか中途半端な言い訳をしているようなセリフだが、取り敢えず魔王として、ダンジョンマスターとして、自らが最も信頼できる眷属の四人の内の一人を召喚する。
呼ばれたのは、黒目・黒髪の吸血姫族のプラタ。
情報収集の任務中ではあったが、敬愛するイジスからの召喚にトロンとした目をしながら現れる。
「主様~、プラタに何もかも、全てお任せください~!!」
何も言っていない傍からこの様子だが、その実力は紛れもなく本物であり、仮に<深淵と栄光>のマスターであるヘルムホルツと眷属のマリでさえ、瞬殺できる実力はある。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
イジス達と同様にこのダンジョンバトルを見ているダンジョンマスターのうちの一人であり、当事者でもあるミラバル。
予想通りに脅威となり得ない魔物が<枯渇>に侵入してきた。
多数に分裂した挙句に存在を隠蔽して侵攻した時には若干焦ったのだが、即座に<枯渇>のマスターにアドバイスをして対処させる事でそれ以降問題となる事はなく、全て想定の範囲内だった。
攻撃側も長蛇族が順調に侵攻しており、最早勝負は見えたとばかりに映像を消して今後の事について考える余裕すらあった。
その後どれくらい時間が経過したかは不明だが、ミラバルを含めた全マスターに脳内で勝利宣言がなされる。
『<深淵と栄光>対<枯渇>のダンジョンバトル。勝者は<深淵と栄光>』
「……え??」
確信とは真逆の結果に、何の冗談かと暫くは動けないミラバル。
イジスの介入が無ければ、ほぼ全てのダンジョンマスターが予想した通りに<黒の海>が背後にいる<枯渇>の圧倒的勝利で終わっていたこのバトル。
今回はこのダンジョンバトルによる宣戦布告を受けた瞬間に<深淵と栄光>のダンジョンマスターであるヘルムホルツが、唯一の眷属であるマリを<優しさと死の匂い>に向かわせて魔王の助力を求める事にしていた。
即座に決めて行動してもギリギリだったのだが、配下のダンジョンを持っていないので転移できない以上は、地上を進むしか方法はない。
帰りは、マリがイジス配下のダンジョンへ転移して戻ってきたのでかなりの時間短縮を行えている状態でもギリギリだったのだ。
マリとしては行きもイジス配下のダンジョンに向かおうとしていたのだが、齟齬が発生して時間を要してしまった場合に取り返しがつかないと判断したヘルムホルツの指示により、マリは休みなく移動して何とか間に合わせた。
伊達に長くダンジョンマスターをしている訳ではないヘルムホルツは、助力を求める結果になってしまったのだが、何とか侵略を跳ね返す事が出来た。
その闘いは……
既に配下となっている<深淵と栄光>の最下層にいる二人の眷属、攻撃要員としてプラタを、侵攻してきている長蛇族の迎撃にイシュウを向かわせた。
プラタはバトル中の特権である相手ダンジョン一階層への転移を使用して即座に<枯渇>に侵入すると、そこには未だ干からびたような魔物が多数存在しており、プラタが完全に転移終了した直後に物理的にも、魔法的にも一気に攻撃を仕掛けてきた。
激しく投げられる刃物、ハンマー、飛んでくる魔術は灰色の球体だが、想定するに全ての液体を強制的に吸収する魔法であろうと想定するプラタ。
例えその魔法を食らっても魔法の許容を超える力を急激に与える事によって自壊させる事が出来るのだが、例え魔法とは言え敵に触れられる事に抵抗を感じたプラタは全ての攻撃を華麗に避けると、流れる様に前方にいた二体の魔物の額に指先をめり込ませる。
まるで軽く触っているようだが、実際に額の中に指が第一関節までめり込んでいる。
「あ~。また触りたくない物に触っちゃった~。ばっちぃな~。早く主様に慰めて頂かないと~!」
愚痴を言いながらも、即座に指引き抜いて入念に浄化しているプラタは隙だらけだ。
だが、最も近くにいて絶好の攻撃のチャンスであるはずの二体の魔物は、突然踵を返して同じ魔物、干からびている魔物達に魔法攻撃を始める。
脅威に意識が向いている魔物達は、突如として意識の外から攻撃を受けたために相当数が二体の魔物からの攻撃を受ける。
これは、プラタが強制的に配下に置いた事による動きであり、流石は吸血姫族と言った所だ。
二体の魔物が味方に放った魔法は、プラタに放った魔法と同じく灰色の球体。
直撃した魔物は少々乾燥が進んだ程度の変化しかないのだが、その状態を見てやはりこの魔法は体内の水分を強制的に瞬時に吸い出す魔法だとプラタは判断する。
プラタは見ていないが、実際にスライムとの戦闘時には直接的に触れて内部の水分を吸収していたので、その遠距離攻撃と言った所なのだろう。
互いに<枯渇>所属の魔物である為に魔法を受けた方にはあまりダメージが見られてはいないのだが……このプラタの力がその程度である訳がない。
魔法を受けた魔物達も、プラタに直接眷属にされた魔物二体と同様に味方に攻撃をし始めたのだ。
「そ、そうだね。そうしようかな~?実は俺もその方が良いと思っていたんだよ。じゃあ、プラタ!」
