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王族の姿
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バ~ン!
中々いい音を鳴らしてフロキル王国国王の私室の扉が開いた。
通常であればこの時点で不敬罪の適用であるが、この扉を開けたのはクズ国王の子供なのでそのような状況にはならない。
常日頃から傍若無人に振舞っているようで、当然近衛騎士達も自分の身可愛さから一切の注意などしていなかったらしい。
この場にいる近衛騎士隊長の表情が一切変わらなかったのが良い証拠だ。
国王の目の前で行わている事態を、自分より身分が上である立場の宰相や国王自身が咎めないのだから当然だ。
そして出来上がった作品が、きつい目をして他人を値踏みするような顔をしている王族一行だ。
体格は国王に似て男女問わずにまん丸としており、内面と外面共に最も近づきたくない人種であることが即座に判断できるほどだ。
唯一まともな体形をしているのが一人だけ・・・あれは長女だったか?
俺の記憶によれば、丸っとした連中も子供時代はもう少しましだった気がするのだが、長年の歳月がある意味こんな怪物を生成したのだろう。
『プ・・おいおい、ロイド、何だありゃ?あれが王族か?どっかの豚小屋から逃げ出した豚一行かと思ったぜ』
『ヘイロン様のおっしゃる通りですね。あまりにも見苦し過ぎます。あのように服飾だけ豪華にしていても、王族としての気品がなさすぎます・・・いえ、この国にそのような事を期待してはいけないのですね』
『ヘイロンとナユラの言う通りだな』
俺は、あまりにも変わってしまった外面に唖然としつつも、何とか二人に返事をすることができた。
「父上、最近の食事は目に余る。なんですかあの量は?」
「そうですよ。こんなに毎日少ない量では死んでしまいます」
いきなり予想通りの内容をわめきたてている豚一行。思わずヘイロンの突っ込みが入る。
『いやいや、お前らは数日食わずともそんなに簡単に死なねーよ!たっぷりと体に栄養をため込んでいるじゃねーか』
『あのような体では、騎士道精神など育つわけがない!』
そんな会話を聞いたスミカが、不安そうに呟いた。
『私も食事が美味し過ぎて食べ過ぎてるから・・・いっぱい運動しないと・・・』
『スミカは全く問題ねーだろ。なんて言ったってテスラムさんの修行を毎日こなしてるんだ。逆にあれくらい食わねーと体が持たねーぞ』
さりげなく優しいフォローができるのもヘイロンらしい。
一方、周りへの配慮などは一切行う事の出来ない王族連中は、
「父上、何とかおっしゃってください」
「そうです。今日なんかパン、スープ、お肉、サラダだけで”おかわり”がなかったんですよ?」
『ブハハ、こいつら十分贅沢な飯食ってるじゃねーか。文句の内容が”おかわりがない”だってよ!頭大丈夫か?現状が理解できてねーのか??』
ある意味王都内に監禁状態で、食料の入手ができていないこの状況。
理解できていればこのようなセリフは出てこないはずだ。
むしろ、ナユラやキルハ国王であれば国民を優先にして、王城の面々は更に質素な食事にするように指示を出すだろう。
一方、俺達が要望を安全に無視してこの私室からいなくなったと思っているフロキル王国国王は、この豚一行に力なく答える。
「お前達、昨日伝えたではないか。我がフロキル王国は緊急事態に陥っておる。最早食料は枯渇しているのだ。この状況でそれだけの食事ができているのを感謝こそすれ、非難するとは何事だ!」
だんだんと元気を取り戻せたようで何よりだ。
「そうは言っても父上!いきなり半分以下の食事量になっているのですよ?我らはこのフロキル王国の次代を担う貴重な人材。多少の無理は押し通してでも優遇されるべきではないですか?」
「兄上のおっしゃる通りです。それに緊急事態と申されましても、魔獣達は第二防壁すら超えてきていない状況ではないのですか?第二防壁内部にある畑はどうなっているのでしょうか?」
「確かに第二防壁を超えられてはいない。だが、第二防壁にはギルドマスターの報告によれば既に人々は存在していないのだ!当然畑など荒らされた後だ!!」
ギルドマスターを見る豚一行。
そして、彼の右手がない事に気が付いた。
ぬくぬくと王城内部で甘やかされていた連中が、初めて目にした大怪我だ。
それが今回の緊急事態によるものだと言う事は、いくら豚でも理解できたらしい。
激しく動揺しているが、結局は自分で何かを考えると言うようなことはできない。
「そ、それではどうするのですか?」
「それがわかれば苦労はないわ!!」
ダーン・・・・
怒りのあまりに目の前の机を蹴り飛ばす国王。
ヘイロンに机と共に蹴り飛ばされたあの机だ。
