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戦力確保

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 キュロス辺境伯とリアナ姉さん、そしてあろうことかキルハ王子は<六剣>配下になる事によって得られた力の大きさを甘く見積もり、甚大な被害を生み出してしまった。



 かなり鍛錬を積んでいた者であれば、得られた力の強大がわかるので加減をすると思うのだが。



 正に魔族、いや悪魔が攻めてきたと言っても疑う者がいない程の破壊っぷりだ。



 まずはキュロス辺境伯。



 本来、キュロス辺境伯程の御仁であれば、得られた力を理解してある程度制御できる力があるのだが、武に対して貪欲であり続けている辺境伯。

 力を試さずにはいられなかったようだ。



 自制と欲求が戦い、あえなく自制が惨敗したと言った所だろう。



 辺境伯領の強大な敷地には、それぞれの戦闘方法に適した鍛錬場が多数ある。

 逆に言うと、自らの武器が適さない環境で鍛錬を行う事で、より実力を上げることができる・・・と言う辺境伯の持論から整備されている物だったりする。



 このあたりについては、自分としても同意する。



 アルフォナなどは、その話を聞いて感激していたほどだ。

 騎士道精神がくすぐられたのだろうか。



 そして今回しでかしたのが・・・数ある鍛錬場の内、最も破壊力を出すことができる場所。

 つまり、物理や魔法による耐性を最も高く設定している鍛錬場になる。

 一方で、最も時間と費用を費やして作成した場所でもあるのだが・・・



 相当数の魔道具を鍛錬場外周に設置している構造上、他の鍛錬場とは若干離れているのだが、今回はその状況が功を奏したようで、他人に被害はなかった。



 だが、あくまでも偶然だ。本当に気をつけて貰いたいものだ。



 そして、キュロス辺境伯は俺達が渡した国宝の両手剣を使用したようだ。



 ・・・そうだ、よく考えてみたら国宝の武具も渡していたんだった。つまり、<六剣>配下の力に加えて武具の力も得ていたことになる。



 あれ?この大惨事ってもしかして俺達のせいでもあるのか?



