暴走能力によって、いつの間にか大陸に名を轟かせる商会長!

焼納豆

文字の大きさ
59 / 75

(58)集落とスーレシア達

しおりを挟む
 何故か相当に疲労と恐怖を感じてしまっているスペードクィーンは、ロイとお風呂に一緒に入ると言う欲望を曝け出して万屋に依頼をし、ロイからは絶対に阻止する様に今までにない程に強く命令されていたので必死で拒絶していた。

「はぁ~、使えないわね。いいわ!こうなったら実力行使よ!そもそも他人に頼るのが間違いだったのよ!」

 結局何を言っても折れずに願いを叶えるとは言わなかった万屋……今回は疲労困憊のスペードクィーンに愛想をつかし、さっさと自己完結して決意も新たにリリを放って風呂から出て行ってしまう。

 まさかの事態に取り残された感が非常に強い中で、この態度であればリーンは聖国ロナの諜報員ではないのだなと確信する事が出来たのだが、一応万屋との会話は続いているはずなのでどうすれば良いのか良く分からない。

「え?あの……」

<コホン!リリと申す者よ、先程伝えた通りにそなたにはこの宿の管理をしてもらう。同じ環境の者を一名つけるが、その者に対する余計な詮索は不要>

「は、はい。そこはもう。私も詮索されては困る立場ですから、心得ています!」

<では、この集落にいる限りは安全を保障しよう。やがて世界の流れが変われば、集落以外に出向く事も出来るようにもなるだろう>

 その後は何を話しかけても反応する事がなかった万屋だが、実際にはあっという間に勝手に決意して出て行ってしまったリーンの護衛の為に即追いかける必要があったので、早く切り上げて後を追っていた。

「万屋……さん。期待しちゃっても良いのでしょうか?」

 一人浴場に残されたリリの呟きは、今度こそ誰にも聞かれる事は無かった。

「あの、リリさんでしょうか?私、万屋さんからのお告げでこの集落のこの宿の管理を一緒に行う事になったハー……エースと申します!」

 風呂から出てみれば、万屋が宣言していた通りにこの宿を管理する相棒とも言える存在が待ち構えており、コレはダイヤキングを通して全ての事情を聞いていたロイが手配したハートエースだ。

 思わずハートエースと名乗り始めた所を慌てて引っ込め、名前を省略してエースと名乗る事で一応本名を告げない事にしていた。

「ほ、本当だったんだ!よろしくお願いします。リリです。えっと、ミハルさん達にも紹介しますね!」

「はい!ですが、この宿の管理を行う事については万屋の方で啓示してくれたとの事ですよ?」

 風呂場で言われていた事が即座に一つ実現しているので、これならば自分はこの集落の宿を管理して楽しく過ごせるのだと嬉しくなっているリリ。

 一方、この集落に向かう分岐迄到着していたスーレシア達だが、何故か整備されたばかりの集落に向かう街道があぜ道の様になっており、迷う事無く綺麗な街道を進んでいたのでリリ達のいる集落に到着する事なく通過していた。

 残された問題と言えば……リーンだ。

「ふ、ふふふふ、こうなったらもう男湯でも関係ないわ!誰が居ようが知った事じゃない!突撃してやれば良いのよ!」

 破れかぶれの特攻をブチかます決意をしており、その恐ろしい程の決意を最も近くで感じる事になっているスペードサードは背筋が凍っている。

「我が主、リーン様の護衛についているスペードサードからの報告ですが……」

 一連の流れで情報がロイの元に行き、湯船につかりながらどうするべきかを考えているのだが……なにも良い案が出る訳も無く、結局翌朝にはこの集落を強引に出立するほかないと言う結論に至った。

 先行している事になってしまったスーレシア達の事は気になるのだが、敢えて遅く行動するか分岐があれば異なる道を行けばよいだろうと、あてもない旅だけに自由に行動できる強みを活かせばどうにでもなると思っている。

 翌朝……

「おはようございます。今日、いいえ、昨日からこの宿の管理を万屋から任されましたリリと、エースさんです!よろしくお願いします」

 宿になっている二階から下に降りると、早速リリとハートエースが並んで挨拶をしている姿を目にし、誰にも分からないように軽くハートエースに向かって頷いた後に宿から出て行くロイとリーン。

 リーンとしては今晩急襲してやろうと企んでいるのだが、全てが筒抜けになっているのでロイはあっさりと回避する。

「姉ちゃん、もうここにいても目新しいものはないから次の町に行こうと思うんだ。俺は宿をリリさんとエースさんが管理すると言う不思議な声しか聞こえなかったけど、姉ちゃんはあの建屋を作った万屋と話をしたんでしょ?」

「え?次の町?今晩のお風呂は?」

 万屋云々よりも今晩の突撃の方が余程リーンにとっては重要なので、作戦が不発に終わった事に露骨にショボンとしてしまい、その姿を見たロイは少しだけ罪悪感に襲われるのだが冷静に考えれば当たり前の事をしたのだと思い、そこには触れずにいる。

「姉ちゃん、俺も子供じゃないんだからさ?姉ちゃんも落ち着こうよ。ね?」

「え~、やだやだ。ロイ君と一緒に入るの!」

 もう良い年齢なのにコレってどうなの?と思っているロイなのだが、軽く頭をなでてやると少しむくれていた表情が嬉しそうになるのだから随分とチョロいなと思いつつも、リーンの少々不穏な言葉を聞きつつ次なる町では何があるのか楽しみにしている。

「わかったよ、ロイ君。次のチャンスを見つけるね!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...