前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
56 / 170
<アルダ王国>として

<シータ王国>との闘い・・<フラウス王国>の紹介(2)

しおりを挟む
 重鎮A、Bの持っている破壊力から考えると、今回の事態は俺が想定した中でもダメージが無い方だったので、とりあえずあの二人を別室に連れて行くだけでもいいだろう。
 
『ユフロ、レイラ、この程度であればあいつらにしてみたらトラブルとは言えないレベルなので、別室にお連れしろ。ただし<転移>は使うなよ。そのおかげで更に興奮して手が付けられなくなると困るからな』

『『承知しました』』

 すすす~っ・・とユフロとレイラが重鎮A、Bに近づき、それぞれに軽く耳打ちすると、彼らは喜び勇んでユフロ、レイラと共に退出していった。

 いや、流石だな。ユフロとレイラはおそらく幻獣について質問があれば別室で受けるとか、彼らの気を引く事を言ったのだろう。

 そして重鎮A、B・・・挨拶の途中、しかもまともに自己紹介すらしていない状態で、自分の知識欲を優先して平気で途中退出できるあの図太・・いや度胸。
 
 一連の鮮やかな流れをみて、リノス王子はようやく我に返った。
 重鎮A、Bが退出して我に返った王子は慌てて挨拶を再開した。

「も、申し訳ない。大変お見苦しいところをお見せしました。彼らは・・ご覧の通り少々我が強いのですが、大変頼りになる仲間でして・・特に錬金関連は全て任せられると思っております。これからよろしくお願いします」

 少々気まずいのか、かなり切り上げた感のある挨拶になってしまっていた。

 その後は錬金術と聞いたガジムが早速リノス王子の下に挨拶に行き、ガジムと一族もこの部屋から退出していった。

 ・・まずいな。パーティー自体は問題が無くなったが、別室に大惨事が起きるかもしれない・・

『ユフロ、レイラ、そっちにガジム一族が向かった。応援で幻獣部隊全員をそちらに向かわせる。何かあったら<空間魔法>を使って隔離しろ!』

 そして、ウェイン筆頭とした幻獣部隊もこの会場から音もなく消えていった・・

 幻獣部隊の緊張が高まる別室をよそに、この部屋のパーティーはつつがなく進行している。

 ソフィア姉さんは、若干落ち込んでいるリノス王に寄り添って、何やらかいがいしく世話をしている。
 
 少々ピリピリしていた気持ちが、柔らかい暖かさに包まれて癒されていくのがわかる。リノス王子・・ソフィア姉さんは本当に素晴らしい女性ひとです。俺の前世のクズ女なんて足元にも及ばない慈愛に溢れている女性ひとなんです。よろしく頼みますよ!!

 ・・なんて言ったらいいんだろう。仲の良い人を取られる??ちょっと違うな。少しだけ寂しい気持ちがあるんだけどね・・このままうまく行ってほしいけど、そうすると姉さんは<フラウス王国>に行くことになるのかな?その場合は、安全のため近衛騎士のハルドや幻獣のエレノアにも一緒に行ってもらうことになるか・・

 いやいや、そうなったらとても良い事なんだし、<転移>を使えば一瞬なんだから問題ないよな。

 そう、こんな事を思っていると、いつもの神獣メンバーが優しく俺を包んでくれましたよ。

 俺が色々な考えを巡らせている間も、別室では不穏な空気が蔓延していく。
 都度都度状況をウェインが<念話>で報告してくれるのだ。

 ユフロ、レイラ、そして重鎮A、Bだけで話をしていた時までは問題なかったらしいが、そこにガジム率いるドワーフ族が乱入してからが問題だ。

 当然警戒態勢の幻獣部隊が勢揃いしたのだが、彼らにはそんなことは全く関係ない。彼等の錬金にかかる情熱と比較すれば、他の何事も・・・いや、忠誠心以外はという事になるが、全てが塵と同義になってしまうのだ。

 お互い軽い自己紹介を終え、ガジムは、

「我が<アルダ王国>の魔法防壁はドワーフ族が全力を以て作った物だ。<フラウス王国>の侵入対策と比較してどう思う?」

「うむ、我らが<フラウス王国>からこちらの門をくぐる際に、とても大きな力を感じたが、あの壁のせいか?素晴らしいな。なるほど、壁自体に機能を持たせたのか・・我らは門の入口に結界を張って、許可が出た者のみ目的に応じた場所に転移できる魔道具を使用している」