だが、あんなに醜く太った国王の蹴りなどではそこそこの音がするだけで大して動いてはいないが、豚一行には強烈なインパクトがあったようだ。
普段こいつらに甘い顔をしていたのだから、今回もこのふざけた陳情が通ると思っていたところ、見た事もないような怒りを露わにしているのだ。
これ位そよ風にすら感じないのだが、豚一行はお互いに体を寄せて震えている。
だが、ここまで一言も発していない唯一まともな体形をしている長女だけは怯えている様子はない。
『ブハハハ、こいつら抱き合うのは良いけどよー、腹しか当たってねーじゃねーか!!どんだけ醜い体なんだよ!!』
「貴様ら!あのロイドを覚えているか?基礎属性を持たずにユリナスと共に王族を追放したあのロイドだ」
国王のこのセリフを聞いて、ヘイロン、アルフォナ、そしてヨナから殺気が漏れる。
『皆さん、この程度で殺気が漏れてしまうのは修行が足りない証拠ですぞ。多少心が乱れるのは許しましょう。私も理解できます。ですが、それを簡単に表に出してはなりません。良いですね?』
テスラムさんがすかさず咎め、三人が殺気を抑えてくれた。
いくらヨナの<闇魔法>で俺達の存在を隠蔽していたとしても、彼らの本気の殺気が漏れてしまえば、いくら技量のないこの部屋のフロキル王国の面々でも何かしら気が付いてしまうだろう。
「はい、覚えております父上。第二王子であるゾルドンの下・・・第三王子だった者ですね?」
「ああ。そいつが<六剣>所持者全員を引き連れてさっきまでここにいた」
そう言いつつ、ギルドマスターを睨む国王。
ギルドマスターは、第二防壁内部での悪事や、右手を失った本当の経緯が国王に漏れたと分かったのか、滝のような汗をかいている。
水も不足しているのに大丈夫か?と言いたくなるほどだ。
「いいか、お前達にも現状をはっきりさせてやる。我が国は第三防壁に魔獣の侵入を許し、更には第二防壁内部に避難してきた連中も全て死亡している。この国に残っているのは最早我らだけだ。そして、外部からの救出の可能性もなく、食料・水も枯渇する。打つ手がないのだ!!」
「そんな馬鹿な!それはロイドが言っていたのですか?そもそもロイドはどこにいるのですか?」
俺達の来襲や打つ手のない現状を聞かされたこの場にいる連中は、ある程度理解てきていたのか沈痛な面持ちをしている。
だが、事の重大さを今の今迄理解しようともしていなかった豚共は、何かと喚き散らしている。
「ロイドは、<六剣>を従えていた。つまり、明言はしていなかったが奴が<無剣>を持っているのだろう。そうでなくては<六剣>を従えられるわけがない。その力を使って、転移できるようだ。つまり、あ奴らはもうこの国にはいない!!安全な場所に避難済みだ」
このセリフに少々驚いた。
確かに俺は<無剣>所持者であるとは一切言っていないのだ。
そこからある程度の結論に達することができているのだから、あながち完全な無能ではないと言う事が証明された。
『そこそこ状況判断はできたんだな。国王ともなれば<六剣>についての詳細な情報もある程度はわかっているだろうし当然か?』
『ロイド、そんな事で関心なんてしてんなよ。当たり前だろうが!!』
俺は、ヘイロンに突っ込みを入れられるほど驚いていたようだ。
そして、ようやく現実を理解した豚一行。
こいつらも腐っても王族。<六剣>の力については知識があるはずだ。
「そんな、あのロイドが・・・そうだ!我らには魔族殺しの英雄、ゾルドンがいたはずだ。あいつは?それに、宝物庫のアイテムを全て開放すれば我らも貴重な戦力になる!!」
「バカモンが!!ゾルドンなど既に死んでいるわ。宝物庫の中身を売り渡した挙句に大した戦果もあげずにだ!!」
「ほ、宝物庫の中身を売り渡した??」
「そうだ。あいつはロイドに命を救ってもらう見返りとして宝物庫の中身を渡した逆賊だ!!」
ようやく豚にも打つ手がないと理解できたようで何よりだ・・・
中々いい音を鳴らしてフロキル王国国王の私室の扉が開いた。
通常であればこの時点で不敬罪の適用であるが、この扉を開けたのはクズ国王の子供なのでそのような状況にはならない。
常日頃から傍若無人に振舞っているようで、当然近衛騎士達も自分の身可愛さから一切の注意などしていなかったらしい。
この場にいる近衛騎士隊長の表情が一切変わらなかったのが良い証拠だ。
国王の目の前で行わている事態を、自分より身分が上である立場の宰相や国王自身が咎めないのだから当然だ。
そして出来上がった作品が、きつい目をして他人を値踏みするような顔をしている王族一行だ。
体格は国王に似て男女問わずにまん丸としており、内面と外面共に最も近づきたくない人種であることが即座に判断できるほどだ。
唯一まともな体形をしているのが一人だけ・・・あれは長女だったか?
