107 / 153
【鋭利な盾】と四席狙いの三人の魔族(1)
しおりを挟む
時は少し戻る……
四星の空席二つを争っている三人の魔族が【鋭利な盾】を撃破するためにアルゾナ王国に飛び出して行った。
「ケケケケケ、お前らに四星はまだ早い。俺の予想じゃぁ、Sランカーのホスフォとか言うジジィに瞬殺されるぞ?」
赤目・黒髪で長身の魔族であるレベニが、残りの二人を挑発する。
「テメーこそすっこんでろ。【鋭利な盾】とか言うふざけた連中は俺様一人で充分だ。むしろテメーらのせいで実力が出せねー可能性すらある!」
レベニの挑発に対して挑発で返すのは、坊主頭で筋肉質の巨漢、明らかに肉弾戦を得意としていますと言わんばかりの魔族であるカロラ。
「君達、虚勢は無駄。邪魔だから、さっさと帰るのが吉」
言葉は少ないが、こちらも二人に対して挑発をして見せたのは、二人に比べると身長は低いが、その体をフード付きの外套ですっぽりと覆っており、その姿が良く認識できない存在の魔族エドハルト。
この三人が二つの空席である四星の座を争っている三人の魔族であり、最終試験として【鋭利な盾】を始末するために我先にとアルゾナ王国方面に向かっている。
丁度目標である【鋭利な盾】が数日前にアルゾナ王国に帰還したと三人共に情報を得ているので、一刻も早く残りの二人を出し抜いて始末する事だけを考えて移動する。
この三人の中で、動きを阻害する手段に最も長けているのはフード付きの外套をすっぽり被っているエドハルト。
三人共に互いが敵と認識しているので、二人に気が付かれない程微弱な魔術を継続的に行使し続ける。
その魔術は行動阻害の術の一つで、支援魔術の中で身体強化と対局に位置する魔術、身体弱化だ。
身体強化は自らの魔術を使って自分自身を強化できるし、支援魔術として受け取る事も出来る。
その真逆の効果がある身体弱化は支援魔術の一つとして存在しているのだが、これを二人の魔族に分からない程徐々に行使しているエドハルト。
自分の行動もそれに合わせて徐々に遅くし、一人だけ出し抜いている様な行動を見せない程の手の打ちようだ。
当然残りの二人も、同じように出し抜く事を考えながら移動している。
魔術を得意とするレベニは、目標である【鋭利な盾】を見つけた瞬間に二人の魔族を巻き込むように魔術を行使しようと思っているし、体術を得意とするカロラも同じ様に、【鋭利な盾】を見つけた瞬間に一人だけ全力で突進して、一気に勝負を決めてやろうと思っている。
三人共に互いの足を引っ張る事や出し抜く事に意識を割きつつ移動している。
いよいよ残り数十分でアルゾナ王国に到着すると言った所で……
「二人は邪魔。僕は先に行く」
突然エドハルトが止めとばかりに、あからさまに身体弱化の魔術をこれでもかと言わんばかりにレベニとカロラにかけると、そのまま走りさる。
流石にここまであからさまであれば、どのような術を掛けられたか分かる二人。
通常であればレジストできるのだが、意識が他の二人を出し抜く事に向きつつ移動していたところに、術を隠蔽するように徐々に継続して掛けられていた状態であり、既にかなり身体弱化の影響下にあった。
そこで止めを刺される形になったため、レジストする事が出来なかったのだ。
「クズ野郎!」
「テメー!まちやがれ!」
後方から聞こえて来る罵声を嬉しそうに聞きながら、エドハルトは全力で移動して二人を大きく引き離す。
とは言っても、同じようなレベルの二人に対して掛けた術。
そう長い時間は持たないだろうと言う事も理解しており、この短い時間を使ってさっさと【鋭利な盾】を始末するべく動き出す。
残された二人は人族が歩く速度程度でしか動く事が出来ず、ここに万が一にも【鋭利な盾】が攻撃を仕掛ければ、容易く葬る事が出来ただろう。
出し抜かれた悔しさを滲ませつつ、必死で足を前に進める二人。
その移動にはかなりの時間が必要になり、逆に二人を結束させるだけの時が出来てしまった。
「ケケケケ、あの野郎、許せない。おい!カロラ!!あのクズが【鋭利な盾】を仕留めようがどうしようが、俺とカロラが新たな四星だ」
「珍しく同意できるぜ、レベニ。あのクソ野郎、この俺様をコケにしやがって、報いを受けさせてやるぜ」
こうして、同じレベルの魔族二人からも狙われる事になってしまったエドハルトは、あえなくアルゾナ王国付近で死亡する事になる。
これが、【鋭利な盾】が魔族を一人倒したと言う真相であり、決して【鋭利な盾】自身の実力で倒せたわけではない。
