前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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スキルの目覚め

スキルの鍵

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 あのクズ共に、転移魔方陣に追いやられて意識が無くなっていたが、俺は全てを思い出した。

 俺の本当の名前・・というのはおかしいが、元はこの世界の住人ではなく、日本の千葉県に住んでいた、中学3年生の久田ひさだ じんだった。

 俺には、この世界と同じで幼馴染佐伯さえき 悠里ゆうりがいた。

 悠里は、俺が小学校3年の時に同じ小学校に引っ越してきたんだ。
 俺はちょうど母を亡くして落ち込んていた時期で、父が俺のために動物を飼い始めた。
 悠里は大の動物好きで、これをきっかけにかなり仲良くなり、中学1年の頃には恋人になっていた。

 ちなみに、父が買ってきた動物は、犬のモモ(番犬)、猫のシロ(愛玩)、九官鳥のソラ(話し相手)だ。
 なぜ九官鳥が話し相手かはいまいちわからないが、そこはスルーしておく。

 そして、手入れのあまりされていない家の庭には、もはや放し飼い?なのかわからないがトカゲ(トーカ)もいた。

 これは、顔の区別なんかがつくわけでもないし、かごで飼育していたわけではないので、違う個体かもしれないが・・・。

 何事もなく中学1年も終わり、中学2年となったある日、また転校生がやってきた。
 北野きたの 信二しんじ こいつのおかげで人生が大きく狂ったといっても過言ではない。
 
 北野は、見た目イケメンで、性格も穏やか、頭も良いの3拍子。さらには家がとてつもない資産家と4拍子揃ったやつだった。当然モテるわけだ。

 見た目も良く、性格の穏やかな悠里にちょっかいをかけてこないか正直不安になっていた。
 
 こんな時期に、俺にさらなる試練が訪れた。
 出張していた父の搭乗した航空機が、海上で行方不明になったのだ。

 この辺りは、正直記憶があいまいで、今も思い出すことはできないが、思い出せるのは、全てが終わって、家で涙を流しながら動物たちと触れ合っているところだった。

 悠里は、こんな状態になった俺と、動物の世話をしてくれた。
 悠里は、皆のことが心配だし、世話もあるから・・と俺の家の鍵を持って行った。

 そして忘れもしない、中学3年。
 この生活も慣れたころ、突然北野に呼び出された。

「仁君さ、もう悠里を解放してあげなよ」

 こいつ、いきなり何を言っているんだ?しかも悠里を呼び捨てで・・
 と思っていると、

「実は、俺と悠里はもう付き合っているんだよね。これ以上悠里と恋人みたいなふりをするなら、考えがあるけど・・・」

「え、何を言っているんだ?」

 まさかあの悠里が? でもよく考えると最近は一緒に帰ることもないし、俺の家に来ることもない。
 一緒に出掛けることもなくなっていた。

 まさか・・まさか・・・・

 動揺している時に、なんと悠里本人が校舎の陰から表れて衝撃的なことを言い始めた。

「ごめんね仁。でももう疲れちゃったんだ。シロちゃんとか皆はかわいいけど、ずっと世話するのも大変だし、仁となかなか出かけることもできないから・・。そんな時、北野君に自分の幸せを考えなよ、、って言ってもらったんだ」

 少し顔を赤らめて北野を見る悠里は、まるで初恋の人に対して微笑むような眩しい笑みを北野に向けていた。

「じゃ、そういうことで。もう気安く話しかけたりするんじゃねーぞ」

 北野の捨てセリフの後、悠里は肩を抱かれて去っていく。

 俺はここで幼馴染と恋人を同時に失った。

 そして1月後、なぜか北野を中心としたグループから俺に陰湿な虐めが始まったんだ。
 最初はよくある机の落書き、ものが無くなるから始まって、数週間もすると直接的な暴力までふるってくるようになった。

 先生や周りの生徒はある一人を除き、北野の実家に怯え見て見ぬふり・・
 悠里は、こちらを憐れむような目で見てくるだけだった。

 俺はかばってくれる両親もいないし、格好のターゲットだったんだ。
 心身共にボロボロになって学校から帰ってきたある日、玄関のドアの鍵が閉まっていなかった。

「もう、こんなこともまともにできなくなったのか・・」

 と、心を無駄に痛めながら部屋に入り絶句した。
 そこには、無残な状態の俺の家族が横たわっていた。

「モモ、シロ、ソラ・・・トーカまで」

 すぐに警察を呼んだが、結局犯人は分からなかった。

「今後はきちんと鍵をかけるようにしてくださいね」

 なんて、逆に説教される始末だ。

 もう、こんな世界にいても何もいいことはないな・・
 と、人生に悲観していると、

「ピンポーン」

 とインターホンが鳴ったため、対応する。

「仁、私だけど・・」

 そこには、悠里がいた。

「何の用?」
 
 そっけなくインターホン越しに答えるも、

「会って直接渡したいものがあるんだ」

 ・・もう何もかもがどうでもよくなって、玄関を開けると、悠里が玄関の中に入って笑顔でとんでもないことを言った。

「ごめんね、すっかり忘れてたんだけど、ちょっと前にこの家に置きっぱなしだったイヤリングがあることを思い出して、勝手に鍵使って入っちゃった。北野君とデートの途中だったから一緒に入ったんだけど、動物たちが北野君を威嚇したんで、北野君が怒って始末しちゃったんだ」

 なんだか、ゴミをちょっと捨てたような軽い感覚で恐ろしいことを言う悠里に、一瞬ポカンとしたが、その後瞬間的に怒涛の勢いで怒りが込み上げてきた。

「悠里!まさかお前が俺の家族を・・・」

 そういい終わる前に、俺は誰かに殴り飛ばされた。

「何が悠里だ、俺の彼女を呼び捨てにするな。それにあいつらはこの俺に歯向かったから躾けただけだ。あ、ちなみに警察の捜査はちょっと上から圧力かけてあるから、この件を伝えても無駄だぞ!」

 そう怒鳴ってきたのは北野だ。
 こいつらどこまでコケにすれば・・
 と思っても、体に力が入らない。

「じゃ、そういうわけだから・・」

 悠里はそんな俺を見下して鍵を投げつけてきた。
 そして北野と何もなかったかのように出て行った・・・

 悔しい、最後に残った俺の家族を・・裏切った上に俺の家族を・・・

 激しい怒りで意識がもうろうとしてきたときに、どこからか声がかかった。

「「「「ご主人様・・・」」」」

  
 

 
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