なんだか中途半端な言い訳をしているようなセリフだが、取り敢えず魔王として、ダンジョンマスターとして、自らが最も信頼できる眷属の四人の内の一人を召喚する。
呼ばれたのは、黒目・黒髪の吸血姫族のプラタ。
情報収集の任務中ではあったが、敬愛するイジスからの召喚にトロンとした目をしながら現れる。
「主様~、プラタに何もかも、全てお任せください~!!」
何も言っていない傍からこの様子だが、その実力は紛れもなく本物であり、仮に<深淵と栄光>のマスターであるヘルムホルツと眷属のマリでさえ、瞬殺できる実力はある。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
イジス達と同様にこのダンジョンバトルを見ているダンジョンマスターのうちの一人であり、当事者でもあるミラバル。
予想通りに脅威となり得ない魔物が<枯渇>に侵入してきた。
多数に分裂した挙句に存在を隠蔽して侵攻した時には若干焦ったのだが、即座に<枯渇>のマスターにアドバイスをして対処させる事でそれ以降問題となる事はなく、全て想定の範囲内だった。
攻撃側も長蛇族が順調に侵攻しており、最早勝負は見えたとばかりに映像を消して今後の事について考える余裕すらあった。
その後どれくらい時間が経過したかは不明だが、ミラバルを含めた全マスターに脳内で勝利宣言がなされる。
『<深淵と栄光>対<枯渇>のダンジョンバトル。勝者は<深淵と栄光>』
「……え??」
確信とは真逆の結果に、何の冗談かと暫くは動けないミラバル。
イジスの介入が無ければ、ほぼ全てのダンジョンマスターが予想した通りに<黒の海>が背後にいる<枯渇>の圧倒的勝利で終わっていたこのバトル。
今回はこのダンジョンバトルによる宣戦布告を受けた瞬間に<深淵と栄光>のダンジョンマスターであるヘルムホルツが、唯一の眷属であるマリを<優しさと死の匂い>に向かわせて魔王の助力を求める事にしていた。
即座に決めて行動してもギリギリだったのだが、配下のダンジョンを持っていないので転移できない以上は、地上を進むしか方法はない。
帰りは、マリがイジス配下のダンジョンへ転移して戻ってきたのでかなりの時間短縮を行えている状態でもギリギリだったのだ。
マリとしては行きもイジス配下のダンジョンに向かおうとしていたのだが、齟齬が発生して時間を要してしまった場合に取り返しがつかないと判断したヘルムホルツの指示により、マリは休みなく移動して何とか間に合わせた。
伊達に長くダンジョンマスターをしている訳ではないヘルムホルツは、助力を求める結果になってしまったのだが、何とか侵略を跳ね返す事が出来た。
その闘いは……
既に配下となっている<深淵と栄光>の最下層にいる二人の眷属、攻撃要員としてプラタを、侵攻してきている長蛇族の迎撃にイシュウを向かわせた。
プラタはバトル中の特権である相手ダンジョン一階層への転移を使用して即座に<枯渇>に侵入すると、そこには未だ干からびたような魔物が多数存在しており、プラタが完全に転移終了した直後に物理的にも、魔法的にも一気に攻撃を仕掛けてきた。
激しく投げられる刃物、ハンマー、飛んでくる魔術は灰色の球体だが、想定するに全ての液体を強制的に吸収する魔法であろうと想定するプラタ。
例えその魔法を食らっても魔法の許容を超える力を急激に与える事によって自壊させる事が出来るのだが、例え魔法とは言え敵に触れられる事に抵抗を感じたプラタは全ての攻撃を華麗に避けると、流れる様に前方にいた二体の魔物の額に指先をめり込ませる。
まるで軽く触っているようだが、実際に額の中に指が第一関節までめり込んでいる。
「あ~。また触りたくない物に触っちゃった~。ばっちぃな~。早く主様に慰めて頂かないと~!」
愚痴を言いながらも、即座に指引き抜いて入念に浄化しているプラタは隙だらけだ。
だが、最も近くにいて絶好の攻撃のチャンスであるはずの二体の魔物は、突然踵を返して同じ魔物、干からびている魔物達に魔法攻撃を始める。
脅威に意識が向いている魔物達は、突如として意識の外から攻撃を受けたために相当数が二体の魔物からの攻撃を受ける。
これは、プラタが強制的に配下に置いた事による動きであり、流石は吸血姫族と言った所だ。
二体の魔物が味方に放った魔法は、プラタに放った魔法と同じく灰色の球体。
直撃した魔物は少々乾燥が進んだ程度の変化しかないのだが、その状態を見てやはりこの魔法は体内の水分を強制的に瞬時に吸い出す魔法だとプラタは判断する。
プラタは見ていないが、実際にスライムとの戦闘時には直接的に触れて内部の水分を吸収していたので、その遠距離攻撃と言った所なのだろう。
互いに<枯渇>所属の魔物である為に魔法を受けた方にはあまりダメージが見られてはいないのだが……このプラタの力がその程度である訳がない。
魔法を受けた魔物達も、プラタに直接眷属にされた魔物二体と同様に味方に攻撃をし始めたのだ。
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