俺の記憶によれば、丸っとした連中も子供時代はもう少しましだった気がするのだが、長年の歳月がある意味こんな怪物を生成したのだろう。
『プ・・おいおい、ロイド、何だありゃ?あれが王族か?どっかの豚小屋から逃げ出した豚一行かと思ったぜ』
『ヘイロン様のおっしゃる通りですね。あまりにも見苦し過ぎます。あのように服飾だけ豪華にしていても、王族としての気品がなさすぎます・・・いえ、この国にそのような事を期待してはいけないのですね』
『ヘイロンとナユラの言う通りだな』
俺は、あまりにも変わってしまった外面に唖然としつつも、何とか二人に返事をすることができた。
「父上、最近の食事は目に余る。なんですかあの量は?」
「そうですよ。こんなに毎日少ない量では死んでしまいます」
いきなり予想通りの内容をわめきたてている豚一行。思わずヘイロンの突っ込みが入る。
『いやいや、お前らは数日食わずともそんなに簡単に死なねーよ!たっぷりと体に栄養をため込んでいるじゃねーか』
『あのような体では、騎士道精神など育つわけがない!』
そんな会話を聞いたスミカが、不安そうに呟いた。
『私も食事が美味し過ぎて食べ過ぎてるから・・・いっぱい運動しないと・・・』
『スミカは全く問題ねーだろ。なんて言ったってテスラムさんの修行を毎日こなしてるんだ。逆にあれくらい食わねーと体が持たねーぞ』
さりげなく優しいフォローができるのもヘイロンらしい。
一方、周りへの配慮などは一切行う事の出来ない王族連中は、
「父上、何とかおっしゃってください」
「そうです。今日なんかパン、スープ、お肉、サラダだけで”おかわり”がなかったんですよ?」
『ブハハ、こいつら十分贅沢な飯食ってるじゃねーか。文句の内容が”おかわりがない”だってよ!頭大丈夫か?現状が理解できてねーのか??』
ある意味王都内に監禁状態で、食料の入手ができていないこの状況。
理解できていればこのようなセリフは出てこないはずだ。
むしろ、ナユラやキルハ国王であれば国民を優先にして、王城の面々は更に質素な食事にするように指示を出すだろう。
一方、俺達が要望を安全に無視してこの私室からいなくなったと思っているフロキル王国国王は、この豚一行に力なく答える。
「お前達、昨日伝えたではないか。我がフロキル王国は緊急事態に陥っておる。最早食料は枯渇しているのだ。この状況でそれだけの食事ができているのを感謝こそすれ、非難するとは何事だ!」
だんだんと元気を取り戻せたようで何よりだ。
「そうは言っても父上!いきなり半分以下の食事量になっているのですよ?我らはこのフロキル王国の次代を担う貴重な人材。多少の無理は押し通してでも優遇されるべきではないですか?」
「兄上のおっしゃる通りです。それに緊急事態と申されましても、魔獣達は第二防壁すら超えてきていない状況ではないのですか?第二防壁内部にある畑はどうなっているのでしょうか?」
「確かに第二防壁を超えられてはいない。だが、第二防壁にはギルドマスターの報告によれば既に人々は存在していないのだ!当然畑など荒らされた後だ!!」
ギルドマスターを見る豚一行。
そして、彼の右手がない事に気が付いた。
ぬくぬくと王城内部で甘やかされていた連中が、初めて目にした大怪我だ。
それが今回の緊急事態によるものだと言う事は、いくら豚でも理解できたらしい。
激しく動揺しているが、結局は自分で何かを考えると言うようなことはできない。
「そ、それではどうするのですか?」
「それがわかれば苦労はないわ!!」
ダーン・・・・
怒りのあまりに目の前の机を蹴り飛ばす国王。
ヘイロンに机と共に蹴り飛ばされたあの机だ。
だが、あんなに醜く太った国王の蹴りなどではそこそこの音がするだけで大して動いてはいないが、豚一行には強烈なインパクトがあったようだ。