もちろん【鋭利な盾】もSランクギルドとして最大限の攻撃を行い、何故か先行していた魔族の一人であるエドハルトは難なく倒せたのだが、後から来た二人の魔族であるカロラとレベニにはその攻撃は一切通じていなかった。
先行していたエドハルトが敢え無く死亡したのは、後方から追っているカロラとレベニによってほぼ致命傷を負っていたからだ。
エドハルトが死亡した直後、対面する【鋭利な盾】の主力部隊である三人の冒険者と、四星の席を手中に収めたと確信しているカロラとレベニ。
「テメーラが【鋭利な盾】とか言う連中だな?」
「フォッフォッフォッフォッ、せっかちな若造じゃの~。確かに儂らが【鋭利な盾】じゃよ。儂はギルドマスターをしておるホスフォじゃ、ヒヨッコ共」
魔族の一人を敢え無く倒す事が出来た事から、心にも余裕ができている【鋭利な盾】。
カロラの問いかけに応えたのは、【鋭利な盾】のギルドマスターでもあり、アルゾナ王国唯一のSランカーでもある老人のホスフォ。
白髪を束ねて、いかにも魔術を使いますと言わんばかりに、立派な杖を掲げている。
実際明らかに老人と分かる年齢まで現役Sランカーでいられるのだから、相当な技量がある事が伺えるが、そんなホスフォの言葉を聞いても焦りもしない魔族の二人。
「ケケケケ、雑魚が勘違いしたようで・・・・・・この男はちょっとした事情で、俺達が始末していたところ、お前らの攻撃が止めになっただけ。普通なら、あんな攻撃食らってもびくともしないけどね」
レベニが、既に死亡している元同僚のエドハルトの死の真相をおかしそうに説明するが、もう一人の魔族であるカロラは四星を確定させるべく動き出す。
「おい、レベニ。口で言ってもわからねーだろ?そもそも、俺達は【鋭利な盾】を壊滅させる事が四星の条件だ。せっかく余計な奴が居ねーんだから、さっさと片付けようぜ」
言うや否や、長身で筋骨隆々のその体を活かしてホスフォに襲い掛かる。
ホスフォは反射的に防御魔術を行使する。
「チッ、流石にいきなり始末はできねーか」
一旦距離を取るカロラだが、その右手には・・・・・・ホスフォの右手が握られていた。
「「ホスフォさん!」」
ホスフォに同行している【鋭利な盾】のAランカー二人は、有得ない事態に驚愕する。
四星の空席二つを争っている三人の魔族が【鋭利な盾】を撃破するためにアルゾナ王国に飛び出して行った。
「ケケケケケ、お前らに四星はまだ早い。俺の予想じゃぁ、Sランカーのホスフォとか言うジジィに瞬殺されるぞ?」
赤目・黒髪で長身の魔族であるレベニが、残りの二人を挑発する。
「テメーこそすっこんでろ。【鋭利な盾】とか言うふざけた連中は俺様一人で充分だ。むしろテメーらのせいで実力が出せねー可能性すらある!」
レベニの挑発に対して挑発で返すのは、坊主頭で筋肉質の巨漢、明らかに肉弾戦を得意としていますと言わんばかりの魔族であるカロラ。
「君達、虚勢は無駄。邪魔だから、さっさと帰るのが吉」
言葉は少ないが、こちらも二人に対して挑発をして見せたのは、二人に比べると身長は低いが、その体をフード付きの外套ですっぽりと覆っており、その姿が良く認識できない存在の魔族エドハルト。
この三人が二つの空席である四星の座を争っている三人の魔族であり、最終試験として【鋭利な盾】を始末するために我先にとアルゾナ王国方面に向かっている。
丁度目標である【鋭利な盾】が数日前にアルゾナ王国に帰還したと三人共に情報を得ているので、一刻も早く残りの二人を出し抜いて始末する事だけを考えて移動する。
この三人の中で、動きを阻害する手段に最も長けているのはフード付きの外套をすっぽり被っているエドハルト。
三人共に互いが敵と認識しているので、二人に気が付かれない程微弱な魔術を継続的に行使し続ける。
その魔術は行動阻害の術の一つで、支援魔術の中で身体強化と対局に位置する魔術、身体弱化だ。
身体強化は自らの魔術を使って自分自身を強化できるし、支援魔術として受け取る事も出来る。
その真逆の効果がある身体弱化は支援魔術の一つとして存在しているのだが、これを二人の魔族に分からない程徐々に行使しているエドハルト。
自分の行動もそれに合わせて徐々に遅くし、一人だけ出し抜いている様な行動を見せない程の手の打ちようだ。
当然残りの二人も、同じように出し抜く事を考えながら移動している。
魔術を得意とするレベニは、目標である【鋭利な盾】を見つけた瞬間に二人の魔族を巻き込むように魔術を行使しようと思っているし、体術を得意とするカロラも同じ様に、【鋭利な盾】を見つけた瞬間に一人だけ全力で突進して、一気に勝負を決めてやろうと思っている。
