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サフィの今後

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 もう!この元王女様ったら!!

 この私があまりにも完璧すぎるので嫉妬でもしているんじゃないかしら。



 そんなんだから王族から追放されてしまうんですよ?



 私は完璧な淑女ですから、そんなことは口にはしませんけどね。



 それに、私の身元はあの初老の執事さんが話したではありませんか?

 お父様と、あの場では話に出てきていませんが、家族も魔獣に飲まれたであろうかわいそうな淑女のソフィです。



「どうされたのでしょうかナユラ様。彼女はこの冒険者ギルドに長く務める者の推薦がありまして、一応の調査はしましたが、フロキル王国冒険者ギルドで務めていたこと、そして男爵家の令嬢である事は把握しております。何か問題がありましでたしょうか?」



 ホラごらんなさい。

 ギルドマスターともあろう方が、職員の採用に当たって調査をしないわけないじゃありませんか。

 ギルドマスターに失礼ですよ。

 これだから元王族は困ります。私たちの仕事を把握していないのに口だけ出してくるのですから・・・



 そんな私の思い等伝わるわけもなく、ナユラ様は尚ギルドマスターに噛みついています。

 本当にはしたない。



「そんなことはわかっています。その職に就いていた際の勤務状態を調査したのかを聞いています」

「申し訳ありません。そこまでは調べておりません。今のフロキル王国はあのような状態ですので調べようがないと言う事もあるのですが・・・本来は異なるギルドで業務を行うことになった場合、どのような理由であっても前職場のギルドマスターから情報を得ることになりますが、その情報も得られる状況ではございませんので・・・」



 そうですよ。私の祖国の王都は大惨事になっていると言う事はナユラ様もご存じのはずじゃないですか。

 帰る場所もなくなった可哀そうな淑女が必死で生活をしようとしているのに、何をケチつけているのでしょう。



 ですが、ナユラ様の暴言は収まる気配すら見せません。

 何度も言いますが、こんな態度では王族・そして淑女失格!落第です。



「そうですか。長きに渡って働いている方の推薦、そして確かな身分の証明ができていればこれ以上の調査は不要と考えるのも仕方がないことかもしれません」



 ふ~、ようやく収まっていただけたようです。

 本当にしつこい・・・いえ、はしたなかったですね。あきらめの悪い女性です。



「ナユラ、そこで引っ込むのかよ?」

「ナユラ殿、こんな中途半端でいいのか?騎士道精神を持って完遂するべきではないか?」



 野蛮人と裏切者は余計な事を言わない!!



 ですが、私の思いは打ち砕かれてしまいました。

 ここまで来ると高貴な私への妬みからの嫌がらせとしか思えません。



「いえ、これで終わりにするつもりは一切ありませんよ、ヘイロン様、アルフォナ様!」



 余計に火が付いたようなナユラ様。

 こんな野蛮人や裏切者に囲まれて生活をすると、いくら高貴な血を持っていても汚れていくのでしょうか?

 私も気を付けなくてはいけませんね。

 今からでも少し距離を取った方が良いのかしら?



 そう思って、少しだけわからないように彼らから距離を取る。

 でも、あからさまにしたり、大きく距離を開けることはできないわ。淑女ですから。



「ではギルドマスター、私ナユラから依頼を出します。依頼先は元フロキル王国冒険者ギルド所属の冒険者達とさせていただきます」

「元フロキル王国所属の冒険者限定でございますか?」

「ええ、そうです。彼らにのみ達成できる依頼ですから」



 少し嫌な笑顔を見せるナユラ様。

 そして、ざわめく冒険者達。



 とくにフロキル王国に所属していた冒険者達のざわめきが大きくなっています。本当に野蛮人ですね。

 きっと、元とはいえ王族からの依頼ですから、達成するとかなりの報奨金が出るのでしょう。

 それをあてにして騒めいているにちがいありません。



 本当に下賤な者達は嫌になりますね。



「ではどのようなご依頼でしょうか?」

「そうですね、ここでは何ですからギルドマスターのお部屋でお話をさせて頂けませんでしょうか?」



 チラッと私を見たのに気が付いていますよ?