普段こいつらに甘い顔をしていたのだから、今回もこのふざけた陳情が通ると思っていたところ、見た事もないような怒りを露わにしているのだ。
これ位そよ風にすら感じないのだが、豚一行はお互いに体を寄せて震えている。
だが、ここまで一言も発していない唯一まともな体形をしている長女だけは怯えている様子はない。
『ブハハハ、こいつら抱き合うのは良いけどよー、腹しか当たってねーじゃねーか!!どんだけ醜い体なんだよ!!』
「貴様ら!あのロイドを覚えているか?基礎属性を持たずにユリナスと共に王族を追放したあのロイドだ」
国王のこのセリフを聞いて、ヘイロン、アルフォナ、そしてヨナから殺気が漏れる。
『皆さん、この程度で殺気が漏れてしまうのは修行が足りない証拠ですぞ。多少心が乱れるのは許しましょう。私も理解できます。ですが、それを簡単に表に出してはなりません。良いですね?』
テスラムさんがすかさず咎め、三人が殺気を抑えてくれた。
いくらヨナの<闇魔法>で俺達の存在を隠蔽していたとしても、彼らの本気の殺気が漏れてしまえば、いくら技量のないこの部屋のフロキル王国の面々でも何かしら気が付いてしまうだろう。
「はい、覚えております父上。第二王子であるゾルドンの下・・・第三王子だった者ですね?」
「ああ。そいつが<六剣>所持者全員を引き連れてさっきまでここにいた」
そう言いつつ、ギルドマスターを睨む国王。
ギルドマスターは、第二防壁内部での悪事や、右手を失った本当の経緯が国王に漏れたと分かったのか、滝のような汗をかいている。
水も不足しているのに大丈夫か?と言いたくなるほどだ。
「いいか、お前達にも現状をはっきりさせてやる。我が国は第三防壁に魔獣の侵入を許し、更には第二防壁内部に避難してきた連中も全て死亡している。この国に残っているのは最早我らだけだ。そして、外部からの救出の可能性もなく、食料・水も枯渇する。打つ手がないのだ!!」
「そんな馬鹿な!それはロイドが言っていたのですか?そもそもロイドはどこにいるのですか?」
俺達の来襲や打つ手のない現状を聞かされたこの場にいる連中は、ある程度理解てきていたのか沈痛な面持ちをしている。
だが、事の重大さを今の今迄理解しようともしていなかった豚共は、何かと喚き散らしている。
「ロイドは、<六剣>を従えていた。つまり、明言はしていなかったが奴が<無剣>を持っているのだろう。そうでなくては<六剣>を従えられるわけがない。その力を使って、転移できるようだ。つまり、あ奴らはもうこの国にはいない!!安全な場所に避難済みだ」
このセリフに少々驚いた。
確かに俺は<無剣>所持者であるとは一切言っていないのだ。
そこからある程度の結論に達することができているのだから、あながち完全な無能ではないと言う事が証明された。
『そこそこ状況判断はできたんだな。国王ともなれば<六剣>についての詳細な情報もある程度はわかっているだろうし当然か?』
『ロイド、そんな事で関心なんてしてんなよ。当たり前だろうが!!』
俺は、ヘイロンに突っ込みを入れられるほど驚いていたようだ。
そして、ようやく現実を理解した豚一行。
こいつらも腐っても王族。<六剣>の力については知識があるはずだ。
「そんな、あのロイドが・・・そうだ!我らには魔族殺しの英雄、ゾルドンがいたはずだ。あいつは?それに、宝物庫のアイテムを全て開放すれば我らも貴重な戦力になる!!」
「バカモンが!!ゾルドンなど既に死んでいるわ。宝物庫の中身を売り渡した挙句に大した戦果もあげずにだ!!」
「ほ、宝物庫の中身を売り渡した??」
「そうだ。あいつはロイドに命を救ってもらう見返りとして宝物庫の中身を渡した逆賊だ!!」
ようやく豚にも打つ手がないと理解できたようで何よりだ・・・
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