前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
57 / 170
<アルダ王国>として

<フラウス王国>第一王子・・(1)

しおりを挟む
 私は<フラウス王国>第一王子のハルという。

 第一王子が故に、今後<フラウス王国>を背負って立つに足りる知識、経験そして信頼できる仲間を得るべく<ゴルデア王国>に留学している。

 我が<フラウス王国>は、先人の異世界人が立ち上げた国であり、そのお方の力を引き継ぎ、魔道具関連の産業が栄えている。

 もちろん防衛もその力を利用しているが・・

 そして今いる<ゴルデア王国>は武術に優れている王国なのだ。
 もちろん魔法を使用する物もいるが、体術系統の<スキル>を持っている者がほとんどだ。

 私自身は、どちらかというと魔法を得意としているが、祖国の影響か魔道具の力を借りている部分が多々ある。
 父上も私の不足している部分を改善するために、体術の何たるかを知るべくこの国に送り込んだのかもしれない。

 実はここ<ゴルデア王国>は、我が<フラウス王国>からは若干距離がある。距離だけでいえば<シータ王国>が正に隣国なのだが、<フラウス王国>を建国した先人である人族が、<シータ王国>に無理やり召喚されて逃げてきたものであることから、我が国はかの国とは国交を結んでいない。
 
 そもそも、人族至上主義、他種族排他主義などというふざけた主義がある者共などと交流を持つなど、こっちから願い下げだが・・

 そして、私は日々武術の研鑽を重ね、<身体強化:Lv3・・中級>を得るまでに至っている。
 これも私が通う学園の教師陣、そして共に切磋琢磨してくれている学友のおかげだ。

 このスキルは比較的万能だ。相手の攻撃を受けてもある程度耐えられるし、自らの動きも大幅な改善が見込める。

 スキル発動までにはかなりの時間がかかったが、このスキルを最も得意とする<猫獣人>の学友が懇切丁寧に、時間をかけて教えてくれたのだ。

 そんな充実した毎日を過ごしていると、夜に通信魔道具で父上から連絡があった。
 なんと、<シータ王国>から独立した<アルダ王国>の国王一族が挨拶に来て、同盟を結んだとのこと。

 そもそも<アルダ>とは、<シータ王国>の辺境北伯であったはずだ。
 良い感情のない<シータ王国>において、唯一尊敬のできる貴族である。
 
 きっと彼も<シータ王国>に愛想が尽きたのだろう。父上も全力で支援する事を約束したらしい。私も完全に同意だ。

 ただこの連絡には、別に驚くべき点が3点あった。

 一つ目は、なんと彼等の第二王子が我らが建国の先人と同じ国、この世界ではない異世界の記憶を持っているというのだ。これは王族のみに伝承される秘話とアイテムで判別できるため、間違いないのだろう。更に、二つ目として、かなり高性能なドロップアイテムを頂戴したそうだ。

 最後の三つ目は、なんと弟のリノスが<アルダ王国>の第一王女に一目惚れし、<アルダ王国>に同盟の証として同行するとのことだ。

 ドロップアイテムに関しては重鎮たちは狂喜乱舞して、軽い戦闘になったそうで、正直光景が目に浮かぶ。

 それ程の貴重なアイテムを差し出していただけるとは・・私も早くそのアイテムを見て研究したいものだ。

 弟は・・あいつがそんなに早く行動するとは、どうやらお相手は人柄、容姿全てに非の打ち所がない女性なのだろう。

 そうして再び日常を過ごしていると、親友ともいえる<猫獣人>の者がある情報を持って来た。

「ハル、ちょっと変な情報を手に入れたんだけど、王族のお前なら真偽は分かるかな?何やら<シータ王国>から辺境北伯が離反して<アルダ王国>を建国したらしい。そして、お前の祖国である<フラウス王国>と同盟を結びその結果を全世界に布告したらしいぞ。そのせいかは知らないが、<シータ王国>は戦闘準備をしているという事だが・・事実か?」

「詳細は知らされていないが、同盟までは確認が取れている事実だ」

 隠す必要もないので、事実を教えた。

「そうか、そうすると<シータ王国>の戦闘準備についても信憑性が高いな。ならば私は一時この学園に通うのをやめて、<アルダ王国>に兵士として志願しようと思う」

「おい、どういうことだ?わざわざ危険地帯に自ら向かうのか?」

「結果的にはそうかもしれないが、実は俺の一族は過去に辺境北伯に救われているんだ。俺達はあのお方に返しきれない恩がある。ここで己を研鑽しているのもあのお方の力になりたいがためだ。俺、いや俺達一族は辺境北伯・・ではなく<アルダ王国>に絶対の忠誠を永遠に誓っている。ここで力にならずして何のために己を磨いているのか・・・」

