前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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スキルの目覚め

最下層へ

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「「「「ご主人様」」」」

 誰かに呼ばれて目を開けると、目の前には少し前まで元気にしてくれていた俺の最後の家族、

「モモ、シロ、ソラ、トーカ・・・」

 涙があふれてこれ以上何もしゃべれない状態になっていたところ、体の中に穏やかに入ってくる声で話しかけられた。

「仁様、私はこの地球を含む世界を管理する神の1柱です。神名については申し上げることはできませんが、仁様に今後の相談をさせて頂きたく、この特殊空間に来ていただきました」

「は・・い」

 なぜか言葉が体に染み込むため、涙も止まり、心も落ち着いた。
 これが神か・・・

「実は、ここにいる4柱のあなたの家族は、主人に命を懸けて忠誠を誓い、4柱全てが宣言の通りその命を散らすという、過酷な試練を乗り越えたため、異世界で神獣として転生することが決まっています。その彼らがそろって仁様と同じ世界で生きたいと懇願するため、仁様にも彼らと同じ異世界に転生して頂きたくお伺いしている次第です」

「え、もう一度彼らと生きていけるんですか?」

「はい、但し、いくつかの制限があります。転生先の異世界は私が管理しているわけではないので、仁様に対してあまりにも優遇した条件を提示すると、弾かれてしまう可能性があります。ですから、もし異世界に行っていただけるのであれば『行きます。行かせてください』」

 しまった、嬉しさのあまり食い気味に返事してしまった。

「も、申し訳ありません。話の途中で・・」

「いいえ、結構ですよ。ではあまり時間がないので、簡単な説明をさせて頂きますね。仁様にお渡しできるスキルは<テイマー:Lv10>になります。異世界でこのレベルは神の領域となるため、このままでは異世界に行く際に弾かれる可能性が高くなります。そこで、大変申し訳ないのですが、初期は<テイマー:Lv0>とさせて頂き、ある条件を満たすと制限が解除されてLv10になる方法をとらせていただきます。こうすると、表向きLv0なので、弾かれることはありません」

「俺の、、いえ、僕のためにありがとうございます。また彼らと生活できるのであれば、何でも問題ありません」

「フフフ、そうですか。で、制限解除の条件ですが、あまり緩いと転生時にLv10が隠れていることが発覚するため、厳しい条件とさせてください。 条件は、仁様にはお辛いかもしれませんが、地球と同じで信頼している仲間に裏切られること になります」

 俺は絶句した。
 絶句したが、これしかないのなら行くしかないと腹を決めた。
 但し、最後に一つ聞いておきたかった。

「もし、誰にも裏切られなければ解除はされないんですか?」

 神様は優しく微笑んで頷いてくれた。

 ・・・という記憶が戻った。

 くそったれ、能力が解放されるのはいいが、裏切られるのは何度経験しても最悪だ!

 と思っていると、脳内アナウンスがあった。

『<テイマー:Lv0> ➡ <テイマー:Lv10> へアップします』

 もはや起こった裏切りはしょうがない。
 でも、能力が解放されたから、きっとあの4匹に会えるんだ・・・

 でも、神様は彼のことを4柱とカウントしてたな。
 きっと神獣になるから、カウント方法が違うのかな?
 
 と、どうでもよいことを考えていると、完全に意識が戻り、周りの景色が確認できた。

 おいおい、ここって、最下層の入り口じゃないか・・・

 そう、地下迷宮ダンジョンは、凡その階層を見かけで判断することができる。
 どの地下迷宮ダンジョンでも、これは変わらないようだ。

 というのも、冒険者最高ランクを持つ複数のメンバーが、国の依頼でパーティーを組み、比較的難易度の低い、地下迷宮ダンジョンを攻略することによって情報を得たのである。

 このメンバーは、攻略後、全員高ランクの<S(帝級)>に認定されている。

 その情報によれば、地下迷宮ダンジョンのフロアボスと倒すと、下層に続く階段が出てくる。
 そして、階段を下ると小部屋が存在し、2つの転移台座の上にそれぞれ水晶が設置されている。

 1つの水晶は地上に帰還できる水晶で、この水晶に触れて帰還すると、次回以降は地上からこの部屋に直接戻ってくることができる。

 この帰還用水晶は必ず透明になっている。

 もう1つの水晶は次の階層に転移させるもので、浅層の場合は青色、中層の場合は赤色、深層の場合は黒色、最下層の場合は色が変動する。

 俺の前にある2つの水晶は、透明と色が変動している水晶だ。
 慌てて帰還用の透明の水晶に触れる。
 しかし、攻略してここまで来たわけではなく転移魔方陣で飛ばされたため、起動することはなかった。

 こうなると、自力で地上まで逆攻略をするか、ラスボスと戦うかしかない。

 はっきり言って、武器もナイフ1本、食料、水もない状態で転移させられたため、無数の魔獣と長期的な戦闘が必要になる逆攻略は不可能だ。

 戦闘系のスキルを持っていないので、ボスどころか、そのあたりの魔獣にもかなうわけはないが、選択肢としてはボスに挑むしかない。

 覚醒した<テイマー:Lv10>に全てを託して、挑むしかない。

 Lv10の権能はチートだが、魔獣との契約に対して、真名が無条件で解るメリットはあるものの、契約プロセスを省略できることはない。

 俺は、まだ体力のあるうちに決着をつけるべく、即覚悟を決めて、色が変動している水晶に触れボス部屋に転移した。
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