三人共に互いの足を引っ張る事や出し抜く事に意識を割きつつ移動している。
いよいよ残り数十分でアルゾナ王国に到着すると言った所で……
「二人は邪魔。僕は先に行く」
突然エドハルトが止めとばかりに、あからさまに身体弱化の魔術をこれでもかと言わんばかりにレベニとカロラにかけると、そのまま走りさる。
流石にここまであからさまであれば、どのような術を掛けられたか分かる二人。
通常であればレジストできるのだが、意識が他の二人を出し抜く事に向きつつ移動していたところに、術を隠蔽するように徐々に継続して掛けられていた状態であり、既にかなり身体弱化の影響下にあった。
そこで止めを刺される形になったため、レジストする事が出来なかったのだ。
「クズ野郎!」
「テメー!まちやがれ!」
後方から聞こえて来る罵声を嬉しそうに聞きながら、エドハルトは全力で移動して二人を大きく引き離す。
とは言っても、同じようなレベルの二人に対して掛けた術。
そう長い時間は持たないだろうと言う事も理解しており、この短い時間を使ってさっさと【鋭利な盾】を始末するべく動き出す。
残された二人は人族が歩く速度程度でしか動く事が出来ず、ここに万が一にも【鋭利な盾】が攻撃を仕掛ければ、容易く葬る事が出来ただろう。
出し抜かれた悔しさを滲ませつつ、必死で足を前に進める二人。
その移動にはかなりの時間が必要になり、逆に二人を結束させるだけの時が出来てしまった。
「ケケケケ、あの野郎、許せない。おい!カロラ!!あのクズが【鋭利な盾】を仕留めようがどうしようが、俺とカロラが新たな四星だ」
「珍しく同意できるぜ、レベニ。あのクソ野郎、この俺様をコケにしやがって、報いを受けさせてやるぜ」
こうして、同じレベルの魔族二人からも狙われる事になってしまったエドハルトは、あえなくアルゾナ王国付近で死亡する事になる。
これが、【鋭利な盾】が魔族を一人倒したと言う真相であり、決して【鋭利な盾】自身の実力で倒せたわけではない。
もちろん【鋭利な盾】もSランクギルドとして最大限の攻撃を行い、何故か先行していた魔族の一人であるエドハルトは難なく倒せたのだが、後から来た二人の魔族であるカロラとレベニにはその攻撃は一切通じていなかった。
先行していたエドハルトが敢え無く死亡したのは、後方から追っているカロラとレベニによってほぼ致命傷を負っていたからだ。
エドハルトが死亡した直後、対面する【鋭利な盾】の主力部隊である三人の冒険者と、四星の席を手中に収めたと確信しているカロラとレベニ。
「テメーラが【鋭利な盾】とか言う連中だな?」
「フォッフォッフォッフォッ、せっかちな若造じゃの~。確かに儂らが【鋭利な盾】じゃよ。儂はギルドマスターをしておるホスフォじゃ、ヒヨッコ共」
魔族の一人を敢え無く倒す事が出来た事から、心にも余裕ができている【鋭利な盾】。
カロラの問いかけに応えたのは、【鋭利な盾】のギルドマスターでもあり、アルゾナ王国唯一のSランカーでもある老人のホスフォ。
白髪を束ねて、いかにも魔術を使いますと言わんばかりに、立派な杖を掲げている。
実際明らかに老人と分かる年齢まで現役Sランカーでいられるのだから、相当な技量がある事が伺えるが、そんなホスフォの言葉を聞いても焦りもしない魔族の二人。
「ケケケケ、雑魚が勘違いしたようで・・・・・・この男はちょっとした事情で、俺達が始末していたところ、お前らの攻撃が止めになっただけ。普通なら、あんな攻撃食らってもびくともしないけどね」
レベニが、既に死亡している元同僚のエドハルトの死の真相をおかしそうに説明するが、もう一人の魔族であるカロラは四星を確定させるべく動き出す。
「おい、レベニ。口で言ってもわからねーだろ?そもそも、俺達は【鋭利な盾】を壊滅させる事が四星の条件だ。せっかく余計な奴が居ねーんだから、さっさと片付けようぜ」
言うや否や、長身で筋骨隆々のその体を活かしてホスフォに襲い掛かる。
ホスフォは反射的に防御魔術を行使する。
「チッ、流石にいきなり始末はできねーか」
一旦距離を取るカロラだが、その右手には・・・・・・ホスフォの右手が握られていた。
「「ホスフォさん!」」
ホスフォに同行している【鋭利な盾】のAランカー二人は、有得ない事態に驚愕する。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
88
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる