前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
32 / 170
防衛能力の増強

<アルダ>の強化(4)・・姉、兄の強化(第三者視点)

しおりを挟む
 ジンの姉であるソフィアと兄であるロイドは、それぞれ深層の別の階層に転移していた。
 
 この深層が通常では考えられないほど危険な場所だという事は知識として知っている。

 そもそも彼らの知識で深層とは50階層程度で、実際は200階層あるのだからその知識も現実とは大きなずれがあるのだが・・・

 だが、領主の子供である彼らは、危険であることや、政務を学ぶ必要があることから時間もなく、地下迷宮ダンジョンに入る機会を得ることができなかったのだ。

 そんな彼らは、家族、特にジンに対する思いは「スーパーブラコン」である。

 ジンが一般的には使えないスキルと言われる<テイマー>を取得した時も、スキルの事などは全く気にならずに、ジンの人間性を見続けていたのだ。

 見続けていたが故に、正直に言うとジンの変化・・そう、前世の記憶を取り戻した状態のジンと以前のジンの変化を敏感に感じ取っていたのだが、ジンから話てくれるまでは見守ろうと、2人揃って相談もせずに全く同じことを考え実行していた。

 そしてある日、ジンと同行していた他辺境伯の子供の行動や、ジンから前世の記憶があること。前世でも裏切られたことなどを聞かされ、庇護欲が上限いっぱいを振り切れた。

 たいして強くもない今の状態では、クズからジンを守ることができないと思い始めていたところに、<アルダ>の戦力強化の話を聞いた。

 もちろん彼らは対象になっていなかったが、そこは「スーパーブラコン」略して「スパコン」、強引にダンと交渉しメンバーに入り込んだのだ。

 そして案の定、他のメンバーが目標に達し続々と帰還する中、基礎Lvの低い彼らはひたすら魔獣を刈り続けていた。

 そもそも彼らは領主の子供であり、このような血生臭い所に来ることなど、よほどのことがない限りないのだ。

 そんな彼らはジンへの想いだけを心の支えに、魔獣を見つけては討伐、見つけては討伐をただひたすらに繰り返していた。

 ここ<神鳥>の深層も、他の4大地下迷宮ダンジョンと同様に数えるのも馬鹿馬鹿しい程魔獣はいるので、探す時間は必要なかった。

 裏から水晶さんがサポートをしているおかげで、それぞれの長所を伸ばし易いように適切な魔獣が配備されている。

 189階層にいるソフィアは基本的に魔法主体の攻撃を行っており、スキル自体も魔法を強化する方向で進められていた。この層に来て初めての討伐時に使用した魔法は、ソフィアが使える魔法の中で最も攻撃力が高い<炎魔法Lv4・・中級>を発動した。

 目の前の魔獣に炎の固まりが衝突し、魔獣の表面に真赤な炎が表れた。

 ソフィアは初討伐完了を確信したが、ここはやはり深層・・闊歩している魔獣もLvが根本から違うため、暫くして炎が消えた後も、魔獣は何事もなかったかのように歩き続けていた。

「そ、そんな。私の最大魔法で全くダメージがないなんで・・」

 ソフィアは唖然としていたが、高いLvの魔獣は、他の地下迷宮ダンジョンにいる近衛騎士である<A:上級>の二コラの全力の攻撃でさえしのいでみせるのだ。

 そんな怪物と同等Lvの魔獣に、Lv<中級>の魔法が致命傷になる道理はない。

 しかし、ソフィアはあきらめずに<炎魔法>を発動し、威力を上昇させるために即<風魔法>も発動した。見るからに前の攻撃よりも炎の威力は上がっていたが、やはり魔獣を倒すことはできていない。

 それでもこれしか攻撃方法がないために、MPが枯渇すれすれまでソフィアは魔法を行使し続けた。

 気を失いかけた時に、自宅から持って来たMPポーションを飲んでMPを完全回復し、魔法を行使する・・を繰り返したのだ。
 
 MPポーションを飲むとMPを完全回復することができるが、倦怠感、不快感を取り除くことはできない。
 しかしソフィアはひたすら魔法を行使し続けた。

 こうしてどの程度時間が経ったかわからないが、ついに深層にいる魔獣を完全に討伐することに成功した。その瞬間、体の底から力が湧き上がってきたのだ。
 
 ソフィアの基礎Lvは低く、討伐した魔獣のLvがあまりにも高かったために、ソフィアのLvが急上昇した。この急激な力の増加には体が慣れるまでに時間がかかり、一層の倦怠感や痛みを伴うのが普通だ。