「なんだと、転移魔道具たと!!」

「そうだ。しかし貴国の防壁に力を付与したのか?その技術、大変興味がある」

 そう、この辺りはお互いの技術を取り込み良くしようという会話で問題はなかったのだが、

「実は<フラウス王国>出立時に、この俺ノレンドが開発したばかりの魔道具を持って来た」

「あ?何出しゃばってんだノレンド。俺様ランドルが発案した技術だろうが?」

「ふざけんな、チラっとお前の希望を言っただけじゃねーか。それにお前はお前で魔道具持ってきてるだろうが」

「おいおい、落ち着け」

 なんと、あのガジムが宥める始末だ。

 そして、重鎮A(ノレンド)、B(ランドル)は自らの魔道具について熱く語り始めた。
 二人で同時に説明するので、ドワーフ族は二手に分かれて聞いている。

 おや?ウチの連中は思ったより冷静になれるんだな。新しい発見だ。
 
「この俺ノレンドが開発した魔道具は、正に今回<シータ王国>のくそったれに対して有効なものだと確信している。それはな、この魔道具をあいつらに使用することで、人族で重要な五感の内ランダムにはなるが2つを一時的に無効にできるんだ。相手のLvや状態にも依存するが、戦闘時に突然五感の内2つを奪えるのは大きいぞ!」

 一方ランドルは、

「この魔道具を見てくれ。これはな、大気を一時的に密集して解放することにより、疑似的な風魔法を起こせるんだ。しかも、発動までの時間が短く、範囲も広い。発動中に次の箇所を指定できないのが難点だが、連続起動はできるので大きな問題にはならないだろう」

 説明をすでに終えていたレノンドがランドルを煽ってきた。

「おい、そんなへなちょこ魔道具で<シータ王国>に通用するのか?そもそも威力もへなちょこなんじゃないのか?」

「なんだと?お前の腐れ魔道具も五感のうち2つなどどいう訳の分からない制限があるだろう。べつに戦闘中に味覚と嗅覚が無くなってもなんともないわ!」

「ああぁ??俺様の魔道具の効果にケチをつけるのか?だったらお前で試してやろうか?」

「こっちのセリフた。お前なんぞ俺の魔道具で吹っ飛ばしてやるぞ!!」

 通常運転だな。そろそろまずい。部屋を破壊しかねないぞ。

『おい、今すぐその二人を隔離しろ!』

『承知しました』

 ウェインが代表して返事をくれ、即実行したようだ。

 そして残された幻獣部隊とドワーフ一族・・何とも言えない空気となり、一旦こちらのパーティー会場に戻ってきた。

 ガジムが・・

「ジン様、彼等の情熱は良く、それは良く理解することができました。彼等の持って来た魔道具の技術・・実際には効果は目にすることがなくウェイン殿たちが隔離したのでわかりませんが、おそらくこの<アルダ王国>にはない技術であるため、これからあまり時間はありませんが、<シータ王国>との衝突時に間に合うように互いに研鑽していきたいと思います」

「頼んだよ。父さんにも報告しておいて」

「承知しました」
 
 そう言ってガジムは父さんの方へ歩いて行った。

 俺は残されたウェイン達と話をすることにした。
 幻獣部隊には色々迷惑をかけているからな。

「幻獣部隊の皆、本当によくやってくれて感謝している。あの重鎮A、Bの相手も押し付けちゃったりしてホントにゴメンね。お礼としてドロップアイテムをプレゼントしたいと考えているんだ。だけどまだ地下迷宮ダンジョンに行けていないので、もう少し待ってほしいんだ」

「「「「「「ありがとうございます」」」」」」

 皆嬉しそうにしてくれている。早く彼らにプレゼントしたいぞ。

 と決意していると、ウェインが

「ジン様、隔離した二名ですが・・信じられないことに互いに向けて魔道具を発動したらしく、一方は視覚と聴覚が無くなっているようで、もう一方は爆風に飛ばされて意識がない状態です。如何致しましょうか?」

「・・・・・ホント何してんだよ。・・・疲れたよ・・・とりあえず、レイラに治療させておいて・・・」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...