 いや、そんなことはないな。

 何れにしても、力は制御できてナンボだ。

 そうだ。俺達のせいじゃない。

 いや、縦しんばそうだとしても・・・力を与えたのはヘイロンだ。俺じゃない。



 話を戻そう。

 テスラムさんの情報によれば、キュロス辺境伯は両手剣を天高く掲げると、その剣に炎を纏わせた。



 力を得ていきなり剣に基礎造成の魔法を付与することができるとは、かなりの手練れであることがわかる。

 いや、手練れだからこそ手加減しろと言う話だが・・・



 そして、その炎は赤から青に色を変えて凝縮された。そのまま剣を地面に突き刺した所、キュロス辺境伯を中心に大爆発が起きた。



 無事なのはキュロス辺境伯が立っている数十センチのみ。

 そして周りはマグマのように真っ赤に染まってグツグツ沸騰している岩。



 少々離れた位置には爆風で飛び散った岩・・・



 一瞬だけ唖然としたキュロス辺境伯だが、突然大声で笑いだしたらしい。



「ハハハハハ、素晴らしい!素晴らしいぞ!!これぞ私が思い描いた武の一端。だが、まだまだ。もっとこの力を使いこなして見せよう」

「キュロス様!何をしでかしてくれているんですか!!!!」



 そして、喜んでいる所にかなり遠くから怒りの声がキュロス辺境伯に向かって飛んできた。



 もちろんマグマ状態になっている中心部にいるキュロス辺境伯に近づく術がないのだから、遠くから叫ぶしかない。



「しまった。どうするか・・・これは言訳ができんか?だが、諦めたらそこで終わりだ。考えるんだキュロス!!これまでも窮地を脱してきただろう!!」



 なんだか良い事を言っているような感じだが、何とか怒られないように言訳を考える子供の様なキュロス辺境伯。



 しかし、怒れる奥方を前に焦りを隠せなくなり、ついには観念したようだ。

 マグマ状態の地面をものともせずに歩き、怒りの震源地に向かって男らしく堂々と向かった。

 <炎>の基礎属性を持ち<炎剣>の配下なのだから、あの程度のマグマは問題ないらしい。



 男らしく向かったのは良いのだが、当然こんな大惨事を引き起こした言訳など出るわけもなく、奥方にこっぴどく怒られたキュロス辺境伯。

 正座させられて涙目になっていたのは聞かなかったことにしてあげよう。



 と言うよりも、テスラムさん・・・そこまで具体的に教えてくれなくても良いよ。ちょっと悲しくなるから。



 キュロス辺境伯の騎士達に力を与える時は十分にその辺りを注意しておかないと、二次災害が起こる可能性がある。

 キュロス辺境伯は自身がこれ以上ない程経験したため、配下には気を付けるように言ってくれるだろう。



 特に、基礎属性を司る全ての<六剣>の配下を配置するのだから、被害状況も大きく異なる。

 今回の<炎>でこの状態だ。<水>であれば、全てが押し流されている・・・なんて言う事も有り得るかもしれない。







 そして、ここリスド王国の王城。

 目の前には、まだ少しオロオロしているキルハ国王とリアナ姉さん。



「お二人とも大丈夫ですよ。見たままの損害だけでどなたも怪我はしておりません」



 テスラムさんが優しく状況を説明してくれた。



 さしあたり人的被害がない事を確認できた二人は、少しだけ肩の力が抜けたようだ。



「しかし、力を制御できなくてはその力をものにしたとは言えません。如何でしょうか?もしよろしければこの私テスラムが手解きいたしましょうか?」



 ヘイロンとスミカの顔が、酸っぱいものを食べた様な表情に変わったが、気が付かないことにする。



「それがいいですね。是非ともそうしてください。ところでお兄様!!国王たるもの常に自制が必要です。それがどうしてこのようになってしまうのですか?少々テスラム様に厳しく修行をつけて頂く必要がありますね?」



 ナユラが目が笑っていない笑顔でキルハ国王に厳しい指摘をする。

 リアナ姉さんもしょんぼりしてしまった。



 そして、相変わらずのヘイロンとスミカ。

 ナユラのセリフ・・・厳しく修行・・・を聞いた瞬間に苦虫を嚙み潰したような顔に変わった。



 こいつら、本当にブレない奴らだ。



 しかし、力は制御できるようになるのは必須だ。

 この王城の鍛錬場は、キュロス辺境伯の鍛錬場以上に各種耐性が付与されていた。

 にもかかわらず、辺り一面を更地・・・いや、瓦礫の山に変えるほどの力を出してしまったのだから、万が一の戦闘時に味方に甚大な被害を与えてしまうかもしれない。



「ナユラの言う通りだ。テスラム殿、よろしくお願いする」

「私もよろしくお願いいたします」



 キルハ国王とリアナ姉さんの修行が決定した瞬間だ。

 同時に、新たな<六剣>配下・・・当然キュロス辺境伯を含む面々の修行も決定した。



 そして数日後、キュロス辺境伯本人と選抜された騎士、そしてキルハ国王とリアナ姉さん、リスド王国選抜騎士達が俺達の前に揃っている。



 テスラムさんによれば、ここまで大きな被害を出すほどの攻撃?をしてしまった以上、悪魔側に情報は確実に伝わっているとの事で、実際に魔王城の中で<六剣>復活の情報が伝わったことを確認したらしい。



 とすると、<六剣>について秘匿する必要が薄れたため、配下の面々には当然情報を共有することにした。



 もちろん余計な情報が洩れる事を防ぐために、ここにいる面々の事前調査は実施済みだ。

 悪意のある者は配下にはなれないのでその時点で排除はできるが、与えてしまった情報は消すことはできない。



 この場にいる面々に対しての説明は、リスド王国のキルハ国王がしてくれる。

 もちろんフォローは俺・・・ではなくテスラムさんが行う。



 情報を開示し、<六剣>の基礎属性と同一の基礎属性を持つ者達が配下になる。

 配下となった全員が、得られた力に驚きを隠せていない。

 当然彼らは宝物庫の武具を余すことなく装備している。



 最後にキルハ国王から、



「得られた力は使いこなせてこその力だ。力に溺れ暴走させてしまうと思わぬ惨事を招くことを忘れず、修行に励め!!」



 自分に言い聞かせるように宣言し、配下の修行が開始されることになった。

 属性により初めの修行方法を変えるようで、<土><風><光>は鍛錬場と王城の修復を行うらしい。



 頑張ってくれ!!
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