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(36)その頃のロイ
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まさか一国が一つの商会を相手に行動し始めるとは思ってもいないロイは、何とか体力をつけようと極力自分の足で歩く事を決意していたので、今なおテクテクと適当に街道を進んでいる。
「ふ~、もうアザヨ町からどれくらい離れたかな?体感で五時間くらい歩いたと思うんだけど?」
横には、フードで街道を移動している人々に顔を見られないようにしているハートエースが速度を合わせるようにロイと共に進み、話し相手になっている。
ハート部隊は光魔法や聖魔法を得意としている部隊でありながらも、相当な強さを持っているので護衛としての動きもできるのだが、ロイの陰の中にスペードキングがその任務で控えているので、ハートエースはその一切を完全に無視して、敬愛してやまない主であるロイとの会話を楽しみ、ロイと共に行動できる喜びをしっかりと心に刻む方向だけに意識を集中している。
「ご主人様、想像以上に進んでおります!流石はご主人様です。一旦お休みになられますか?」
単純な質問に対してもウキウキした心を抑えきれないながらも何とか返事をしているハートエースだが、実際に進んだ距離は普通の人が小一時間程度歩いた距離しか進んでおらず経過時間も二時間程度である事実を告げずに回答をしているが、カードの面々にとってはそんな事はどうでも良いのだ。
「そうだな。そうしようかな?」
「はいっ、お任せください、ご主人様!」
自分の提言が受け入れられた事で嬉しさが抑えきれなくなってしまったハートエースは、収納魔法から机、椅子、そして日よけの傘を設置すると、ロイに座るように促す。
「……あ、ありがとう」
一応この場所は街道である為に、突然出てきた椅子や立派な机に驚いている周囲の人々の視線を感じ、何か聞かれてしまった場合には、さしあたり非常に高価ではあるが収納袋から出したと言い訳でもしておけば問題ないだろうと考えるロイ。
ダイヤ部隊が作った異常な量を収納できる収納袋も全部隊がしっかりと持っているので、現物を見せる事で信頼性も上がるし……と考えているロイは、もう世間の常識からすっかりかけ離れた意識になってしまっている。
ロイがそのような事を考えているなどとは分からないハートエースは、ここぞとばかりに過剰接待の体制に入る。
「では、こちらをお飲みください!ご主人様。お口直しはこちらでございます」
素晴らしい細工がなされた食器を使って準備されたのは、軽食、お菓子、そしてダイヤ部隊特性のポーションを混ぜ込んだ極上の味がする紅茶。
周囲の視線がますます厳しくなり道行く人の速度も遅く、より視線が固定され始めていると感じているロイだが、作られたように美しい顔ながら、本当に嬉しそうな表情をしているハートエースに対して苦言を呈する事が出来なかった。
そんな優しいロイだからこそ、ここまでカードの部隊に慕われていると言う事もあるのかもしれないが、ハートエースの過剰接待はまだ続く。
「では、失礼いたします」
突然ロイの足元に座ったかと思うと、徐に足をマッサージし始めた。
「ブッ……ちょ、ちょっと、ハートエース!」
カード部隊は複数の顔立ちと性別が存在するが、同一にくくられている人物は見分けがつかない位にそっくりな中、チョーカーと追加の装飾品のおかげで完全に識別する事が出来ているロイは、ここまでされてしまっては恥ずかしいやらいたたまれない気持ちになり、真っ赤な顔をしながら慌ててマッサージしようと自分の足に触れているカードに声をかける。
「はい、何でございましょうか?ご主人様」
ハートエースとしては、何故主であるロイが慌てているような行動をとっているのかよくわからないので、必死で考えてある結論に達する。
「あ、申し訳ございません。私としたことが、配慮が足りませんでした」
少しショボンとした表情になっているのだが、一応フードによって街道でロイを伺っている面々にはその美しい顔は見えていない。
「わ、わかってくれて嬉しいよ」
ロイとしては、顔が見えていないこの状態でもこれほどの過剰な対応をされては必要以上に悪目立ちするので、そこの所に気が付いて態度を改めてくれたハートエースにお礼を告げる。
「いいえ!私としたことが、ご主人様に対して真っ当なお世話が出来ずに非常に申し訳ないと思っておりますので、ここで挽回させて頂きます」
「え?挽回?」
多少会話がかみ合わない状況に気が付き、何故かハートエースの表情にダイヤキングのイメージが浮かんでしまうロイは、嫌な汗が背中を伝わるのを止める事が出来ない。
「はい!ご主人様の御足に触れる栄誉を賜っているのに、私がこのような中途半端な状態である事が不敬です!大変失礼いたしました」
「不敬?いや、そんな事は……」
ロイが全てを言い終わる前に優しくロイの足を地面に置いてスクッと立ち上がったハートエースは、一度深く頭を下げるとフードをとった挙句に外套も外してしまう。
元からこの街道にいた人々の注目を集めてしまったロイ達だが、そこに素顔と素晴らしいプロポーションを晒してしまったハードエースがいるので、誰しもが完全に足を止めて視線を固定してしまい、この状況に耐える力を持っていないロイは何とか素顔だけでも隠して貰おうと慌てる。