 なんですか?私はギルドマスターと直接話せると言う自慢ですか?



 そんな事では淑女レベルは上がりませんよ?



 ですが、これ以上ここにいても何も良い事はないと思った私は、淑女らしく一礼して受付に戻ることにしたわ。



 そして、彼一行とギルドマスターが奥の部屋に消えて何かを話している間も、リスド王国の冒険者達の相手をしていたの。

 正直どんな依頼を出しているのか気になっているのですけれど、グッとこらえて笑顔で受付しているの。

 こんなことで、ダイヤの原石を逃すのもバカバカしいですからね。



 それに、依頼内容なんて、受付の私には嫌でもわかる事ですから・・・



 その間、何故か私からはかなり離れた位置に座っている受付がギルドマスターに呼ばれ、戻ってくると、この場にいるフロキル王国の冒険者達を一人ずつ奥の部屋に連れて行ったの。

 一人一人が何かをギルドマスターと話しているみたいですけれど、大した時間もなく話は終わっているみたい。



 やがて、数十人?位の冒険者達との話が終わったのでしょうか、担当していた受付が最後の冒険者にお礼を言った後に、私について来るように伝えてきました。



 何でしょうか?フロキル王国での真面目な勤務態度でも確認していたのでしょうか?

 もしかして・・・お給料増額とか、特別手当とか、まさかの彼専属受付なんて言う事もあるかもしれませんね。



 私を呼びに来た受付は、きっと私を羨んでいるのでしょう。恨みがましい目で見てきましたが、一々そんな人達に構っていては身が持ちません。

 これからは、もっと嫉妬による理不尽な扱いも受けてしまうかもしれないのですから、この程度で心を乱すようではいけません。



「ギルドマスター、サフィを連れてきました」

「入れ」



 間もなく私の輝かしい未来の一歩を踏み出すのかと思うと、心が躍って仕方がありません。



 私を連れてきた受付は、ギルドマスターと彼一行に礼をするとそのまま受付に戻って行きました。



「そこに座れ」



 あれれ?なんでしょうか?ギルドマスターも少々妬みが表れているようです。私への態度が少しきつい気がします。

 これはもしかして、王族の仲間入りなのでしょうか?



 でもマスター、安心してください。私を即雇う決断を下す事ができたマスターは有能です。

 私が王族になっても、多少は優遇して差し上げますから。



「フフフ、失礼します」



 おっといけない。笑い声が漏れてしまいました。気を付けなければいけませんね。



「たった今ナユラ様からの特別依頼が終了した。依頼内容はお前のフロキル王国での勤務時の態度だ」



 あら、そうなのですか。成程、それでフロキル王国で活動していた冒険者を個別に呼んでいたのですね。

 納得です。



 そうすると、今この場では私が王族に加わる話ではなく、特別報酬や専属の話ですね。

 私はフロキル王国のギルドでは、全ての仕事をそつなくこなしていましたから。



 ですが、私の思いとは裏腹に、ギルドマスターの言葉は冷たい物でした。



「お前、フロキル王国では随分とロイド様やヘイロン殿に理不尽な扱いをしていたそうだな。今面談した全ての冒険者がまるで示し合わせたかのように同じことを言っていたぞ」

「いいえ、そんなことはありません。私はフロキル王国のギルドマスターの指示通りに業務を行っただけです」



 そうです。上司の命令に従っただけなのに何を言っているのでしょうか?

 そもそも、上司からの命令を無視する方がもっと悪いじゃないですか。



「その指示内容が理不尽であったにもかかわらずか。それに、お前は喜々としてロイド様達の報酬を不当に搾取していた。指示だけではそんな態度にはならないだろう。お前は自ら率先して悪事に手を貸したんだ!」



 そのまま机を拳で叩きつけるギルドマスター。



 あまりの剣幕に、何も反論できず涙が出そうになります。
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