 普通なのだが・・ソフィアはそんなことはお構いなしに次なる魔獣に同じ魔法を行使した。

 いくらLvが上がったソフィアでも、一匹の魔獣を倒した程度のLvアップでは当然一撃で倒せるわけもなかったが、魔法行使後の魔獣の体の表面が、明らかに焦げていた。そう、若干ではあるが魔獣に明らかなダメージを与えることができたのだ。

 そしてついに迎えた3日目。当然ソフィアに時間の感覚はないが、<炎魔法>一発で目の前にいる魔獣を一撃で討伐できるLvにまで達したのだ。

『ソフィア様、おめでとうございます。他の地下迷宮ダンジョンLvアップ組と同Lvである<SS:聖級>達成しましたので、<アルダ>に帰還していただくこととなります。まもなくジン様がお迎えに来ますので、そこから管理室に転移します』

 その声を来た時に、ソフィアは

「これでジンを守ってあげられる・・」

 とつぶやいていた。


 一方193階層にいるロイド。こちらは幼い時から剣術を習っていたのだが、あまりうまく行かずに、今は護身用としてのみ剣を使っていた。

 そのため、剣は常に帯刀しているのだがあまり使う機会はない。

 基本彼は直情型なので、体(拳)で語り合うタイプなのだ。

 そんなロイドは、魔獣に対して早速攻撃を仕掛けたが、魔獣としては痛くも痒くもないらしく、まるで鬱陶しいハエでも払うかのようにあしらわれてしまった。

 魔獣側は、管理者権限での制約を受けておりロイドに攻撃をすることはできない。

 しかし、目の前のゴミを軽く払うのは攻撃と規定されていないらしく、ロイドは吹っ飛んでしまった。

 魔獣側は軽く、そう、かる~く払っただけなのだが、大ダメージを受けてしまったロイド。こちらもマジックバックからHPポーションを取り出し全回復することができたが、もう少し魔獣の力が強いか、飛ばされた先が芝生のような場所でなければ死んでいたかもしれない。

 この時はさすがの水晶さんもあせっていたとかいないとか・・・

 だが、この攻撃を受けたことによりロイドのLvが上昇したらしく(おそらく、水晶さんが何かしらの補正を入れたのだろう)、時間はかかるが攻撃が効くようになっていた。

 もちろんその後は、ハエを払うような動作すら魔獣はしなかった。軽く動くサンドバック状態だ。

 そして時間を忘れて魔獣を討伐し続けていた時に、ソフィアと時を同じくして水晶さんから終了のメッセージが届いたのだ。
 

---------------------
名前:ソフィア・アルダ
種族:人族
Lv:86・・SS(聖級)
HP:4600/4600
MP:5100/5100
MT:4800/4800
【スキル】
 <光魔法 :Lv9・・聖級>
 <身体強化:Lv8・・帝級>
 <水魔法:Lv8・・帝級> 
 <炎魔法:Lv8・・帝級> 
 <風魔法:Lv7・・上級>
 <物理耐性:Lv7・・上級>
 <精神耐性:Lv7・・上級>
 <魔法耐性:Lv7・・上級>
【称 号】
 ジン大好きの姉
---------------------

---------------------
名前:ロイド・アルダ
種族:人族
Lv:87・・SS(聖級)
HP:4800/4800
MP:5200/5200
MT:4400/4400
【スキル】
 <身体強化:Lv9・・聖級>
 <物理耐性:Lv9・・聖級>
 <精神耐性:Lv8・・帝級>
 <魔法耐性:Lv8・・帝級>
 <体 術 :Lv8・・帝級> 
 <危機回避:Lv8・・帝級>
 <危険察知:Lv8・・帝級>
 <自然回復:Lv8・・帝級>
【称 号】
 ジン大好きの兄
---------------------

 ここまでくれば、現時点で世の中に認知されている人族最強である<S:帝級>を超えているので、即致命傷と言う状態にはならないだろう。

 しかし、暗殺、毒殺、封印等色々な方法が考えられるため、気を抜いてしまうのは厳禁ではあるが・・

 彼らはそんなことは考えず、これでジンを守ることができると心躍らせていた。

 己の身よりもジンの安全が一番気になっているのだ。

 正直ジンは彼らよりもLvは高く、スキルの数など比べ物にならないため彼らよりも強く、どちらかというと守ってもらう立場なのだが・・

 しかしそこは、お姉ちゃんお兄ちゃんフィルターがかかっているため、ジンが強いことは認識しているが、振り切れてしまった庇護欲を抑えられるものは最早なく、守る気満々である。

 2人共、今後はジンを守り続けることを誓い<神鳥>を後にした。 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...