「ちょ、ちょっと!」
「ふ~、もうアザヨ町からどれくらい離れたかな?体感で五時間くらい歩いたと思うんだけど?」
横には、フードで街道を移動している人々に顔を見られないようにしているハートエースが速度を合わせるようにロイと共に進み、話し相手になっている。
ハート部隊は光魔法や聖魔法を得意としている部隊でありながらも、相当な強さを持っているので護衛としての動きもできるのだが、ロイの陰の中にスペードキングがその任務で控えているので、ハートエースはその一切を完全に無視して、敬愛してやまない主であるロイとの会話を楽しみ、ロイと共に行動できる喜びをしっかりと心に刻む方向だけに意識を集中している。
「ご主人様、想像以上に進んでおります!流石はご主人様です。一旦お休みになられますか?」
単純な質問に対してもウキウキした心を抑えきれないながらも何とか返事をしているハートエースだが、実際に進んだ距離は普通の人が小一時間程度歩いた距離しか進んでおらず経過時間も二時間程度である事実を告げずに回答をしているが、カードの面々にとってはそんな事はどうでも良いのだ。
「そうだな。そうしようかな?」
「はいっ、お任せください、ご主人様!」
自分の提言が受け入れられた事で嬉しさが抑えきれなくなってしまったハートエースは、収納魔法から机、椅子、そして日よけの傘を設置すると、ロイに座るように促す。
「……あ、ありがとう」
一応この場所は街道である為に、突然出てきた椅子や立派な机に驚いている周囲の人々の視線を感じ、何か聞かれてしまった場合には、さしあたり非常に高価ではあるが収納袋から出したと言い訳でもしておけば問題ないだろうと考えるロイ。
ダイヤ部隊が作った異常な量を収納できる収納袋も全部隊がしっかりと持っているので、現物を見せる事で信頼性も上がるし……と考えているロイは、もう世間の常識からすっかりかけ離れた意識になってしまっている。
ロイがそのような事を考えているなどとは分からないハートエースは、ここぞとばかりに過剰接待の体制に入る。
「では、こちらをお飲みください!ご主人様。お口直しはこちらでございます」
素晴らしい細工がなされた食器を使って準備されたのは、軽食、お菓子、そしてダイヤ部隊特性のポーションを混ぜ込んだ極上の味がする紅茶。
周囲の視線がますます厳しくなり道行く人の速度も遅く、より視線が固定され始めていると感じているロイだが、作られたように美しい顔ながら、本当に嬉しそうな表情をしているハートエースに対して苦言を呈する事が出来なかった。
そんな優しいロイだからこそ、ここまでカードの部隊に慕われていると言う事もあるのかもしれないが、ハートエースの過剰接待はまだ続く。
「では、失礼いたします」
突然ロイの足元に座ったかと思うと、徐に足をマッサージし始めた。
「ブッ……ちょ、ちょっと、ハートエース!」
カード部隊は複数の顔立ちと性別が存在するが、同一にくくられている人物は見分けがつかない位にそっくりな中、チョーカーと追加の装飾品のおかげで完全に識別する事が出来ているロイは、ここまでされてしまっては恥ずかしいやらいたたまれない気持ちになり、真っ赤な顔をしながら慌ててマッサージしようと自分の足に触れているカードに声をかける。
「はい、何でございましょうか?ご主人様」
ハートエースとしては、何故主であるロイが慌てているような行動をとっているのかよくわからないので、必死で考えてある結論に達する。
「あ、申し訳ございません。私としたことが、配慮が足りませんでした」
少しショボンとした表情になっているのだが、一応フードによって街道でロイを伺っている面々にはその美しい顔は見えていない。
「わ、わかってくれて嬉しいよ」
ロイとしては、顔が見えていないこの状態でもこれほどの過剰な対応をされては必要以上に悪目立ちするので、そこの所に気が付いて態度を改めてくれたハートエースにお礼を告げる。
「いいえ!私としたことが、ご主人様に対して真っ当なお世話が出来ずに非常に申し訳ないと思っておりますので、ここで挽回させて頂きます」
「え?挽回?」
多少会話がかみ合わない状況に気が付き、何故かハートエースの表情にダイヤキングのイメージが浮かんでしまうロイは、嫌な汗が背中を伝わるのを止める事が出来ない。
「はい!ご主人様の御足に触れる栄誉を賜っているのに、私がこのような中途半端な状態である事が不敬です!大変失礼いたしました」
「不敬?いや、そんな事は……」
ロイが全てを言い終わる前に優しくロイの足を地面に置いてスクッと立ち上がったハートエースは、一度深く頭を下げるとフードをとった挙句に外套も外してしまう。
元からこの街道にいた人々の注目を集めてしまったロイ達だが、そこに素顔と素晴らしいプロポーションを晒してしまったハードエースがいるので、誰しもが完全に足を止めて視線を固定してしまい、この状況に耐える力を持っていないロイは何とか素顔だけでも隠して貰おうと慌てる。
「ちょ、ちょっと!」
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