 あまりの親友の熱い忠義に、<アルダ王国>の王族が羨ましくなる。

 こんなにも素晴らしい人材の無条件で絶対の忠誠を受けているのだ。父上の言う通り、<アルダ王国>はもちろんの事、王族も素晴らしいのだろう。

 そうすると、親友や我が祖国、そして同盟国である<アルダ王国>に対して私ができる事は何だ・・。

 正直私が今のLvで戦闘に参加してもはっきり言って足手まといだろう。
 <シータ王国>には<S:帝級>がいるらしいからな。私では数秒の時間稼ぎもできないまま存在を消されるだろう。

 たとえ魔道具を駆使してもだ・・

 悔しい現実だが己の評価を間違えると、自らのみならず味方にまで甚大な被害を及ぼす可能性があるので、決して過信や自惚れはしない。

 考えろ・・・

 そして悩んだ結果、私にできるのは知略しかないと結論付けた。

 もちろん<アルダ王国>には私など足元にも及ばない優秀な人材が沢山いるだろう。

 しかし、同盟国そして親友が絶対の忠誠を捧げる<アルダ王国>に対して何もしないという選択肢は取れないのだ。
 
 そう決断して、魔道具により父上に相談した。
 ところが、

「ハル、お前が得た<シータ王国>の戦力準備は事実だ。そして、お前の気持ちはよくわかるが、現在お前の弟であるリノスが<アルダ王国>にいる。少し辛辣な表現になってしまうが、邪魔になってしまう可能性があるので、別の方法を考えた方が良いだろう」

 痛いところを突かれた。事実なので何も言い返せない。

「お前の親友である<猫獣人>の者については、こちらから<アルダ王国>国王に連絡を入れておく。<アルダ王国>には転移を使えるものも多数いるとのことなので、<ゴルデア王国>から<アルダ王国>の長い距離も問題なく瞬間に且つ安全に移動できるだろう。しかしお前が親友とまで言い切る者すら絶対の忠誠を誓っている<アルダ王国>、やはり素晴らしい国なのだな。私も早く行ってみたいものだ」

 そうして私は通信を終えた。

 私の力不足をここまで悔やんだ時はない。

 今までは甘えがあったのではないか?今後は己の研鑽に対しては一切の甘えを許さず行う必要がある。そう、今回のような時に役に立たないのでは意味がないのだ。時間は待ってくれない。

 少し落ち着いて、私はまず今できる事を考えた。
 気持ちを切り替え、親友に転移の件を伝える事にしよう。

 翌日、学園に来た親友の<猫獣人>グリフに私は状況を伝えた。

「グリフ、実はお前の事を父上に相談した時に<シータ王国>の件、事実であることが確認できた。そこで、父上が<アルダ王国>に連絡をして、転移でお前を迎えに来てもらえるように手配してくれるそうだ」

「おお、助かるぞハル。正直今日この日の授業が終わったらすぐに出立しようとしていたところだ」

 なんと親友は既に出立の準備を終えていたようだ。
 少し悲しい気にはなるが、私は私のできる事をしよう。

「グリフ、実は<アルダ王国>には私の弟であるリノスという者がいる。是非仲良くしてやってくれ。私は力不足で<アルダ王国>に行っても足手まといになるので、ここでできる事をしたい。いや、必ずお前と<アルダ王国>のために力になってみせる。楽しみにしておけ」

 決意を新たにがっしりと握手をした私とグリフは、互いの健闘を誓いあった。

「父上から転移に関する情報が入ったらまた連絡する。それまでは勝手に出立するなよ?」

「ああ、もちろん危険がなくあっという間にたどり着けるならそれに越したことはないからな。大人しくしているよ」

 そして以外にもその日の昼に魔道具による連絡が来た。

「グリフよ、<アルダ王国>から連絡があり、その者を迎えに今日の夕刻にそちらに迎えに行くとのことだ。夕刻には準備を整え、学園の門の外にいるようにしておいてくれ」

「わかりました。私は私でここ<ゴルデア王国>で祖国と<アルダ王国>そして親友のためにできる事をします」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...